建物の形態操作を考えてみる「國立公共資訊圖書館(National Library of Public Information)」

建築

はじめに

國立公共資訊圖書館(National Library of Public Information)は台湾の台中にある図書館です。設計は台湾の潘冀聯合建築師事務所です。

台中の街は台北の街の密度を引き伸ばしたような印象があります。そして街中の駅舎が古いものから新しく生まれ変わっている様子が見受けられます。

その新しいもののデザインとは台湾でよく見られる線の多さが生む複雑性を伴っています。

「新しいもの=過去には見られないようなもの」という解釈の仕方が台湾にはあるのではないかと思っています(台湾に限ることではないかもしれません)。

この國立公共資訊圖書館もそんな変換作業の元に生まれた建物のように思います。

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ズレを伴う外壁と水平連続窓

このような外観の建物は地形的なコンテクストの表れとして設計されていることが多いように思うのですが、この図書館の場合の導き方は少し違うようです。

デジタルツールの能力に頼った形態というよりも“建築プログラム”と”常に変化する空間”の組み合わせの中で本を読むための場所としての多様性を作り出した結果のようです。

そしてその多様な読書空間が外観の帯状に存在する水平窓として表れてきます。そうして外部に接した帯を作ることで時間の経過で変化する外部が内部の環境に影響し、読書空間に多様性を与えます。

そんな意図が含まれている建物です。コンセプトを知ると実物と照らし合わせて理解しやすいですが、通常はそのコンセプトは調べずに感じさせることができるという状態が一番いいのです。

ここの場合設計者の意図する理想が利用者として享受できるかと言われるとそこまで上手くはいっていないように感じてしまいました。

図書館内を回遊してみる

個人的な感覚ですが、館内を回遊してみると若干の圧迫感がありました。恐らく視覚的な横の広がりに対して天井高が低いのではないかと思っています。

ここで”視覚的”というように書いたのは水平の距離感はファニチャーでも決定されるという意味です。

図書館の場合は本棚が大半ですが、そういうものの背の高さ、そして開口の高さ、それらでも大きく影響を与えるのではないかと今回感じました。

おわりに“Reading the city, Read in the city”

この図書館のコンセプトが“Reading the city, Read in the city”のようです。このコンセプトに対する個人的解釈ですが、どの人にとっても自分が存在する場所・街を知ることは自分の存在を客観的に確定させるということなのではないかと思っています。

そしてその街を自分の中の基軸として比較によって視野を広げていきます。その根本的プロセスを提供するのが図書館という知の集積所であるということがこのコンセプトの示すところではないのでしょうか。

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