南国と西洋の調和が圧倒的なマニラホテル|THE MANILA HOTEL

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はじめに「歴史を紡ぎ、残るホテル」

フィリピンの首都マニラにある、マニラホテル(THE MANILA HOTEL)に宿泊してきました。1912年に建てられた歴史あるホテルで、再建やリノベーションを経て現在の形に至ります。

その過程にはフィリピンの歴史だけではなく、「戦争」というキーワードでアメリカや日本という国が大きく関わっています

ここは建築的に素晴らしいホテルなので、当初の予定を変更して追加で1泊してしまったほどです。

この記事では、多くの人におすすめしたいマニラホテルを、建築士としての視点や歴史とともに紹介していきたいと思います。

再建とリノベーション

マニラホテルは1912年に開業しました。設計はアメリカの建築家、William E. Parsons(1872-1939)が担当しています。

なぜアメリカ人かというと、その時代のフィリピンはアメリカの植民地となっていたからです。

フィリピンはそれ以前はスペインの植民地で、1898年にアメリカの植民地となりました。さらに第二次世界大戦の頃には一時的に日本の支配を受けていた過去があります。

マニラホテルの建物はコロニアル様式と言われていますが、現在見られるホテルは数々の再建とリノベーションを経たものとなっており、そこに深い歴史が存在しています。

リノベーションは1935年、1975年、2008年と3回に渡って行われました。

1975年の際にはタワー棟の新築とともに、元々あったホテルが再建されました。

高く聳えるタワー棟

再建の背景にあるのが戦争です。

第二次世界大戦の頃に、マニラホテルは日本軍に占拠されました。そして戦争中に日本軍による放火を受け、大きな損傷を残しました。そのためにホテルは再建されたのです。

そんな歴史を後日調べて知ることになりましたが、事前に知っていたら違う視点で泊まっていたのかもしれません。

建物の外観は白い外壁に屋根や窓、手すりの緑が合わさり気品の良さを醸していました。

その外観は南国の大きく育った木々と、とてもよく調和していました。

外観

豪華で気品のあるエントランスロビー

ホテルには東南アジアで主流のタクシー配車アプリ、Grabを使って向かいました。

マニラは人口1000万人を超える大都市で、交通渋滞が深刻でホテルまでの道路も混んでいました。タクシー運転手も「マニラの渋滞は本当に深刻だ」と嘆いていました。

大きく庇の張り出した車寄せに付くと、ドアマンが出迎えてくれました。そして扉を開けて迎えてくれるあたりも高級ホテルのおもてなしを感じました。

中に入ると、西洋感のあるアーチと南国感のある木調が調和した圧倒的なロビー空間でした。

圧倒的なロビー

これまで高級ホテルも含め色々なホテルを見てきましたが、こんなにゴージャスで気品があり、唯一無二の存在感を示すロビーはなかなか無いように感じました。

そこには歴史あるホテルならではの古き良き安心感もありました。

ロビーは連続するアーチに囲われていて、そのアーチの中にレセプションがありました。

レセプション

ロビーの中心はテーブルと椅子が並べられ、ラウンジとして雑談する人や食事する人たちがいました。

天井は木のグリッドになっており、そのサイズはアーチと調和していました。そして大きなシャンデリアがその空間の品格をさらに上げていました。

ラウンジ利用ができるロビー空間

正面の突き当たりにはグランドピアノが置かれ、チェックインのタイミングでは演奏していました。

その空間は格式を感じますが、ホテルの宿泊客は南国らしくラフな格好の人が多く、それが緊張感を緩めていて良かったです。

タワー棟のマニラ湾ビュー客室

スーペリアデラックスの部屋

チェックインをしてカードを受け取り客室へ向かいました。今回宿泊したのが1977年にできたタワー棟です。

メイン棟も良いのですが、写真で見たインテリアの様子で、タワー棟の方が気に入ったためそちらを選びました。

エレベーターホールや共用廊下の幅員が広く、このゆとりある感じに古き良きプランニングを感じられました。

客室階のエレベーターホール

そして客室前の空間は八角形になっており、廊下の作り込みの上手さを感じました。空間はベージュや茶色系のカラースキームで、心地よさがありました。

客室前の広がった空間

宿泊した部屋は16階にあるスーペリアデラックスの部屋です。広さは40㎡あります。

【HP(客室)】https://www.manila-hotel.com.ph/rooms/superior-deluxe/

金額は1泊朝食込みで15,000円という破格でした。東京にあったら10万円は超えそうだと思いました。

客室プランは縦長の形状となっており、玄関ドアを開けて廊下、横に水廻り、奥に寝室というオーソドックスなプランでした。

寝室は細かな装飾の施された木製家具が置かれ、天井にはモールディングが回っていました。

窓には格子型の日除のようなものが設けられており、窓の手前にはソファとテーブルが置かれ、とても高級そうな質感でした。

外の景色を見ると目の前にマニラ湾が開けており、下にはホテルのプールや近くの工場が見えました。

部屋からのマニラ湾ビュー

眼前に開けるマニラ湾

ベッドの背面は大きなニッチになっており、両脇に貝殻のモザイクタイルが貼られ、背面には間接照明が仕込まれていました。

ベッド背面のニッチ

貝殻のモザイクタイル

その貝殻は机の正面にも貼られており、コンセントなどが隠されていました。それは最初気がつかないくらい繊細なディテールとなっていました。

