はじめに「世界の丹下による設計」
兵庫県立歴史博物館は丹下健三(1913~2005)さんの設計で兵庫県姫路市にあります。丹下建築をじっくりと体験するのは初めてでした。
都庁やフジテレビなどに行ったことはあっても、それは子供の頃や世界の丹下を知る前だったので、自然と体験していたに過ぎなかったのです。
ということで、広島のピースセンターをまだ見に行っていなかったので、それに向けて他の作品も見ておこうと思い、兵庫県立歴史博物館へ行ってみました。
姫路城を映し出す
敷地は姫路城の裏手にある公園内にあり、公園を通ってのアプローチです。ここのような全方面的にアプローチが可能なところだと、どの面から向かおうか毎回迷ってしまいます。
絵になるのは道路からアプローチする建物正面ではなく、ガラス壁面部のキャンチレバーがあるところです。そこは鏡面ガラスになっていて、それを使う意味が写真を撮ることで良く分かりました。
これは確かに鏡面であるべきだと納得しました。姫路城が上手く投射されています。ガラス全てが鏡面ではないところが憎いです。こういうことが「場所」を読み取るということなのだと思います。
建物から姫路城を見るという人間の視点での考え方ではなく、建物が姫路城を見る、それに映し出されたものを人間が見せてもらうというような謙虚さが感じられます。
[adchord]
多様な表情を見せる外観
入口は簡素な壁面に控えめな装飾と三角に張り出したガラス面が付加されています。それだけでこんなにも迫力を感じるのはなぜなのでしょうか。恐らく入口に向かう軸に対して建物が直行して構えているからなのだと思います。
程度を誤ればその迫力は威圧感にもなり兼ねないですから難しいところです。外観は四面ともそれぞれ印象の異なる作りで面白いです。
密やかに回遊する楽しさを作る
開館と同時に内部に入りました。梁の様子がルーバーのように現れる天井の構成とトップライトによりルーバーの間から入る光が空間の連続性を生みます。
ホールの大空間からエスカレータで登った先にガラス棟があり、吹き抜けのキャットウォークのような廊下を通って展示室へ向かいます。
視線を外に向け、中に向け、そして展示に向ける、といった歩きながら感じれらる流れが心地いいです。ファサードに出ていた三角の跳ね出し部分は建物内から姫路城を一望するのに絶好の場所です。
おわりに「近くにも建築家の作品が」
近くには姫路城だけでなく、黒川紀章さんの設計した公園内の休憩所や、安藤忠雄さんの設計した姫路文学館もあって、姫路の歴史を学びながら楽しめるエリアとなっています。(公園内には猫があちこちにいました。)