【宿泊レポ】極上の眺望と皇居まわりの都市計画|アスコット丸の内東京

ホテル

はじめに「アスコットブランド」

アスコット丸の内東京に行ってきました。周辺には、アマンやフォーシーズンズ、シャングリ・ラ、星のやなど超高級ホテルが多くあります。

周辺にメジャーなホテルが多くあるために、これまでアスコットを知らなかったのですが、調べてみると世界で展開しているブランドということが分かりました。

アスコットはシンガポールの会社で、世界30ヵ国200都市に展開しています。日本には東京の他、大阪、福岡にもアスコットブランドのホテルがあります。

それらのブランドの中で一番グレードが高いのが「アスコット」です。日本ではここアスコット丸の内東京が一番宿泊費も高いです。

今回はほぼ外出することなく、ホテル内での滞在をメインに宿泊してきました。また、建築士としての視点を加えながら独自の角度で書いていきたいと思います

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三菱地所設計が設計した建物

アスコット丸の内東京は「大手町パークビルディング」の2229階にあります。先に建物概要を紹介します。

建物概要

用途:事務所、店舗、ホテル、駐車場
規模:地上29階、地下5階、塔屋2階、最高高さ149.95m
構造:地上鉄骨造(一部CFT)地下SRC造(一部鉄骨造)、制振構造
延床:151,708.02m2
容積率:1391.69%(許容1400%)
建築主:三菱地所設計
設計:三菱地所設計
内装設計:メックデザインインターナショナル
施工:竹中工務店
竣工:2017年2月

立地としては皇居の外堀に面したところにあります。東京駅まで徒歩10分ほどの立地です。

平日はオフィス街としてサラリーマンで賑わう大手町のエリアですが、休日は人通りが少なく、とても開放感があります。

建物の地下には飲食店が入っており、地上はオフィスで、上層部がホテルという構成です。断面的には次のようになっています。

【出典】https://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec170213_OtemachiParkBuilding.pdf

大手町駅から直結の建物なので、アスコットに行く人はほとんどB1階からのアクセスだと思います。

案内サインに従って歩いていくと、B1階から1階に向かうエレベータに乗り、1階でエレベータを乗り継いで22階のホテルエントランスに向かうことになります。

ハイグレードなサービス付きアパートメント

アスコットは正確に言うとホテルではなく、「サービス付きアパートメント」という種類になります。

そのため長期滞在も想定しており、客室の中にはキッチンと乾燥機付き洗濯機もあります(全客室についている訳ではないようです)。

キッチンには調理器具があり、レンジ機能付きのオーブン、食洗機が付いています。サービス付きアパートメントという形態と場所柄もあり、館内には日本人は全然見かけず外国人が多くいました。

様々なタイプの客室

130室ある客室は9タイプに分かれています。それぞれのタイプと部屋面積は次の通りです。

部屋タイプ

スタジオ:38m2
スタジオツイン:38m2
1ベッドルームデラックス:54m2
1ベッドルームデラックスツイン:54m2
1ベッドルームエグゼクティブ:76m2
2ベッドルーム和洋室:91m2
2ベッドルームデラックス:105m2
2ベッドルームエグゼクティブ:113m2
丸の内スイート:163m2

ホテルの全体図面は雑誌やネットでも見つからなかったため、避難経路図で紹介します。避難経路図は平面を把握する上で参考になります。

現在地を示す場所が今回宿泊したスタジオタイプです。こちらは角部屋で、窓が2面あります。

価格も一番安かったのですが、角部屋かつ皇居ビューなので、宿泊費を抑えつつホテルの滞在を堪能するのには打って付けの部屋だと思いました。

この横には、スタジオツインの部屋が並んでいます。皇居は建物の西側にありますが、眺めで言うと圧倒的に皇居側が素晴らしいです。

北側、東側に大きめの部屋が並んでいますが、眺めが良いところを小さな部屋に割り当てていいのかと思ってしまいました。(大きい部屋を借りる人の方が条件の良い位置であるべきではないかと思いました。)

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コンパクトで満足度の高いスタジオタイプ

前述しましたが、今回宿泊したのは角部屋のスタジオタイプになります。

こちらのタイプを選んで正解でした。窓が2面あると言うのは開放感が全く違います。皇居側は一面ガラスになっていて、皇居の緑が広く見え、その奥には新宿のビル群が見えます。

こうやって上から見てみると皇居がどれだけ広いかがよく分かります。そして緑の大事さもよく分かります。眺めているだけですごく癒されました。

寝室の中はというと、ベッドにソファとテーブル、カウンターテーブルがあります。カーテンを開けていると素晴らしい風景が見られるので、とても優雅な気持ちになりました。

客室は間取りで言うところの1Kの形態を取っています。玄関を開けて廊下があり、廊下に面してキッチンがあります。

その廊下からトイレ・洗面・浴室につながっています。間取りは一般的かもしれませんが、グレードは高いです。

廊下幅は広く、壁は壁面収納とキッチンの扉が一体的になっており冷蔵庫もビルトインです。

ビルトインの冷蔵庫(撮影時のみオープン)

反対側の壁も収納・洗面扉・洗濯機扉が一体的に納まっており、すっきりとした廊下になっています。

棚も多く収納力が結構あるので、実際に長期間滞在するとしても困ることがないだろうと思いました。

キッチンは海外のメーカーのもので、食洗機やオーブンも付いているのですが、使い方には慣れませんでした。IHは火力が強く調理はしやすかったです。

洗面所はトイレと同じ空間にありました。洗面台の裏から光が入ってくるようになっているのですが、洗面台裏には窓があり、さらに乳白色のガラスがある、というようになっています。

