はじめに
近代建築の巨匠、ル・コルビュジェが設計したユニテ・ダビタシオンは世界遺産となっています。
集合住宅の中にはレストランやオフィス 、保育園やホテルも含まれていて、その建物自体が一つの都市のようになっています。
貴重な機会でしたので、ユニテダビタシオン内のホテルに泊まってきました。それでは紹介していきたいと思います。
意外なボリューム感
敷地はマルセイユの中心市街の南側にあり、最寄り駅のRond-Point du Prado駅から10分ほど歩きます。
大通りを歩いて直線的に向かったのですが、高層の建物は少ししかないためユニテ・ダビタシオンは目立ちます。
実物を目にすると、こんなにボリュームがあったのかと感じました。
近くにはユニテ・ダビタシオンを模倣したような建物も見受けられました。
遠くからでは長方体のマッシブなフォルムですが、近くに来ると住戸ごとに分割され、水平・垂直の線が織りなすリズムはヒューマンなものに感じられました。
ブリーズソレイユ
日射に対する装置として、コルビュジェはブリーズ・ソレイユと呼ばれるものを考え出しています。
住戸のバルコニーの部分ではフレームを作り出して日射遮蔽をしています。
そのフレームはプライバシーの確保にも役立ちます。そしてその部分を大開口とする事で内部には明るい自然光が入ってきます。
泊まった部屋のベランダには躯体と一体した机が設けられていて、下部には小さな開口付きブロックが嵌められ、前面の腰壁の高さは実測していませんが130cmくらいとやや高めでした。
それらがブリーズソレイユを構成していました。
また3階のショップやオフィスなどがある2層分の吹抜けは外部に面しているのですが、外装のガラスの外側にはコンクリートのルーバーが斜めに設けられていて、それがブリーズ・ソレイユとして機能しています。
屋上庭園
コルビュジェの提唱した”近代建築の五原則”のひとつ、屋上庭園は日中は一般開放されていて誰でも訪れることができます。
ですが一部入場が制限されているエリアがありました。そちらにはプールがあるようなので見られず残念でした。
屋上の中心にはミュージアムもあり、外周は散歩コースのようになっています。外周の腰壁が高いので、遠くの景色に視線が行くようになっています。
また木製窓枠がコンクリートの無機質な印象を和らげていました。
思い返してみると建物内の建具はほとんど木製だったので屋上も等価に扱って木製にしたのだと思います。
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居住フロアを見て回る
ホテルの受付は3階にあるのですが、この階にはレストランやオフィスもあり、唯一明るいフロアです。
外部からの自然光がそれらの諸室越しに中廊下まで満たされていました。
オフィスの部分は外廊下かつ吹抜けになっていて、コンクリートのベンチが置かれるなど単なる動線ではないものとなっていました。
ほかのフロアは中廊下の両側が住戸で、加えて照明が暗めでした。
ですが玄関扉や郵便受けが色とりどりで、それぞれの色に反射した光が作り出す空間は今まで体験したことのないような情緒的な世界観がありました。
階段を昇り降りしていて思い出したのですが、そういえばユニテ・ダビタシオンはメゾネット式の住戸です。
泊まった部屋はフラットだったので、メゾネットの内部がどうなっているのかが気になります。建築ツアーに参加すると中を見ることができるそうです。
宿泊して体験するコルビュジェ建築「ユニテ・ダビタシオン(Unite d’Habitation)」②に続きます。