はじめに「世界遺産のオペラハウス」
オーストラリアのシドニーにある、オペラハウスに行ってきました。
建築をやっている人ならず、多くの人が知っているであろうシドニーの象徴的な建築で、1973年に竣工し、2007年に世界遺産にも認定されています。
いつか見たいと思っていたオペラハウスをようやく見ることができました。今回はツアーに参加して内部の見学もしてきました。
ツアーでは3つのホールを見させてもらいました。ホール内の撮影は不可だったのですが、通路やホワイエの撮影は可能でした。
建築家ヨーン・ウッツォンの関わり
シドニーオペラハウスを設計したのは、デンマークの建築家、ヨーン・ウッツォンです。
ヨーン・ウッツォンはデンマーク出身ということもあり、例えばコペンハーゲンにはウッツォンが設計した教会があったりします。
基本的に、設計者は自分で建物のプラン・デザインを考それを図面にし、現場監理で指示して形にしていくものですが、ウッツォンは途中で設計を外れているというのがこのプロジェクトの大きな特徴です。
外れた理由は、建設中に政党が変わったことで上がっていくコストの予算承認が得られなかったことにあります。
その後は他の設計者が監理業務を行っております。そしてウッツォンは二度とオーストラリアには来なかったそうです。
球体から切り出した形をデザインに
シドニーオペラハウスはどこか人を魅了する形態を取っていると感じました。
設計者であるヨーン・ウッツォンは、球体から切り出した複数のピースを組み合わせて建物を設計しているのです。
球体というのは自己完結的な形なので、それは構造的にも合理性のある形と言えます。
その様子はツアー中に観るビデオでも紹介されていますし、屋外に置かれた展示からも知ることができます。
そのピースひとつひとつの形はどこかフライドポテトにも似ているなと思ってしまいました。
それらピースが外に向いている部分はガラス張りとなり、光や視線を呼び込みます。
そして、実際に近くに行ってみて感じたのですが、思ったより屋根がくすんでいてアイボリーっぽかったです。
見る前は勝手に真っ白のイメージでいましたが、完成当初からアイボリー調の色だったようです。
素材は全てタイルで、タイルの釉薬が太陽の光を反射しててかっていました。
外観は見る角度によっても違って見えます。角度によって1棟に見えたり、複数棟に見えたり、ピース同士の重なりが際立って見えたりします。
自分のお気に入りの角度を探すのも面白いと思います。
ホール建築の要、フライタワー
ツアーでは3つのコンサートホールを見せてもらいました。
ホール建築の特徴として、フライタワーがあることが挙げられます。
フライタワーというのは演出装置が置かれる舞台上空の部分のことで、それら装置を隠す大きな空間が必要になります。
なのでよく外観に長方形が「ボコッ」と出てくるのですが、オペラハウスは外観にそれが出ていないというのが建築的な見どころの一つです。
つまりフライタワーが球体の形に覆われているようになっています。
日本の建築家である藤本壮介さんも「フライタワーは一定の高さが必要なため、形としてユニークにならざるをえない」と言っている通り、その処理こそ建築デザインの肝になる部分なのです。
内部に現れるコンクリートリブ
ホールの内部も大きな見どころなのですが、ホワイエや通路部分もとても見応えがあります。
それは構造デザインが内部に表れているからです。
この建物は球体から切り出した形と述べましたが、その球体の屋根を複数のコンクリートリブで支えています。
リブはプレキャストで作ったと説明を受けました。
そのコンクリートリブが生み出す陰影やリズムがとても素晴らしいと思いました。
ホワイエは、天井が高く開放的なところや天井が低く落ち着いたところもあり、そのどれも魅力的でした。
目の前に海が広がるガラスのホワイエは屋根もガラスになっているので、コンクリートリブの代わりに「くの字に折れ曲がった鉄骨」が使われていました。
細かな構造体が連続している様は美しかったです。
個人的に一番好きなのはエントランス部分のコンクリートリブです。
コンクリートの無骨さが素直に現れていて、とても世界観がありました。
おわりに「ツアー後はオペラハウスのカフェで」
以上、オーストラリアのシドニーにあるオペラハウスの紹介でした。
ツアーは少々金額が高めではあるのですが、非常に参加する価値があると思いました。
英語だけではなく日本語や韓国語でのツアーもあり、ガイドさんの声をヘッドフォンで聴きながら移動していくので聞き漏れもなく良かったです。
1時間ほどのツアーが終わった後は外のテラス席でカフェタイムを過ごしました。
名建築で過ごす時間はとても貴重な体験でした。
・シカゴの隣町、プラーノの名建築|ファンズワース邸
・既成概念を変える20世紀建築「ポンピドゥー・センター(Centre Pompidou)」
※ちなみに2023年時点で、ホール等の内部は公演やツアー以外では見ることができませんでした。ツアー代金は43ドルでした。