「ホテル×長期滞在」を仕込むラグジュアリーなブランド戦略|ウェスティンホテル横浜

「ホテル×長期滞在」を仕込むラグジュアリーなブランド戦略|ウェスティンホテル横浜

はじめに「念願のホテル開業」

ウェスティンホテル横浜に宿泊してきました。このホテルは2022613日にオープンし、オープンしてすぐに宿泊してきました。

ずっとここのオープンを楽しみにしていました。実は当初は520日に開業する予定だったのですが、設備点検が追加で必要になったため延期になったのでした。

詳細な理由こそ分からないですが、私も建築士なので察するところはありますし、気の毒に思っていました。そしてやっと心待ちにしていたホテルが開業しましたので、宿泊してきました。

この記事は宿泊者としての視点だけではなく、建築士としての視点も交えて紹介していきたいと思います。すごく魅力に溢れたホテルでまた泊まりたいと強く思いました。それでは紹介していきます。

Advertisement

ホテル×長期滞在をラグジュアリーに整える

ウェスティンホテルは世界 40 カ国・地域に 200 軒のホテルを展開するブランドです。

その中でウェスティンホテル横浜は、通常のホテル機能だけではなく、長期滞在型というシステムを取り入れているところが特徴的です。

そして、それらはフロアもエントランスも分かれています。イメージとしてはマンションとホテルが入っているような感じですが、建築上の用途はあくまで全て「ホテル」です。

外観は各層で庇が深く出ている意匠でかっこよかったです。先に建物の概要を書いておきたいと思います。

ウェスティンホテル横浜 建物概要

所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい 4-2-4
交通:JR 各線「桜木町」駅より徒歩 12
用途:ホテル・飲食店・物販店舗・集会所
ホテル客室数:373
長期滞在型ホテル客室数:201
階数:地上23
高さ:99.84
事業主:積水ハウス
設計:日本設計
インテリアデザイン:GA Design International
施工:竹中工務店
用途地域:商業地域
指定建蔽率:80%
指定容積率:800%
敷地面積:9,604.59 m²(2,905.38 )
延床面積:65,939.84m²
駐車台数:237

1階には「ポルシェセンターみなとみらい」が入っています。

1階に入るポルシェ

向かいの建物にもポルシェの店舗がありますが、こちらは「ポルシェセンターみなとみらい 認定中古車センター」です。ポルシェが入っていることで建物としての品格も上がります。

インテリアデザインを担当したGA Design Internationalは「JWマリオット・ホテル奈良」などをはじめとして、世界のラグジュアリーホテルや商業施設などを手掛けています。

そして建物のフロア構成は次のようになっています。

フロア構成

【1階】ポルシェ、エントランス
【3階】日本食(喫水線)、フレンチ(ブラッスリー・デュ・ケ)
【4階】式場、バンケット
【5階】フィットネス、プール、スパ
【6階〜12階】長期滞在型アパートメント
【13階〜22階】ホテル
【23階】ロビー、ラウンジ(シュガー・マーチャント)、バー(コード・バー)、グリルレストラン(アイアン・ベイ)

612階にはケン・コーポレーショングループが運営する長期滞在型ホテルThe Apartment Bay YOKOHAMAが入っています。

ホテルが373室に対して、長期滞在アパートメントの方が201室あります。

これまで長期滞在型のあるホテルがあることは知っていたのですが、そのほとんどはごちゃ混ぜで、今回のようにフロアでハッキリ分かれているのは借りる人にとってはメリットだと思いました

そして、ホテルのロビーが最上階というところにも惹かれました。ほとんどの場合においてロビーの上には客室がありますので。

※以前に宿泊したザ・ノット広島も規模はウェスティンより小さいですが、同じように最上階がロビーだったのを思い出しました。

 

「ホテル×長期滞在」を仕込むラグジュアリーなブランド戦略|ウェスティンホテル横浜
「ホテル×長期滞在」を仕込むラグジュアリーなブランド戦略|ウェスティンホテル横浜
目次 1. はじめに「念願のホテル開業」2. ホテル×長期滞在をラグジュアリーに整える3. 動線・家具・空間、それぞれ丁寧に設計された客室4. アフタヌーンティ.....

