客室の換気に隠された設計の工夫|ACホテル・バイ・マリオット東京銀座

ホテル

はじめに「日本初のACホテル」

ACホテル・バイ・マリオット東京銀座に宿泊してきました。

ACホテルはマリオット系列のホテルブランドですが、ここが日本初のACブランドのホテル20207月にオープンしました。

※海外にはたくさんのACホテルがあります。

マリオットのホテル区分はラグジュアリー、プレミアム、セレクト、長期滞在に分かれていますが、ACホテルは”セレクト”に区分されます

個人的な感覚では、プレミアムでもいいような気がしましたが、ホテルの客室規模的なグレードもあるのかもしれません。

ですが、設計には日建設計が入っているだけあり、プレミアム区分にも劣らない上質なホテルとなっています。

マリオットのポートフォリオ

ラグジュアリー:エディション、リッツカールトン、W
プレミアム:ウェスティン、シェラトン等
セレクト:アロフト、モクシー、AC

※今回は、ACホテル・バイ・マリオット東京銀座に宿泊してきましたので、宿泊者としての視点に加え、建築士としての視点も加えながら紹介していきたいと思います。

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コンパクトなエントランスロビー

大通りに面したところから建物内に入り、風除室を抜けると目の前にフロントがあります。

エントランスの面する大通りの様子

フロントの近さから、全体的にコンパクトな設計をしている気がしました。

そしてラグジュアリー系のホテルの場合は、フロントの近くにチェックイン・チェックアウトのための多くのソファが置かれていることが多いですが、ACはソファもかなり限定的でした。

コンパクトなエントランスロビー

ですが、天井は高く、エントランスホールの奥には小さめのラウンジ、バー、レストランなど、空間を区切りながら様々な用途がありました。

エントランス奥のバー、レストラン

ちょっとしたラウンジ

落ち着いた客室フロア

チェックインをし、ELVで客室フロアへ向かいます。

ACは地上15階、地下2階の建物ですが、1棟丸々がホテルになっています。客室フロアは2〜13階にあります。

フロア構成

客室フロアは落ち着いた雰囲気で、高級マンションのような内廊下です。

決して高級な内装ではないと思いましたが、細かな納まりなど見ると、丁寧に設計されていることが伝わってきました。

建物はI型の配置計画となっていますが、これは客室を効率よく配置できる形です。

I型の平面形状になっている

ですがホテルの場合、避難動線は多くなってしまっています。

この建物には避難階段と避難バルコニーがそれぞれ2つずつあります。

他に良い配置計画は無いかと考えてみましたが、敷地や周辺状況、客室環境を考えるとこの配置計画は効率的だなと思いました。

洗面所と一体になる客室

今回宿泊したのは6階の部屋です。部屋タイプはツインで、広さは30m2です。

玄関ドアを開けるとBR(ベッドルーム)があり、奥に大きな窓がありました。

大きな窓

このホテルでユニークなのは”床材”です。

ホテルでは通常タイルカーペットを使うことが多いですが、ここではフローリング調の塩ビタイルが使われていました(水廻りはタイル)。

床材は木目調の塩ビタイル

また、このような高級ホテルでは最近は窓が開けられないことが多いです。

そうなると気になるのが換気です。ですが、窓に自然換気装置が組み込まれているのを発見しました。

換気のできる装置

窓に付属するハンドルを立ち上げると換気ができます。ちょっとした工夫ですが、顧客満足度にも響く良い工夫だと思いました。

また、洗面所とBRの間は仕切られるようになっています。

洗面との間を仕切った様子

仕切りたくなければ完全に開放して一体的に使うこともできます。

洗面を開放した様子

洗面所からトイレ・浴室にアクセスする形になっているので、仕切れば水廻りは完全に隠すことができます。

※洗面所と仕切ったり一体にできたりするホテルは他にもあり、例えばハイアットリージェンシー横浜やハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄でも見られます。

また、客室の天井は2.7mあり高いです。建築的には階高も気になるので、調べてみると3.4mもあります(階高というのは上下フロア間の高さです)。

少し贅沢をしていることが伝わってきます。

客室内のインテリアは比較的シンプルにまとまっています。

革張りの長いベンチがあり、腰掛けたり荷物を置いたりと多様な使い方をできる優れものです。

革張りの便利なベンチ

この”荷物を広げられる場所”というのは、世界のACホテルに共通して設けられているスペースです。

そしてベッドボードやベッド下、ベンチ下などには間接照明が配されており、高級感を演出してくれます。

各所に仕込まれた間接照明

ACホテルはクラシカルな雰囲気(HPでは「エレガントで目的に適ったデザイン」と書かれています)が特徴のブランドですが、アメニティのデザインや匂いまでもそのブランドイメージが感じられるほど、こだわりがありました。

