パリの新旧建築巡り《フランス旅》

はじめに

2019年1月にフランスに行ってきました。初めてのフランスだったので、見られるだけ沢山の建物を見てきました。パリではミュージアム・パスといって数日間美術館等に行き放題の券を購入できたのでお得でした。建物は中世のものから現代のものまで、パリに渦巻く様々な建築様式を見て感じてきました。それらを年代順に紹介していきます。

ノートルダム大聖堂・パリ(Cathédrale Notre-Dame de Paris)

パリのノートルダム大聖堂は1225年に完成しました。ノートルダム大聖堂はフランスを中心に他にもいくつかあります。このパリの大聖堂はゴシック様式です。それも初期のゴシック建築なので、ゴシックに推移する前のロマネスク的要素も入っています。

ゴシックと言えば交差リブヴォールトがありますが、よく見ると、本来リブが×印になっているところが、さらにもう2本足されている箇所があります。これを六分ヴォールトと言い、初期ゴシック建築の特徴です。そしてステンドグラスからの光が淡く内部を色付けます。建物内の建築美に見惚れた大聖堂でした。

非常に残念なことに2019年4月15日の火災により、尖塔や屋根が消失してしまったため、もう以前と同じ姿は見ることができなくなってしまいました。

サント・シャペル(Sainte Chapelle)

サント・シャペルは1248年に完成しました。ゴシック様式で、縦長のステンドグラスが連続していて非常に美しいです。柱も細く、構造的な軽さが感じられました。

ピカソ美術館(Musée Picasso)

ピカソ美術館は1659年に完成しました。その後1985年と2014年に改修がありました。もともとは貴族の邸宅だった場所です。地下にはクリプトのような空間が広がっており、そこも展示スペースとして利用されています。ピカソと言えばキュビズム(立体派)の流れを作り出した人ですが、美術から始まった流れは建築にも波及しました。キュビズム建築はチェコだけで見られるようです。

パンテオン(Panthéon)

パリのパンテオンは1792年に完成しました。 新古典主義の建築でコリント式の柱が見られます。コリント式は柱頭にアカンサスの葉の装飾があります。パンテオンはローマにもありますが、そちらは2世紀に作られたもので、同じくコリント式です。

ルーブル美術館(Musée du Louvre)

ルーブル美術館は1793年に開館しました。そして有名なガラスのピラミッドはアメリカの建築家、イオ・ミン・ペイの設計により1989年に完成しました。

ピラミッドの下には大きな地下空間が広がっており 、昼間であればガラスを透過する光が 、夜であれば照明を当てられ幻想的なストラクチャーが印象的です。美術館は総面積60,600㎡ということで、とてつもなく大きいです。じっくり見ようとなると1日では見きれないほどでした。

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アメリカン・カテドラル・パリ(Cathédrale Américaine de Paris)

アメリカン・カテドラルは1886年に完成しました。ネオ・ゴシック様式の建物です。ここでは身廊と側廊の間の柱が太い細いと交互になっていました。また日本人のパリでの結婚式によく使われるようです。

エッフェル塔(La tour Eiffel)

エッフェル塔は1889年に完成しました。設計はギュスターヴ・エッフェルです。エッフェルは橋梁の設計なども手掛けています。塔は細い鉄骨を組んだ構造になっており、錬鉄で作られています。

錬鉄はより強度のある鋼鉄の生産性が上がる前に使われており、エッフェル塔は錬鉄で作られた代表的建造物と言えます。そんな技術の進歩の過程に、その時の技術を結集して作られたものであるため、現代から見ても貴重な建造物です。 

正時になるとフィーバーが起きたかのように照明が点滅しだします。慌ただしく光っていたので、正直あまり必要ないのではないかと思ってしまいました。

ラ・ロッシュ邸(Maison La Roche)

ラ・ロッシュ邸は1925年に完成しました。設計はル・コルビュジェと従兄弟であるピエール・ジャンヌレです。施主のラ・ロッシュは美術品を飾るギャラリーが欲しいということで、そのための部屋が作られています。