最上階は23階にあり当然眺めが良く、そこを宿泊客は均等に楽しめます。ゆったりとしたロビーの空間がラウンジ、そしてバーへと繋がっています。

そして天井高もあり、空間の広さのバランスがすごく上手く設計されていると思いました。

動線・家具・空間、それぞれ丁寧に設計された客室

最上階でチェックインを済まし、客室へ向かいます。今回泊まったのは14階で、部屋タイプとしてはオーソドックスなベイルームというタイプです。

客室配置はロの字型になっており、突き当たりの廊下が反対側の廊下とつながっていました。

廊下の突き当たりの窓

その突き当たりはガラス張りで外の光が入ってくるようになっていました。反対に外観としては廊下の光が漏れ、ホテルの優美な表情を作っていました。

廊下の突き当たりがつながっている様子
廊下から光が漏れる様子

客室階のエレベーターホールには照明で床模様が表現されていました。その模様は客室の玄関でも見られました。

エレベーターホールの照明
客室玄関の照明

今回宿泊した部屋は東向きで、海の方を向いているのですが、周辺は高い建物ばかりなので、建物の隙間からわずかに見える程度でした。

しかしホテルの前は低層の建物なので圧迫感はなく、過ごしやすかったです。

客室の奥に海が見える

また部屋に入った時に、同時にブラインドが開くという演出があり、おもてなしの意味ですごくいいなと思いました。きっと多くの人がその仕掛けに感動していると思います。

部屋のゾーニングは、玄関に入り廊下があり、その脇に水回り、奥に寝室という一般的な配置と思いきや、寝室からも水回りにアクセスできる一筆書きの動線があってすごく良かったです。

水回りもタイル張りで凝った空間なので、寝室からそこが見えることで非日常を感じさせられるようになっています。

ここの水回り(洗面・トイレ・浴室)を眺めていると、照明による演出で印象がほとんど変わることが分かります。間接照明を中心に、ワンポイントで洗面の丸い鏡の照明がとても効いています。

また、部屋の作りでいいなと思ったのが、廊下と寝室の境界部分にあたる壁が曲面になっているところです。

曲面の壁

普通は直角に壁を作るところが曲面になっているだけでそんなに印象が変わるものなんだと勉強になりました。

視線が頻繁に向く位置なので、曲面という柔らかさが部屋全体の印象に直結していました。

ちなみに客室にはウェスティンホテルの代名詞ともいえる「ヘブンリーベッド」が導入されていて、寝心地は抜群でした。

窓側の側面の壁には鏡が貼られていて、部屋を広く感じさせるようになっています。これは以前宿泊したオークラ東京でも見られた手法でした

 

「ホテル×長期滞在」を仕込むラグジュアリーなブランド戦略|ウェスティンホテル横浜
「ホテル×長期滞在」を仕込むラグジュアリーなブランド戦略|ウェスティンホテル横浜
目次 1. はじめに「念願のホテル開業」2. ホテル×長期滞在をラグジュアリーに整える3. 動線・家具・空間、それぞれ丁寧に設計された客室4. アフタヌーンティ.....

