はじめに「バルセロナの建築といえば」
スペインのバルセロナに行ってきました。
バルセロナと言えばサグラダ・ファミリアをはじめとする、アントニ・ガウディ(1852-1926)の作品がたくさん見られる場所です。
今回はそんなガウディ建築の後に街に出現してきた現代建築を紹介したいと思います。
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トーレス・ポルタ・フィラ(Torres Porta Fira)
トーレス・ポルタ・フィラは日本の建築家、伊東豊雄さんが設計しました。
2010年に完成し、ホテル棟とオフィス棟に分かれています。
どちらもRC造の建物です。
地上26階のホテル棟は真っ赤な外観ですが、近寄ってみると、それらは多数のアルミパイプで構成されていることが分かります。
そして頭でっかちな上層階に向けてねじれの様子が見られるのですが、それはパイプをスパイラル状に配置することにより表現されています。
また地上24階のオフィス棟は外観の赤いX型の部分が目立ちますが、そこはエレベーターのシャフトになっています。
バルセロナ見本市グランビア会場(Fira Barcelona Gran Via)
バルセロナ見本市グランビア会場は日本の建築家、伊東豊雄さんが設計しました。
2007年にオープンした建物で、先述のトーレス・ポルタ・フィラと道路を挟んで反対側にあります。
見本市が開かれる場所として、平面的に広がった建物で、ランダムに開けられた開口をもった有機的なファサードが特徴的です。
同じく伊東さんの設計した、銀座ミキモトのようなファサードです。
伊東さんはこの建物の設計で「ファサードしかやることがない」とおっしゃっていましたが、水平に伸びていくシーンを開口が楽しげに演出しているように思えました。
カイシャ・フォーラム(Caixa Forum Barcelona)
カイシャ・フォーラムは織物工場として使われていた建物が2002年に改装され、モデルニスモ建築となりました。
その木の枝のようなエントランスの部分を、日本の建築家、磯崎新さんが設計しました。
磯崎さんは2019年3月に日本人で8人目に当たる「プリツカー賞」を受賞した建築家です。
パラウ・サン・ジョルディ(Palau Sant Jordi)
パラウ・サン・ジョルディは日本の建築家、磯崎新さんが設計しました。
バルセロナオリンピックの屋内競技場として使用するために1990年に完成した建物です。
アリーナから屋根までが45mというスペースフレーム構造の空間は、構造家川口衛さんが考案した「パンタドーム構法」で作られています。
これは電車のパンタグラフと同じメカニズムであることから付けられた名前です。地上で架構を組み立ててから中央をジャッキアップしドームを構成します。
バルセロナ・パビリオン(El Pabellon de Barcelona)
バルセロナ・パビリオンはドイツ出身で近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)が設計しました。
1929年のバルセロナ万国博覧会のために建設されましたが、博覧会後に取り壊され1986年に復元されました。
水平垂直のラインが自然と対峙する美しさを放つモダニズム建築で、さまざまな石材が使われていることが特徴です。
また、このパビリオンのためにミースがデザインしたバルセロナ・チェアも見ることができます。
詳しくは別記事にて紹介しています。
モンジュイック・タワー(Torre de Comunicacions de Montjuic)
モンジュイック・タワーはスペインの建築家、サンティアゴ・カラトラバが設計しました。
1992年に完成し、通信塔の役割を果たしており、外観は直線、曲線、傾斜の要素を頂に向けて組み立てています。
基壇部にはガウディを連想させるセラミックの破砕タイル仕上げが見られます。この「トランカディス」という工法はモデルニスモ期の建物によく見られます。
また塔の脚は3点で支持されているのが分かり、意匠と構造のデザインが溶け合ってできているように思います。
そして階段を下り、見上げると「Telefonica」というスペインの大手通信事業者ロゴが入っており、通信塔として使われていることがそこからも見て取れました。
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トーレ・アグバール(Agbar Tower)
トーレ・アグバールはフランスの建築家、ジャン・ヌーヴェルが設計しました。
2005年に完成した建物で、ロンドンにある30セント・メリー・アクスのような形態の高層ビルです。
バルセロナ水道局が入る建物で、外観に現れる赤と青の配色はバルセロナの山と水が由来のようです。
そして近寄ってみると建物外側はガラスのブラインドで覆われていることが分かります。
一枚あたり1,200mm×300mmのサイズで、これらのブラインドは気温センサーと連動し開閉するようになっています。
見に行った時も方角によってブラインドの角度が異なっていました。
このような空調負荷を軽減する機構は、パリにあるジャン・ヌーヴェルの作品、アラブ世界研究所でも形を変えて表現されていたのを思い出しました。
フィラ・デ・ベイカイレ・エルス・エンカンス市場(Mercator Fira de Bellcaire Els Encants)
フィラ・デ・ベイカイレ・エルス・エンカンス市場はスペインの設計事務所、b720 Fermín Vázquez Arquitectosが設計しました。
2013年に完成した建物で、先述のトーレ・アグバールの近くにあります。
高さ25mから覆う鏡張りの庇が特徴的です。
その鏡は光やランドスケープを反射し、市場の雰囲気を滲み出す役割を果たしています。
おわりに
バルセロナには日本の建築家の作品も見ることができました。
スペインではカラトラバ、フランスではヌーヴェルなどがいる中で、日本の建築家の作品が見られるのは嬉しくあります。
モデルニスモ建築から現代建築まで楽しめるバルセロナの建物探訪でした。