建築と都市の再考《福岡建築》

建築と都市の再考《福岡建築》

九州芸文館(設計:隈研吾)

福岡県南部に位置する筑後船小屋駅を降りると一目散に目に入る施設です。というのも、公園の広大で水平ラインの際立つ場所に建っているから当然でもあります。

屋根と壁が折られていて、そこに生み出される余白により周辺に対して開いている建物です。手に届きそうな深い軒、三角形が立体的に繋がって、面自体の奥行きや光の当たり方が変わり、そこにある濃淡は行っては戻り、下を見たり上を見たりといった建築体験を助長します。

背面にある石張りの外壁はその一枚一枚のずれが水面に生じた波が広がっていくような動きを見せます。広大な公園と建築のスケールの間には、いつの間にかレベルの操作がされてるくらいに混ざり合っています。

外部での受動的・能動的建物の見方は三つのセクションに分類されると思っています。一つ目は訪れた際に見る、周辺の風景に照射される建物(一般的なファサード)。二つ目は建物の外郭、縁を通してみる切り取られた風景(これは能動的なものに当たります)。三つ目は建物を抜けた先の風景(これは建物がそれに至るまでのシーンを作り出します)。

この三拍子が満たされる建築は中々ないと思いますが、九州芸文館はこれを満たしているように思います。

内部も見所は多いです。中でも一際思考を張り巡らされたのは木張りの階段を登った先にあるカウンターです。階段を登っている際に左側にフロア張りの垂れ下がりのようなものが目に入りましたが、これが上階にくるとカウンター向かいの小壁となっており、それがさらに机となり、ベンチにも見えます。

用途を決定させるのはそこにある手元灯と椅子です。可変性プラスαで機能が決定されています。そこにはまだ柔軟性が潜んでいて、フロア材の用途を一義的に決めなければこのような見え方・捉え方が生まれるものを作り出すことが出来るという発見になりました。

周辺にはその他オブジェや、実験的な建物もあります。ワークショップ室が入っている施設で同形状の木板をつなぎ合わせて屋根架構としている部分には、頭上を閉じるところはOSB貼り、そうでないところは貼らずに空が見えて、不均質な濃度やフレームが拡張していく様子がとても興味深く感じられました。

スターバックス太宰府天満宮表参道店(設計:隈研吾)

世間的にも一目で誰がデザインしたのか分かるような建物なのではないでしょうか。木が多用されているので視覚的にも面白いです。装飾性のみが強いのが少し木になるところではありますが。

隈さんが設計する他の建物にもこの地獄組は結構使われています。アクセサリーになったりもしているので隈さんは現代的に建築を他の領域と接続させようとしているような気がします。

九州国立博物館(設計:菊竹清訓+久米設計)

太宰府天満宮方面から長いエスカレーターを登り、たどり着いた時に自然溢れた山の風景に見劣りしない迫力の建物があります。外壁のガラスには空が映り、山が映り、ランドスケープの連続性が作り出されているとともに、山の稜線に加えて新たなスカイラインを建物自体が作り出しています。

山の裾野へ広がる要素を抽出して屋根ラインを考えているのだろうと思いました。

内部に入ると天井は野縁が表しになったかのような格子状の仕上げで、近くまで登って見てみるとその背後の天井懐にはブレースがあったり屋根材の裏側が見えるのですが、スケールが大きくなれば人は漠然としてのイメージを受けるため木が格子状に架かっているという先行的見方になるのでしょう。

1階の無柱空間や4層分一直線に上がるエスカレーターがあること、そして大規模な企画展が二つも別会場で行われているなど各機能のスペースを十分に取った計画で、よりダイナミックさを感じました。裏手には建物のヴォールト天井を支えるピンジョイントの部分が見られました。

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アクロス福岡(設計:日本設計+エミリオ・アンバース)

福岡市の天神に位置するこの建物は大通りに面した壁はガラス張りであり、その反対の公園側がファサードと言うべく緑で埋め尽くされています。今日のビルでは僅かな壁面緑化や屋上緑化で、躯体の蓄熱による空調不可に対してどれだけ寄与しているのか怪しいものが多いです。

それだけで環境に配慮した建物だということを主張したものもありますが、真の緑化とはこういうことを言うのだと思いました。段状に数千本の木々が植えられています。植えられてまだ年月が立っていないであろうヒメユズリハは2メートル程度でありましたが、実は高木で10メートルまで成長するらしく、今後建物と自然のせめぎ合いが見られるようになると面白いなと思います。

オフィスなどが入り、機能的であって建築の変容さに乏しい部分を自然の成長や生態系が参入して補っています。建築の意義は今後ますます多様性に向けられていくでように思うので、そこには必然的に多様性に富んだ他の媒体が参入することになるのではないかと考えます。

その中でも最も人間に近しいのが自然、緑であり、ハイテク建築とは離れ原点回帰に近くになっていくようで実はそれが未来に求められていたりもします。この建物は今でこそその追求美に目が当てられやすいのですが、決して前衛的すぎないのは原体験をくすぶるものだからでしょうか。

屋外階段を登り、街を見下ろすと、容れ物としての箱が立ち並ぶ現在の風景が見えます。人が多種多様であるように建物も多種多様なのですが、建物の誕生は操作できるものです。これからは今ある建物は歴史的・文化的と捉えるのも、負の遺産と捉えるのもどちらであったとしても有効利用するしか道がないです。

ゼロベースで考えるのは一番楽ですが、ここで創造と破壊の論考を巡らすのは逃げ道であるように思うので、どんなアタッチメントが建築にフレキシビリティを与えていくのか、考える契機となりました。

福岡タワー

シーサイドももち地区というキャッチーな名前の地区にあり、海浜公園に面しています。タワーというのは何故こんなにも人を惹きつけるのでしょうか。夜にライトアップされた姿には自分の内に潜む何かを奮起させます。

タワーの正面は直線的な道幅の広い歩道が伸び、皇居側から東京駅へ向かう時のような軸線の取られた対象物に迫る特有の雰囲気があります。

ぐりんぐりん(設計:伊東豊雄)

ぐりんぐりんについては別記事で紹介しています。

ランドスケープに馴染む丘「ぐりんぐりん」

 

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