部屋から見える斜向かいの37街区は「(仮称)MM37タワー」として建設中で、2027階にはホテルが入る予定です。

(仮称)MM37タワー概要

設計:鹿島建設
施工:鹿島・フジタ・馬淵・大洋JV
竣工:20231月予定
地上:28
高さ:145.82m

※ホテルにはどこが入るのか気になりましたが、20226月現在では情報は掴めませんでした。

Advertisement

アフタヌーンティーに適したラウンジと15時から開いてるバー

ホテルの最上階、23階には眺望の良いラウンジ「シュガー・マーチャント」とバー「コード・バー」があります。

ロビーと一体空間にあるのですが、お互いが直接見えない位置関係にあって、ラウンジは居心地が良さそうでした。このラウンジではアフタヌーンティーなどが楽しめます。

今回はラウンジに行ってコーヒーを飲もうとしたところ、満席ということでした。そこでどうしようかと思ったところ、奥にバーがありました。

ラウンジ

ラウンジは全47席、バーは全33席あります

バーなので、ラウンジのようなメニューはないかと思ったら、同じメニューを提供することもできるということだったので、今回はバーを利用することにしました。

バーは比較的空いていて、窓側・壁際のソファ席と、中央のバーカウンター席がありました。

どちらでも良いということだったので、全体の雰囲気を味わいやすいバーカウンター席に座らせてもらいました。

バーの内観

メニューはラウンジ用とバー用のどちらも注文できるということでしたが、せっかくなのでバーメニューでカクテルとおつまみを頼みました。

カクテルはマスターが目の前で作ってくれます。その際に色々とお話しさせてもらうことができ、非常に充実した時間でした。

マスターの経歴や、開業に際しての出来事など、面白い話をたくさん聞くことができました。

その時に教えていただいたのですが、このバーは15時から営業しており、周辺でもそこまで早くオープンするのは珍しいらしいのです。

それもあってか、近くに住んでいるお客さんも結構いらっしゃるそうなのです。

地元の人に愛される場所として、また地元の人にとっても誇らしいバーなのだろうと思いました。

このバーで置かれている家具はグリーン系の色が使われていてそこに個性を感じました。

フロア貸切で結婚式を行える、ゆったりとした空間設計と運営

建築士として今回の宿泊で最も収穫が大きかったのが、式場の見学をさせてもらえたことです。

それは決して予約していたわけではなく、ホテルに着いて館内をうろうろと見学していた時に運よく見せてもらえたのです。

中を見学してみたいと言うと快く見せてくださりました。

実は開業してすぐは見学のための期間になっており、最初の挙式はまだまだ先ということなのでした。

最初に見せて頂いたのが式場です。ホテル全体のデザインもそうですが、この式場の中も船をイメージしてデザインされているそうです。

祭壇の前にはトップライトの光が天井から降り注ぐようになっています。

そしてスタッフさんに式場のウリとして説明いただいたのが、席配置が祭壇を囲うようになっている点です。確かに新鮮味を感じました。

祭壇を囲う席配置

そして次はグランドボールルーム(宴会場)の方へ案内していただきました。

その際に伺うことができたのですが、この式場は午前午後の2部制で、それぞれ1組ずつ1フロアを貸切できるそうです。

空間がゆったりと廊下幅も広く作られているので、招待客の方もストレスの無い動線のもと楽しめることができるなと思いました。

ゆったりとした廊下

友人同士が立ち話をできるような余裕のある空間づくり」をしているという説明を受け、とても好印象でした。

またこのフロアは4階に位置しており、1階エントランスからエスカレーターで来れる動線を作っているところもいいなと思いました。

エスカレーターの動線

結婚式の招待客がホテルの宿泊客と同じエレベーターを使って動線が被っているホテルをよく見ますので。

宴会場はこちらも船をイメージした天井のデザインでした。

宴会場

6070人以上でこの宴会場を使えるようで、外の眺めがいいわけではないのですが、明るく開放的な空間でした。

この宴会場は立食で300人、シアター形式なら530人収容できるようです。

また、宴会場に隣接する位置に宴会場専用の厨房が設けられていることも特徴のひとつです。

厨房から直接宴会場に運べるというのは、作りたてを食べられるということなので素晴らしいなと思いました。

Advertisement

ラグジュアリーな空間だけれど、市民プールのような雰囲気を持つ不思議なプール

ホテルの5階にはフィットネス・プール・スパがあります。

フィットネス(ウェスティン ワークアウト・フィットネススタジオ)は国内ウェスティンで最大の広さを誇り100m2あります。

そこにはテクノジムやTRXの最新機器が揃っています。

実はそのフィットネスの上にもフィットネスがあり、そちらは長期滞在者向けになっています。

今回はプールを利用しました。こちらのプールは全長20mであり、プールを囲うようにロングチェアなどの椅子が配置されています。

ガラス張りの面もあり外が見えるようになっていて、空間はラグジュアリーホテルのプールとしてぴったりでした。

ですが、客層としては場所柄小さい子供のいるファミリーが中心なので、雰囲気としては市民プールのようでした。あるいは煌びやかなナイトプールのようでもあります。

ワイワイと楽しむようなプールなので、しっかりと泳ぎたいという人には向いていないと思いました。

偏見もあると思いますが、謂わゆるお金持ちの人にはしっかりと泳ぎたいという人が多いような印象を持っているので、少しもったいなさを感じました。どちらの客層をターゲットにするかというのは難しいところもあると思いますが…