代表作であるサヴォア邸より前に作られていますが、ここでもコルビュジェの提唱する近代建築の五原則を感じることができます。水平連続窓がハイサイドライトになっていたり、2階の配膳室と1階をシャフトに設けた棚が行き来できるような仕掛けがあったり、吹き抜けで分節された双方を2階の廊下で繋いでいたり、と面白さが詰まった住宅です。

詳しい内容は別記事で紹介していますので、宜しければご覧ください。

https://daily-scenery.com/2019/02/24/post-1592/

オランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)

オランジュリー美術館は1927年に完成しました。その後、建築家Olivier Brochetの設計により改修され2006年に再度開館しました。エントランスを入ると正面にコンクリートのボックスがあり、そして半地下のショップ、地下の展示室もRC打ち放しが見られ、一瞬安藤忠雄さんが改修したのかと思ってしまいました。

ガラスの大屋根により内部を明るくしています。そしてオランジュリー美術館で名物の、クロード・モネによる「睡蓮」の部屋も天井の膜越しにトップライトが降り注いでいました。

サヴォア邸(Villa Savoye)

サヴォア邸は1931年に完成しました。設計はル・コルビュジェです。この建物にはモダニズム建築のエッセンスが詰まっています。この住宅こそパリの街並みに溶け込む、とは言い難いですが、世界に波及する新たな潮流を生み出した名作であることは間違いないです。

詳しい内容は別記事で紹介していますので、宜しければご覧ください。

https://daily-scenery.com/2019/01/28/post-1211/

スイス学生会館(Pavillon Suisse)

スイス学生会館は1932年に完成しました。この建物はル・コルビュジェが初めて設計した公共施設です。そして後々に集合住宅の名建築であるユニテ・ダビタシオンが作られることになるのですが、ピロティとして建物を浮かせる、 建物を支える柱を有機的にデザインする、屋上スペースを設ける、などはこのスイス学生会館で見ることができました。

ル・コルビュジェのアパルトマン,アトリエ(Appartement-Atelier de Le Corbusier)

ル・コルビュジェのアパルトマン,アトリエは1934年に完成しました。このアパルトマンはル・コルビュジェの設計で、自身の住宅、アトリエになった場所です。建物の7階、8階(屋上)にメゾネット(複層住戸)として設けられています。トップライト、横長の間接照明、収納と一体した建具など見所は沢山あります。コルビュジェがデザインした家具も置かれていて、空間のコーディネートの様子も見られます。

オルセー美術館(Musée d’Orsay)

オルセー美術館の建物は1937年に完成しました。もともとはオルセー駅舎でしたが、1986年にオルセー美術館として開館しました。駅舎であったためのトレインシェッドが展示空間を包んでいます。建築好きとして嬉しかったのが、サグラダファミリアで有名なアントニ・ガウディのデザインした家具等が展示されていたことです。

ブラジル学生会館(Maison du Brésil)

ブラジル学生会館は1959年に完成しました。設計はル・コルビュジェです。建物の集う敷地内側から見ると、1階にはガラス窓で囲われたボリュームがありますが、この縦格子はラ・トゥーレット修道院を思わせます。その縦格子は音楽的なリズムを表現しているものです。そして反対の大通り側から見るとユニテ・ダビタシオンを思わせるブリーズ・ソレイユが印象的です。 コルビュジェは鮮やかな色を壁に塗ることが多いですが、ここがブラジル学生会館であるからか、ブラジルの国旗に使われる黄色や緑の割合が多かったです。

ポンピドゥー・センター(Centre Pompidou)

ポンピドゥー・センターは1977年に完成しました。設計はレンゾ・ピアノリチャード・ロジャースがしています。そして若くにして(享年57歳)にして亡くなってしまったアラップの構造家、ピーター・ライスも関わっています。

建物の特徴としては一般的に建物内に設けられる設備配管やエスカレータが外部に設けられている点です。そしてむき出しの設備配管には色が塗られていて、これはリチャード・ロジャース的だと思いました。