クラシカルなデザインや香りのアメニティ

緑が入り込んでくるレストラン

今回は朝食を1階のレストランで取りました。ビュッフェ形式となっていて、天井の高さやゆったりとした席配置もあり、優雅な朝の時間を過ごせました。

このレストランで特徴的なのが、都心だけれども緑を感じられるように設計されている点です。

道路との間に目隠しになるほどの植栽が配置されており、その面が一面ガラスになっているので、レストランで食事をしていると、光や植栽が目に飛び込んできます。

集中できる地下のフィットネス

地下1階にはフィットネスがあります。宿泊者であれば誰でも自由に使うことができます。

※最低限の器具が置かれている程度で、地下という閉塞的な空間ではありますが、私が利用した際に他の利用者はいなかったので、爽快な気持ちで利用できました。

ホテルで運動をすると、どこか優雅な気持ちになれます。

ホテルがある一定のレベルを超えてくると、フィットネスの設置はマストと言っていいくらい求められてきます。

しかしそれは海外水準であり、日本人にはあまり馴染みがないと思いますが、近年は外資系でないホテルでもフィットネスを設けるようなホテルが増えてきている印象があります。

銀座の地区計画からホテル計画を考える

建築的な話ですが、建物を計画する際に地区計画がかかっているエリアがたまにあります。

銀座にはホテルの計画がたくさんありますが、大体のホテルは銀座の地区計画のもとに計画されています。

少し調べてみたいと思います。

今回の地区計画は”A地区”に該当し、地区計画の種類としては、下記2つに該当します。

街並み誘導型地区計画高さ制限を設けて斜線制限を緩和する
高度利用型地区計画容積率の緩和をする

地区計画・・・都市計画法12条の5に書かれており、他には、「誘導容積型・容積適正配分型・用途別容積型・再開発等促進区を定める地区計画」などが存在します。

ちなみに銀座の地区計画における制限内容で、今回の計画に関わるところですと、下記のものがあります。

高度利用地区による制限についても一緒に記載します。

✔︎高度利用地区で容積率の緩和を受けるために、定員2名の部屋だと22m2以上にする必要がある。

✔︎地区計画でロビー等の面積はMAX宿泊人数×0.4以上必要(296室あるため、今回は250m2程度必要という計算になると思われます。※レストランの部分も含めて条件を満たしていると思われます)。

✔︎高さの最高限度は前面道路幅員によって決まり、今回は56mまで建てられるということになる(それに加え、屋上工作物は10mまでが限度)。

✔︎高度利用地区での容積率緩和を受けるために、ホテル関連施設(ロビー、レストラン、フィットネス、会議室等)を敷地面積の1/2以上整備する必要がある。それにより容積率が300%緩和されている(指定容積率が800%の敷地のため、許容容積率は1,100%ということになる)。

このように基準を満たしながら容積ボーナスをもらっているというのが、実際に行ってみると実感でき、計画からも読み取ることができます。

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おわりに「体験と学習でインプット」

以上、ACホテル・バイ・マリオット東京銀座の紹介でした。

宿泊をすると滞在時間が長いがために、建築的にも気付く点が多いです。

また、ホテルの情報を後で調べてみると、「実はこうなっていた」など振り返って気付かされる点も多いです。

一般的な宿泊には無いコアな楽しみ方だと思いますが、自分ならではの視点を持ってホテルに宿泊すると面白いと思います。

ACのすぐ横にはコートヤードアロフトなど、他のマリオットのホテルブランドもあり、面白いエリアなので是非宿泊してみて下さい。

 

ACホテル・バイ・マリオット東京銀座 建物概要

住所:東京都中央区銀座6-14-7
用途:ホテル
建築主:東武鉄道
設計:日建設計、日建スペースデザイン、NOOSA DESIGN
施工:大成建設・東武谷内田建設共同企業体
敷地面積:1,284.51m2
延床面積:15,952.90m2
容積率:1,099.56%
許容容積率:1,100%
構造:S造、一部SRC
階数:地上15階地下2階、塔屋3
最高高さ:55.844m
駐車台数:51
客室数:296
その他:高度利用地区、銀座地区地区計画、都心部駐車場整備地区

 

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