9つの事例からトロントの建築デザインを学ぶ|カナダ建築旅

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はじめに「治安の良いカナダ」

カナダのトロントに行ってきました。冬に行ったのでとても寒かったです。トロントにはアメリカの都市から飛行機で行きましたが、その治安の違いに驚きました。治安がすごく良いのです

それは、到着し市内への電車に乗った際も感じました。治安も良いですし、電車は清潔、カナダが日本人に人気な理由がよく分かりました。そして、アメリカのように移民が多く、様々な国の人が暮らしているところもカナダの特徴です。

私が一番気になる建築という観点では、トロントらしさのようなものの発見があり、デザインとはどういうものなのかということを考えさせられました

この記事では、トロント現地の建築について紹介していきたいと思います。

上層部と基壇部を分けた、建築デザインの個性

トロントのユニオン駅を降りると、そこは高層ビルに囲われた風景が広がっていました。

※高層ビルはトロントの中心に一極集中しているだけで、全体としては多くはない印象でした。

そこで気になったのが建築デザインです。アメリカに多い一目で格好良いと感じる建築に比べると、独特なデザインの在り方があるように思いました。もちろん中には名建築や格好良いと思う建物もありました。

トロントのスカイラインを見てみると、高さやデザインがバラバラでした。高層ビル群の密度感が低いことも、そう感じたことに起因していると思います。

トロントのスカイライン

対して足元の歩行者空間にはゆとりがあり、人口密度がほどほどなところには魅力を感じました。

トロントにはゆとりのある歩行者空間が多い

中でも私がすごく気になったのが、高層ビルの上層部と基壇部におけるデザインの調和や一体感です。

はじめに紹介したいのが、Sixty Colborne Condosという建物です。

【遠景】Sixty Colborne Condos (設計:ARCHITECTS ALLIANCE [※トロントの設計事務所])

歩いていて遠くから見える上層部のデザインに惹かれました。足元まで行ってみると、混乱しました。本当にこれが一つの建物なのかと疑いました。

足元から見た外観 (Sixty Colborne Condos)

全体の調和というよりは、各部分で成立したデザインで構成されており、全体デザインとしてはバラバラに感じました。上層部と基壇部をそれぞれだけでフォーカスして見てみるとかっこいいのですが、驚いた事例でした。

そういった高層ビルはまだまだあります。次に紹介したいのが、75 on the esplanadeという建物です。

【遠景】75 on the esplanade (設計:ARCHITECTS ALLIANCE)

これも先ほどと同様に、遠くから見た上層部デザインにはリズミカルな変化があって、目に留まりました。ですが足元に行くと複数のデザイン要素が喧嘩しているように感じました

足元から見た外観 (75 on the esplanade)

こちらもデザイン要素単独にフォーカスすると、それぞれ自体は良いと思うのです。ポジティブに捉えると、こういうデザイン的ハイコントラストがトロントデザインということなのでしょうか

しかし、デザインの善し悪しは恣意的であって正解は無いので、これを一概に良くないというのは間違っているとも言えると思います。飽くまで私の主観的な問題です。

後からこの建物の設計者を調べてみると、先ほどのSixty Colborne Condosと同じでした。その設計者のスタイルでもあるということなのでしょうか。

次に、こんな事例もあります。包丁のように弧を描いたデザインを全体の特徴としているL Towerという建物です。

【遠景】L Tower (設計:Daniel Libeskind)

これも基壇部が別建物であるようにデザインされています。ここまで来ると、上下のデザインを完全分離するのがトロントの主流だと教え込まされているようでもあります。

足元から見る外観デザイン (L Tower)

調べてみると、設計者は著名な建築家、ダニエル・リベスキンドということで、それは大変失礼しましたという気持ちです。

次の事例はVu South Towerです。こちらもデザイン要素同士が喧嘩してしまっているように感じました。デザイン要素を切り替える何かがあったほうがいいように思いました。

Vu South Tower (設計:Hariri Pontarini / Yonge + Wright)

次は中高層の事例ですが、Berczy Parkの前にあるビルでは、アーチと出窓の要素がぶつかってしまっていました。外壁のテクスチャはすごく良かったです。

Berczy Parkの前にあるビル

また、工事中のタワーレジデンスを発見しました。Artistry Condosという建物です。

【工事中】Artistry Condos (設計:Graziani + Corazza Architects [カナダの設計事務所])

これも躯体を見ると、どうやら基壇部のデザインは異なりそうだと思いました。気になって検索するとパースも見つかりました。

Artistry Condosのパース【参照】https://urbantoronto.ca/database/projects/artistry-condos.28691

思った通り、基壇部のデザインは上層部とはっきりと異なっていました。ですが、その中間部にデザインを切り替えるための余白(黒い部分)があるので、これはこれでありかなと思いました。

トロントで発見した好きな建築デザイン

もちろん気に入ったデザインの建物もあります。はじめに紹介したいのが、Ontario Court of Justice Torontoという建物です。

Ontario Court of Justice Toronto (設計:Renzo Piano / NORR Architects)

これは上層部のプロポーションがまず良く、そして大きな庇で切り替えた後に、全体のバランスを整えるように庇と同じデザインを反復しながら基壇部を構成しています。設計者を調べるとレンゾ・ピアノが関わっていました。さすが、いい建築をつくるなと思いました。

次はかなりコンセプチュアルな建物ですが、Schwartz Reisman Innovation Centreも格好良いなと思いました。トロント大学の施設の一つです。

Schwartz Reisman Innovation Centre (設計:Teeple Architects [トロントの設計事務所])

形態は台形の立面の中にダイナミックに形を分節しています。外観のディテールに目を移しても抱きのデザインがされていて見応えのある建物でした。

抱きのデザインが効いた外観

そして面白いなと思ったのが、Autodesk社の入っている建物、MaRS Centre The West Towerです。

MaRS Centre The West Tower (設計:B+H Architects [トロントを中心に世界展開している組織設計事務所])

Low-Eと熱線反射だと思われますが、2種のガラスを使った外観デザインとなっています。素材がガラスだけのデザインのため斬新さを感じた事例です。中に入ると大きなアトリウム空間があり、古い建物が活かされていて魅力的でした。

アトリウムの内観 (MaRS Centre The West Tower)

おわりに「勉強になったトロント建築旅」

トロントの街で発見した建物の紹介でした。最初は特にフィルターを介さずに見ていても、見た数が増えていくと、それらの特徴に気がつくものです。トロントではそれが上層部と基壇部のデザインの在り方であったと思いました

デザインの善し悪しを論ずるのにはとても気合がいるものですが、それでも自分がどういうものに惹かれ、惹かれないものはなぜなのか、ということを考えることが大事だと思っています。とても勉強になったトロント建築旅でした。

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