外観はパリの均整的な素材、色彩、開口など、調和という概念からは程遠いですが、この建物を受け入れるということが、新たな複雑性を作り出し、都市の密度を深めるということなのかもしれません。

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とらやパリ店(TORAYA Boutique Paris)

とらやパリ店は1980年に開店しました。そして2015年に田根剛さんの内装設計によりリニューアルしました。既存建物の一階というパリのスケールの中にある店舗なので、一瞬通り過ぎてしまうくらい溶け込んでいました。田根さんのデザインした「YOKAN TABLE」と名付けられた、羊羹のような色で上品に光を反射するテーブルがユニークです。

アラブ世界研究所 (Institut du monde)

アラブ世界研究所は1987年に完成しました。設計はフランスの建築家、ジャン・ヌーヴェルです。この研究所はヨーロッパがアラブの文化と交流するための拠点として作られました。

目を引くのは広場側の一面アルミパネルの外装です。寄って見てみると、イスラム様式のマシュラビーヤという、ひとつに日射遮蔽装置の役割を持つ機構からヒントを得たとされる幾何学文様が現れます。

面白いのが、このパネルの穴はカメラのレンズのように外の光の強さに応じて絞れるようになっている点です。また大きな吹抜けがあり、柱や床、階段、サッシを構成する金属が反射する鈍い光が空間全体を包んでいました。

シネマテーク・フランセーズ(Cinémathèque française)

現在シネマテーク・フランセーズとして使われているこの建物は1994年に完成しました。設計はフランク・ゲーリーです。当初はアメリカン・センターとして使われていた場所が建物はそのままシネマテーク・フランセーズとなりました。

内外装とも同じ石材が使われています。ゲーリーらしく動きのある建物操作をしており、その動きにより生じた隙間から光が入ってきたり、それぞれの主張をするボリュームが内部を構成していました。

ケ・ブランリ美術館(Musée du quai Branly

ケ・ブランリ美術館は2006年に完成しました。設計はフランスの建築家、ジャン・ヌーヴェルです。建物の壁にカラフルなボックスが付いているのですが、それはひとつひとつが展示用の個室になっていて、閉鎖的な空間で作品と一対一で向き合えるようになっています。

そして北側のガラスには絵が描かれていてステンドグラスのような光が内部に入ってきます。また敷地内の庭園はジル・クレモンという造園家が手がけており、植物によって見え隠れする道では散策がより楽しめるように工夫されています。

フォンダシオン・ルイ・ヴィトン(Foundation Louis Vuitton)

フォンダシオン・ルイ・ヴィトンは2014年に完成しました。設計はアメリカの建築家、フランク・ゲーリーです。外観はゲーリーのデザインそのものを表していますが、ここでは”素材”に注目してみると面白いです。建物を覆う外殻、或いは膜とも呼べるようなものは3,600枚ものガラスでできています。

そしてメインの構造体はコンクリートなのですが、それも超高性能繊維補強コンクリート(UHPFRC)が使われています。 ガラスの膜はスティールや集成材の支持材によって固定されており、建物内で数々の素材を見て空間を体験することができます。

詳しい内容は別記事で紹介していますので、宜しければご覧ください。

https://daily-scenery.com/2019/02/25/post-1622/

おわりに

パリにあるたくさんの建物を見て来た結果、ポンピドゥー・センターが作られた辺りの時代から現代建築が街に加わり出してきたように思います。近代にかけて整えられて来た景観的街並みを構成する建築、モダニズム建築、現代建築とがありますが、モダニズム建築はパリの街にはあまり浸透していないよいうに思いました。それが加わると景観的に作ってきた街がバラバラになってしまうからかもしれません。

そして現れる現代建築は保守的とも言える街に強力なノードを与え、その結果として作られる複雑性が新たな街のカタチとなっていると思います。それが観光資源にもなっているため、街は人の複雑性ともフィットし出してきているのかもしれません。そんなことを考えたパリの新旧建築巡りでした。

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