はじめに
2019年4月に福井県に行ってきました。
福井ではこの槇文彦さんの設計した福井県立図書館や、黒川紀章さんの設計した福井市立美術館、内藤廣さんの設計した福井県年縞博物館を見ることが目的でした。
そしてこの福井県立図書館は、以前に槇さんの作品集を読んだ時に一番惹かれた建物でもありました。
象徴的テラコッタの直方体
福井県立図書館の敷地は長閑な田園風景の中に存在し、メインの敷地エントランスは旗竿状に伸びるアプローチを通っていきます。
遠くから見て象徴的なのが、赤いテラコッタ(焼き物)が貼られた大きな直方体ボリュームです。
それは地上4階+塔屋2階分の高さであるので、図書館の位置を指し示すようでもあります。
その壁に近寄って見てみると、テラコッタの表面はリップルマーク(砂紋)のように波模様になっていました。
それはマッシブな建物でありながら材質感を出すことで、決して低層の部分から分離的にならないような工夫であるように思えます。
高天井のワンルームにまとめられた空間
建物内に入ってみます(※内観の写真掲載は原則禁止でした)。
右手にカフェや多目的ホール、左手に管理部門、正面が閲覧室があります。
閲覧室は2層分の高天井になっていて、ガラススクリーンの外側に向けて視線が真っ直ぐに抜けるようになっています。
そこはあらゆるものがワンルームに存在していて、自然光で満たされる空間になっています。
中には鉄骨の十字柱が奥行きを示すように林立しているのですが、その上部はトップライトになっています。
照明はペンダントライトや書架付照明、机付照明と、居住域照明になっているため、天井面がスッキリとし、十字柱の上部から入ってくるトップライトがより象徴的に映るようになっています。
中庭、読書テラス、水盤から運ばれる空気
この建物はゾーニングが簡潔で上手いと思いました。
ワンルームの閲覧室には自然光がふんだんに入ってきますが、外部との接触領域を中庭や読書テラスなどを作ることで増やしています。
光だけではなく、より自然的価値を付加しているのが水盤で、それはエントランスホールやカフェ、閲覧室の先から見ることができます。
図書館は本を読んだり、勉強をしたり内向きな世界に入っていく場所ですが、ふと顔を上げた時に外の風景を見られるとその世界が拡張されていきます。
そのためにいくつかの空虚な器が必要なのだと思います。
それが「中庭、読書テラス、水盤」というように図書館の随所に設けられています。
敷地を一周してみる
外に出て散策路が設けられている敷地を歩いてみます。
小丘のように地形的に作られているところがあり、登ると図書館を遠くから見ることができます。
外にも十字柱が立っており、ガラスのカーテンウォールとの間にある縁側的空間は思索に耽るのに良さそうな空間です。
アルミスパンドレルの軒天に反射して映る水盤の揺らぎが自然との距離をより近くしてくれるように感じました。
おわりに
内部の写真を載せられないのが少々残念ではありますが、この福井県立図書館は実際にこの場に身を置くことの価値を強く感じさせてくれる場所です。
なので実際に図書館の中の自然光がふんだんに入ってくる、ガラススクリーンとワンルームの閲覧室の空気感を、ぜひ体験してみてください。
※内観の写真は撮らせて頂くことができましたが、ネット掲載は禁止でしたので、記事内の写真は外観のみになります。