繋がる空間と反射する景色「茅野市民館」

建築

はじめに

2019年3月末に長野へ行ってきました。

長野で見たかった内藤廣さんの設計した安曇野ちひろ美術館や藤森照信さんの神長官守矢史料館、高過庵を求めて行きました。

茅野市には神長官守矢史料館や高過庵があるのですが、駅に接続した茅野市民館も素晴らしい建築でしたので紹介します。

自分の建築旅の候補に入れ忘れていて危うく後悔するところでしたが、古谷誠章さんの設計したこの建物には純粋に感心させられました。

コの字型のゾーニング

茅野市民館の建物はコの字型をしています。

その中に図書館、美術館、ホール、レストランなどが入っています。

それぞれが空間を通して連続的に繋がっていて、分断されるような感覚はありませんでした。

それらの中央と言うべきところは中庭になっていて、ガラス張りの建物であるために中庭の景色が屋内に染み込んできます。

これまで公共空間は外に居場所を作ってあげることも重要だと思っていました。

しかし風の強い日、雨の日などは屋内で過ごす安心感を外への視線を抜けさせることで中庭は両義的な意味を持ってくるのだと実感しました。

スロープに接する図書スペース

駅の改札は2階にありますが、その2階からも市民館に入れるようになっています。

その駅側に配置してあるのが図書スペースで、スロープで緩やかに下っていく動線に接するように段状に設けられています。

それらの空間の仕切りは腰壁でありスロープを下る人は図書スペース越しに中庭まで視線が抜けるようになっています。

昼間に見学をしたのですが、この空間は両側がガラス張りであるので非常に明るかったです。

そして図書館特有な緊張感のある静けさではなく、穏やかな静けさがそこには存在していました。

このゾーニングの仕方でいいなと思ったのが、入ってまず図書スペースになっている点です。

ここはうるさくしてはいけないのだと利用者相互のマナーを空間が伝えてくれるからです。

学習環境が駅のすぐ近くにあるという点も大きいです。

駅と自分の家間のサードプレイスとして地方都市だとやはり駅近くにあることがより重要なのではないかと思っています。

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昼食をしにレストランへ

丁度いい時間であったので、市民館内にあるレストランで昼食をとることにしました。

このレストランはコの字型の建物の末端かつ、通りに面しており利用者が建物内外からアクセスできるようになっています。

建物内側からはレストランを壁で仕切ること無く、スロープ、オープンスペース(ロビー)、エントランスホールなどと空間的に繋がっています。

完全に分断されたり、廊下を通ってレストランへ入るというアプローチの仕方がこういった施設では多いように感じますが、他の空間との間合いの取り方で仕切る仕切らないの選択の有用性は変わってきます。

仕切ったほうがいいのに仕切られていなかったり、その逆もあります。

この茅野市民館では仕切らない選択が建物全体を通してされていて、その統一された連続感がこのレストランに違和感を生むことなく成り立たせています。

中庭に面した窓際の席に座りましたが、向かいの図書スペースで活動している様子や、スロープを通る人の様子が見られ、なだらかに動く景色に安らぎを覚えました。

山脈を反射するガラス

これは古谷誠章さんと藤森照信さんが対談された記事を見て知ったのですが、駅のホームから茅野市民館を見ると、ジグザクに折れたガラスのファサードは、背後の山脈を綺麗に反射しているのです。

それは見事に反射されていて、建物という物質でありながら自然を感じられるのはガラスを使って生み出せる魅力の一つであると感じました。

おわりに

道中の偶然の名建築との出会いはとても感動的です。ここにこんな素晴らしい建物が存在していたのだと自然に笑みがこぼれてしまいます。

茅野市民館然り、簡潔なゾーニング、プランを利用者としての合理性の元に成り立たせるのは非常に難しいことであると感じます。

複雑な建物は感じ方も複雑にして、抽象的に捉えたものを頭のどこかに置き、それがやがて霧消してしまうように感じます。

その点において茅野市民館は頭の中に居続ける建築であると思いました。

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