はじめに「駅直結のJRホテル」
ホテルメトロポリタン川崎に宿泊してきました。
ここはペデストリアンデッキで駅直結の位置にあり、JRのホテルならではの特権だと思います。
アクセスがよく、そしてデザインも魅力的でホテル代も高くないという、いいことづくめのホテルでした。
それでは紹介していきます。
品よく丁寧にデザインされた外観
今回はJR川崎駅からホテルに向かいました。ホテルは2階レベルで駅とつながっており、2階に受付があります。
詳細な話をする前に、先に建物概要について載せておきます。
ホテルメトロポリタン川崎 建物概要
住所:神奈川県川崎市大宮町1-5
建築主:東日本旅客鉄道、日本ホテル
設計:JR東日本設計
インテリアデザイン:SUPPOSE DESIGN OFFICE
施工:大成建設
構造:S造、一部RC造
階数:地上16階、PH2階
最高高さ:66.30m
階高:3.4m(客室階)
客室数:304室
オープン:2020年5月
敷地面積や延床面積はあえて記載しませんでした。
それはホテル棟・オフィス棟が一敷地である建物なので、ホテル単体としての面積が分からなかったためです。
また構造的な特徴として、スレンダーな建物なので屋上にATMDという制振装置が乗っています。
建物の設計はJR東日本設計で、外観デザインは現代建築っぽく品よく纏まっていました。
ロビー階の低層部と客室階でデザインを分け、長手の平面は客室が連続するため横基調のデザインになっています。
妻面は縦に長い建物を強調するように縦基調のデザインで、照明計画もその形に沿ってされていました。
縦長に入る照明は、その存在を確かに示すようでいいなと思いました。
サポーズデザインによる、洗練されたエントランスデザイン
そしてホテルのエントランスに入ります。
2階は階高が高いため、高い天井を生かし、天井は波打つように、照明はそこから垂れ下がるように設けられていました。
エントランスを含むインテリアデザインはサポーズデザインが手がけており、その上手さに感嘆しました。
低い天井と高い天井の構成は、アマン東京に似たところがありました。メリハリが効いていて良いです。
そのエントランスの奥にはカフェが併設しており、作業などしやすそうな座席もあるため、パソコン作業をしているような人も見受けられました。
客室階の廊下もデザインの宝庫
チェックインを済まし、客室へ向かいます。
客室階はシックな雰囲気の中に、青いカーペットが敷かれています。
部屋の前にはブラケット照明があり、道を案内する街灯のように上手く機能しているように感じました。
天井は下がり天井が両脇に設けられていますが、梁ではないようなので、給排気のダクトが通っているのだろうと思いました。
新幹線の音も気にならない、遮音性能が高い客室
そして部屋に入ります。今回宿泊したのは30m2のツインタイプの部屋です。
このホテルは一番小さくても23m2の部屋なので、全体的にゆったりと設計されています。
廊下のカーペットは青でしたが、その連続性を作るように、部屋の中のカーペットは濃紺にストライプが入ったデザインでした。
寝室にはソファと丸テーブル、ベッドが置かれており、ベッドボードの間接照明やブラケットライトで部屋の雰囲気を作り出していました。
また天井が高く、一番高いところで2.8mあります。これは高級ホテルと同じような高さです。
建築的に考えれば、階高を絞ることはせず空間作りを優先させたということなので、グレードの高さが窺えます。
そして、特筆すべきなのは窓の遮音性です。
今回宿泊したのが線路側の部屋だったのですが、2重窓になっていました。しかも複層ガラスの2重窓です。
設計主旨としてサッシはT-3以上の等級としたと書かれていましたが、実際に目の前に新幹線が通っているのに全く音が聞こえませんでした。
遮音性能は実際に体感して驚きました。
そして、これも建築的な内容になるのですが、部屋の給排気は全て屋上からのルートで計画されています。
しかし音問題もあるので、各階にDSを設け、給排気計画がされていました。附室の排煙もDSでやっていたので、平面に占めるDSの面積は結構多いようです。
そして水周りもゆったりと作られていました。
洗面カウンターは広く、向かいにある浴室はオーバーヘッドシャワーもあったので、高級ホテルにも劣らないグレード感でした。
勝手なことを言えば、あとは洗面室の壁がタイル張りになれば高級ホテルと遜色ないと思います。
洗面の扉とクローゼットの扉は1枚の引戸として、どちらかを開ければ反対が閉まるという作りになっていました。
ホテルの顔となる併設レストランで朝食
2階にはホテル併設のレストランがあり、今回はそこで朝食を食べました。
吹き抜けのような天井の作り方はエントランスと同様でしたが、こちらは天井に間接照明があり、天井が浮いているような見え方をしていました。
ここは、駅に向かう動線に接してあるレストランなので、外には行き交う人たちの流れが印象的でした。
また、より落ち着いて食事ができるように植栽が外にあるので、快活なモーニングを楽しめました。
朝食はビュッフェスタイルで1人2500円でした。
フィットネスにランドリールーム、充実した館内施設
3階には客室のほか、館内施設として会議室やジム、ランドリールームがあります。
ジムやランドリーがあるエリアには自販機や製氷器も置かれていました。
特徴的なのはランドリールームがラウンジのようになっているところです。
ランドリーで洗濯をしている間に待てるためか、電子レンジやパソコン、ボードゲームなどが置かれており、座席もたくさんありました。
この部屋はあえて天井を張らず空調やダクトなどを表しにするという雰囲気づくりが良く、参考になりました。
おわりに「良質なデザインに触れたホテルステイ」
以上、ホテルメトロポリタン川崎の紹介でした。
建築的にも面白かったので建築的な内容が少し多めになりましたが、個人的には良い勉強になるひとときでした。
比較的安く、だけれども良質なデザインに触れられるという貴重な体験をできるホテルだと思いました。
宿泊する際はレストランでの食事もぜひお勧めしたいです。
※この記事はホテルの宿泊客としてではなく、建築士としての視点も交えて書いています。