滋賀の土着的建築が作る新たな風景「ラ・コリーナ近江八幡」

建築

はじめに

2019年4月に滋賀に行ってきました。 一番の目当ては、このラ・コリーナ近江八幡です。

建築家、藤森照信さんが設計したこの建物は、たねやという和洋菓子店のフラッグシップとして2015年に開店しました。

日本の風土、素材を建築に投影した土着的な建物を作るのが藤森さんの特徴ですが、このラ・コリーナ近江八幡の広大な敷地内ではメインショップを中心とした様々な建物や素材を見ることができます。

草屋根の丘

ラ・コリーナ近江八幡は八幡山を背後にした草屋根の外観が特徴的です。建物それ自体が丘のようであり、来店者を迎えます。

見学に行った時はアプローチ側の面が改修中であり、屋根の芝は刈られた状態でしたが、黄金色の芝は前面に植えられた草(オカメザサ)と同化していて、自然の風景の一部となっていました。

漆喰と炭の内観、そしてカフェタイム

開店が9時ということで10分前に到着しましたが、入口前には休日ということもあり多くの人が列を作っていました。

並んで待つ場所は軒下で、そこでメニューが書かれた紙を渡されます。

そうやって何を注文しようか決め、そして壁や天井、窓、軒から垂れる前日に降った雨水を眺めながら待つこと10分、開店の時間になりました。

中に入ってみると、外側とはまるで異なる世界が広がっていました。内装は漆喰で白く塗られ、そこには黒いものがたくさん付着しているのです。

近寄って見てみるとそれらは炭で、手作業感のある疎密が作られながら空調の吹き出し口の枠やサッシ・窓にも貼り付けられています。

一人で訪れたため、カウンター席に通してもらったのですが、漆喰と炭で囲まれた空間で食事をするというのは非日常的で不思議なひと時でした。

注文したのはバームクーヘンとコーヒーのセットです。ここでは焼きたてのバームクーヘンを食べられるのが特徴で、様々な席が用意されているので行く度に違った席の様子を体験できるのがいいなと思いました。

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ラ・コリーナの敷地内に広がる世界

カフェタイムを終え、入口とは反対側に進むと外に出る扉があり、その扉を開けると目の前には大自然の風景が広がります。

そこもラ・コリーナの敷地内であり、本社やカフェ、子供が遊べる小屋、フードコートなどがあります。

他にもマルシェ、専門ショップ、パンショップが今後作られる予定でラ・コリーナは更に拡張するそうです。

カフェの入っているメイン棟

その内側の庭からメインショップの方を望むとそれは日本的というよりは自然の概念的原風景とも言えるような広がりを持った建物に見えました。

こんな場所が日本にもあるのだと驚く人が多いのも頷けます。

典型的な建物ではなく、お伽話の中に出てくるような世界は大人から子供まで楽しめると思います。

実際に子供は嬉しそうに走り回り、敷地内を散策する人の顔には自然な笑みが浮かんでいるのを見て、建物を含む全体の構想の素晴らしさを感じました。

小さく味わい深いもの

敷地内にはその独特な世界観を構成する小さなものが多数存在しています。

まず外部灯です。建物アプローチ側には銅板が丸められてできたもの、本社脇には土で作られた突起物が外部灯として機能しています。

駐車場にある外部灯は焼き杉板の貼られた柱が建てられていて、そこも自然素材が使われています。

有機的なオブジェ

また内側の庭には「多治見モザイクタイルミュージアム」の小さい版とも言える有機的な土壁のオブジェがあります。

それらには人の手で作られたような味わいが感じられます。

部分的に設けられている樋

またディテールに目を運んでみると草屋根の先は人の通行するところだけ軒樋が設けられています。

それが”部分的に”というところがなんともこじんまりとした奥ゆかしさを感じさせてくれます。

おわりに

雑誌で見たときに衝撃を受けたラ・コリーナ近江八幡でしたが、見るところそれぞれに藤森照信さんのアイデアが散りばめられていてとても面白かったです。

運営の面で素晴らしいなと思ったのが、内にある庭にも入場料を必要とせず入ることがてきるという点です。

ただそこに存在する固有の世界観を前にしたら、自然とそこでの時間を食事を通してもっと過ごしたいという購買欲求に変わるのではないかとも思わされました。

ここは私の中で国内でも行くことをおすすめしたい建築(環境的にも社会的にも)の一つになりました。

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