ワードローブは引き戸を開くと照明が付く仕掛けとなっており、ハンガーパイプに電球が仕込まれていました。

ワードローブ

水廻りは洗面台、便器、浴槽、シャワー室がそれぞれありました。入浴しながらテレビを見られるようにもなっていました。

シャンプーやボディークリームなどのアメニティはマニラホテルオリジナルのもので、植物模様の緑のデザインでした。とてもいい香りでした。

マニラホテルのアメニティ

部屋に到着して少し経つと、チャイムが鳴り、なんだろうと思いドアを開けると、ウェルカムサービスとしてフルーツの盛り合わせを頂きました。

ウェルカムサービスのフルーツ盛り

とても居心地の良いホテルで大変気に入ってしまい、翌日は別のホテルに宿泊しようと思っていましたが、追加で1泊してしまいました

足が付かなくなるくらい深いプール

プールは1階の海側、屋外にあります。プールから海は見えませんが、中央にバーを構える広々としたプールです。

客室から見たプール

バーは水に浮いているような作りで、椅子が水中にあり、プールに浸かりながらバーを楽しむことができます。

プールに浸かりながらドリンクを楽しめる水中バー

五角形のような形をしたプールですが、しっかり泳ぎたい人と遊びたい人が一緒に使えるくらいの広さがあります。

子供エリアも設けられているプール

そして水深が思ったより深かったです。

プールサイドから入ったところで1300mm程度あり、そこから奥に進んでいくと徐々に深くなっていき、最も深いところでは1800mmくらいあるように感じました。

ホテルのプールでこんなに深いところは初めて体験しました。

ジムで運動後にサウナで世間話

ジム

ジムはプール横の建物の1階部分にあります。2階は更衣室になっており、シャワーやサウナも備わっています。

更衣室

ロッカーはリストバンド式で、受付で言われた番号のロッカーにタッチすれば開くようになっています。

ジムはトレーニング器具が満遍なくありました。色々と体験したかったので全ての器具を使ってみました。

トレーニングを終えて疲れたら、置いてあるデトックスウォーターとバナナをいただきました。良いホテルにはジムに軽食が置いてあるものです。

軽食目当てにトレーニングをしにいくこともしばしばあり、何が目的か分からなくなってしまいます。

トレーニングを終えシャワーを浴び、せっかくなのでサウナに入りました。最初は一人だったのですが、途中で30歳くらいの人が入ってきました。

マニラに住んでるのかと聞かれ、東京と答えると、好意的に受け取ってくれました。その人はフィリピン人ですが、とある日本企業に勤めているということで、日頃から日本人とのコミュニケーションもよくするということでした。

サウナを数セット繰り返しながら、二人で色々と話しました。向こうが気になっていたのは日本の宗教観でした。どうやら全国民が敬虔な仏教徒と思っていたみたいでした。

フィリピンはどうかと聞くと、8割がカトリック教徒らしく、生まれた時は皆カトリック教徒になるが、大人になると宗教の選択ができるようになり、無宗教という選択肢もあると言っていました。

特に聞きてみたかったのは、前日に行った「Manila South Cemetery」という場所のことでした。

ここは墓地なので、スウェーデンの森の墓地のように公園っぽく見学できるのかと思って行ってみましたが、実はスラム街となっており、ボロボロの服を着た人や、狂犬病を持っていそうな犬がそこらにいて、ヒヤヒヤとした場所でした

それを伝えたら、「なんでそんなところ行ったんだ?自分も行ったことはないし、普通行かないよ!」と言われました。

さらに、ホテルの近くには大きな公園があるのですが、朝に通った時は爽快で気持ちのいい場所に感じたのですが、その人曰く、そこも夜になると危ないから行かないほうがいいとホテルのスタッフさんに言われたようでした。

夜は危ないと言われた公園

そんな光と闇が見え隠れするのがマニラの印象でした。

国際色豊かな料理が並ぶレストラン

歴史ある古き良きホテルなので、レストランも気になっていました。ディナーだとそれなりにお金がかかるので、朝食付きのプランで申し込みました。それでも1泊15,000円程度という超お得な価格で驚きました。

レストランは1階のプールに向かう途中にあります。とても広く座席数が多いです。

レストランの座席

受付があり部屋番号を言うと席まで案内してくれました。窓際の席と窓の見えない席がありますが、当然窓際は人気でした。

座席までの案内

ビュッフェ形式でしたが、自分で取るのではなく、「これを1つ欲しいです。」とカウンター内のスタッフさんに言うと取ってくれる半ビュッフェ的なスタイルでした。

半ビュッフェスタイル

フィリピン料理をはじめ、洋食や中華、韓国料理がありました。とても全部には手を出せないくらいの種類があり豪華でした。

オムレツなどシェフが作ってくれるメニューもありました。そして南国あるあるですが、空調が効きすぎていて少し寒かったのは難点でした。

おわりに「マニラに来たら宿泊したいホテル」

以上、マニラホテルの紹介でした。開業から100年以上が経つ歴史あるホテルは比類なき良さがありました。

このホテルに滞在し、建築デザインを学んだのはもちろん、日本とフィリピンの歴史も学ぶことができ、記憶に深く残りました。

それは近くにあるスペイン時代の要塞都市、イントラムロスと言う観光地に行って知ることができました。

マニラホテルは観光拠点としてとてもおすすめのホテルです。ぜひ圧倒的なエントランスロビーを体験してみてください。

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