更衣室にはシャワールーム、そしてサウナがありました。サウナは流行っていることもあり、割と需要があると思いますので、設けたのは正解だと思います。

朝食ビュッフェの会場になる2つの異なるレストラン

喫水線

今回は朝食付きのプランで予約しました。

レストランは3階にあり、朝食は2つのレストラン(喫水線、ブラッスリー・デュ・ケ)が合わさって会場となっておりました。

日本食の喫水線は全50席、カジュアルフレンチのブラッスリー・デュ・ケは全91席あります。

朝食はビュッフェ形式で和食・洋食のどちらもありました。フルーツも充実しており、いろんなメニューのニーズに応えられると思いました。

インテリアとしては喫水線の方は簾や木格子の天井など和のイメージがあり、ブラッスリー・デュ・ケの方は色温度の高いオレンジ系の照明や赤色のチェアなどで、洋風でも中華風でもあるような印象でした。

ブラッスリー・デュ・ケの内観

ウェスティンホテル横浜の計画を都市計画の視点で捉えると

今から書く内容は結構専門的になってきます。

「都市計画」という広い視点でこのウェスティンホテル横浜を捉えてみます。そのためにまず都市計画情報を調べてみました。

【都市計画情報】

用途地域:商業地域
指定建蔽率:80%
指定容積率:800%
高度地区:第7種高度地区(31m制限)、最低限1種高度地区(14m以上制限)
地区計画:みなとみらい21中央地区地区計画
その他地域地区:中央地区駐車場整備地区、みなとみらい21地区街づくり協議地区

上記の通り高度地区がかかっていて高さ31m制限があるのですが、同時に地区計画もかかっており、地区計画の内容に準拠して計画することで高度地区による制限は無くなります。

つまり31m以上建てられるようになるのです。

そして気になるのが地区計画の内容です。

この敷地はみなとみらい21中央地区地区計画の「ビジネスゾーンB」に該当します。整備内容としては下記の通りです。

【地区計画の整備内容】

・歩道状空地(主として歩行の用に供する青空・非青空の空地)8mの整備
・基本的に住宅の計画は不可(ただし、元々住宅であった敷地はその床面積までは住宅用途でよい)
・最低敷地面積1500m2
高さ制限180m(特定街区や都市再生特別地区で定められていたら別)

これはホテルの計画としては珍しいのですが、容積率を使い切らない計画になっています。

そして高さも限度が180mに対して99.84mです。

100mを切るように調整しているように見受けられますが、このホテルの規模だと100mは一つのボーダーになるのです。

それは環境アセスメントの対象になるかならないかというラインなのです。これは延床5m2超かつ高さ100m超で対象になります。(横浜はその対象になるかならないかの判定が先にありますが。)

もし環境アセスメントの対象になると、周辺環境への影響を評価し、それに行政や住民も含め意見を出し、環境保全の視点から建物を考えていくというプロセスを踏むことになります。

それをやることの人的労力やコストも考えると必ずしもやることが適切とは言えないものです。

それに180m建てられるところを100m程度で計画したという点においては、ある意味周辺環境に配慮したといえるかも知れません。

Advertisement

おわりに「新築ホテルは独特の面白さがある」

以上、ウェスティンホテル横浜の紹介でした。

ほぼ1棟丸々ホテルとして使われるというのは都心型の高級ホテルだと少ないので、盛りだくさんの体験をできました。

そして今回はオープンしてすぐの宿泊だったことも面白さを感じた要因の一つでした。

それは例えばスタッフさんがまだ完全に慣れていなかったり、その新鮮さが逆に良かったりして、楽しい宿泊体験となりました。

このホテルは幅広い客層がターゲットになるように感じましたので、新しさがまだ残っているときに泊まってみることをお勧めします。

ホテルカテゴリの最新記事