地上に向かって流れる屋根「荘銀タクト鶴岡」

地上に向かって流れる屋根「荘銀タクト鶴岡」

はじめに「鶴岡に一泊」

20194月中旬に鶴岡に行きました。その頃には桜も既に散り始め、新緑が芽生え始めている、そんな時期でした。鶴岡には始めて行きましたが、最近できたホテルに泊まりたいという目的もありました。坂茂さんの設計したスイデンテラスです。

そこに1泊し、旅で疲れた身体を癒してから荘銀タクト鶴岡へ向かいました。駅の反対側にあるため、歩いて30分ほどの距離でした。荘銀タクト鶴岡の設計は妹島和世さんです。

ここはフランク・ゲーリーが設計したかのように屋根が何枚もかかり、しかしそれを妹島スタイルに寄せるのはそれがシルバーの鋼板で作られていること、局面であること、柱が細いこと、そして透明度が高いということです。

フライタワーの箱から流れてくる屋根

荘銀タクト鶴岡はコンサートなどが行われる文化施設であるので大ホールを内包します。そのためフライタワーの部分をどう建築的に処理するかというところがポイントになってきます。

前川國男さんの東京文化会館ではそれはエントランスの方からは見えず、背部で城壁のように立っています。村野藤吾さんの日生劇場では完全に建物に内包されています。

その表れ方はそれぞれですが、荘銀タクト鶴岡では大ホール以外に求められるプログラムはほとんどなく、そうするとフライタワーのボリュームが隠れるほどの容量は建物に必要がないことになります。

そこで取られた方法がフライタワーのボリュームから流れるように分割された屋根が降りてくるというものです。上から下に、エントランス部分では1階部分の高さにまで軒が降りてきています。なのでそこは人を向かい入れる形としてぴったりなのです。

また屋根が分割されていることにより、全体の大きな建物は小さな建物の積み重ねのようになり、圧迫感が軽減されています。そういう効果のある屋根になっています。

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屋根の裏側を見上げる

エントランスの軒裏を見上げるとデッキプレートの屋根とH形鋼の登り梁が見受けられます。それに直交した鋼管の梁が力を受け、鋼管の柱に伝達していく構成になっています。

デッキプレートとH形鋼の間を見ると台形の受け材があるのですが、これは構造上重要な役目を果たしており、これにより屋根の面内合成を保っているのです。そのため屋根下の水平ブレースを不要としています。またデッキプレートはねじりやすいということで、局面の屋根の施工を可能にしているのです。

内部天井は妹島さんなのでアルミかと思いきや、杉材のルーバーが用いられています。床のシールハードの塗布されたコンクリートや鉄骨による無機質感がある中で、ここでの木材は少し浮いているような気もしました。

内部に入ってくる自然光

曇りの日であったということもあり、内部には均質な自然光が入ってきていました。中でもよかったのが屋根と屋根の間から光が入ってきているところです。屋根のズレが生んだ隙間ですが、それが建物中に光の濃淡を作り出していました。

また2階に上がることはできませんでしたが、1階部分はどこにいても隣接する旧致道館側のガラス面から光が届き、かつ外の景色を見られました。そのため中にいても閉塞感がありませんでした。

おわりに「少々休憩を」

平日の午前中に行ったこともあり自分以外の来館者は見られませんでした。オープンスペースも広く、テーブルもたくさん置いてありました。そのテーブルにはデスクライトが付いていて、気が利いているなと思いました。

せっかくなので休憩がてらその空間に身をおいてみることにし、近くにあったセブンティーンアイスを買って食べることにしました。言わずもがな、人もいない中でアイスを食べていた時間はとても空虚なものでした。

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