角部屋だからといって外に面するところを全て窓にするということは出来なかったのだと思いますが、ビューバスだったらもっと良かっただろうと思いました。

ただ林立する超高層ビルが立ち並んでいる中でのビューバスはプライバシーの確保が難しいために断念したのだろうとも思いました。

浴室の造りは石貼りで、浴槽はFRP製でした。洗面・トイレ・浴室と石張りで統一された空間でゴージャスでした。

長期滞在者も楽しめる館内施設

館内施設としてはレストラン、ジム、プール、会議室があり、それらは全てロビー階である22階にあります。

仕事ではないので会議室は流石に利用しませんでしたが、それ以外は全て利用しましたので紹介します。

レストラン「TRIPLE ONE Singapore & Chinese Cuisine」

アスコットがシンガポールの会社のため、レストランもシンガポール料理でした。ランチは想像していたより高くなく、2000円ほどでした。

内観は茶色い木調に少々古臭さを感じましたが、店内は綺麗で、中庭に面しているため爽快感がありました。

ジム

ジムには多くの運動器具がある訳では無いのですが、その分ゆったりとしたスペースがあります。

ランニングマシンは窓に面して配置されているため、閉塞感なく運動ができます。といっても外は目の前が他のビルなのでオフィスと見合いにはなっています。

更衣室は綺麗で運動前の気持ちを高めてくれます。タオルやウォーターサーバーもあります。シャワーブースは広く、使い勝手の良い更衣室でした。

今回は他に誰もいなく貸切状態だったので、建築の勉強のために写真を撮りました。

プール

宿泊するときにプールがあることに嬉しくなり、ぜひとも利用しようと思っていました。

ですが、写真に惑わされてしまいました。このプールは全長が8.5mしかないのです。

写真でぱっと見だと、遠近感があり25mあるのではないかと勘違いしていました。実際のプールは水深1.2m×8.5m×2.8mなのです。

チェックイン時にプール利用の予約をしてみると、時間制での利用ということでした。つまり、自分が利用する時間は貸切になるのです。

それであれば全長が8.5mだとしても落胆することはありませんでした。むしろ8.5mしかないという希少な大きさのプールを体験するという意味では貴重かもしれません。

プールの外には木々が植えられており、遠くのビルから丸見えという訳ではないので人目を気にせずに楽しめます。

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皇居側の高さ100m制限のスカイライン

ここで少し建築寄りの視点での話になります。

宿泊した部屋は皇居ビューでしたが、この建物はセットバックしており、ボリュームは皇居側が低くホテル部分が高くなっています。

そのため部屋からはセットバック部分の屋上の設備が間近に見えます。周りをよく見ると隣のビルも、その隣のビルも同じような高さになっていました。

調べてみるとこれは地区計画によるスカイラインの統一で、皇居側は高さ100m制限がかかっています。

千代田区による「大手町・丸の内・有楽町地区地区計画」の「建築物等の整備の方針」には次のように書かれています。

「当地区において定着しつつある概ね 100m程度の高さを尊重しながら、一定のスカイラインの統一性に配慮し、概ね150m程度の高さまでを可能とする。大手町、常盤橋、丸の内、八重洲、有楽町の各拠点においては、その拠点性や街並みの多様性の象徴として、当地区全体のスカイラインとの調和に配慮しながら、概ね 200m程度の高さまでを可能とするとともにこれらの実現に向け特例容積率適用地区制度等の活用を図る」

そして、この方針を元に地区整備計画が定められており、具体的な整備内容が記されています。

地区整備計画を見てみると、大手町パークビルディングは「大手町B」の区域に該当します。

本敷地がどのようになっているか見てみると、高さの最高限度として皇居側の道路境界から77mの範囲で100m制限がかかっています。

そのためにセットバック形状の建物になっているのです。

100m制限が外れたところは特に高さの規制が無い様に見受けられたのですが、本建物は150m以下に抑えられており、「建築物等の整備の方針」に沿った高さとなっております。

ちなみに、道路を挟んで向かいにあるフォーシーズンズの建物は、高さ200m制限の敷地に建っているため、アスコットより高いです。

そのほかの地区整備計画として、敷地の皇居側は広場8(1600m2)として指定されています。

また敷地内の壁面後退は3mであり、歩行者通路18(幅員約2m、全長約120m)が隣のビルとの間に通っているという特徴があります。

ここで与条件に立ち返って、本計画地で千代田区の都市計画情報を調べてみました。

都市計画情報

用途地域:商業地域
指定容積率:1300%
指定建ぺい率:80%
防火指定:防火地域
その他:特例容積率適用地区
大手町一丁目1地区都市再生特別地区
大手町・丸の内・有楽町地区地区計画
千代田区駐車場整備地区
美観地域重点地区

出典:https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/4355/14daimaruyu20150130.pdf

今回は特例容積率適用地区なので、この制度を利用して許容容積率を1400%に上げています。

また、国が都市再生に力を入れると指定した区域が都市再生緊急整備地域で、さらにその中で具体的に内容が定められたのが都市再生特別地区です。

これは既存の容積率や高さ制限の枠組みを超えて計画ができるようになり、より大規模な建物を建てられるようになります。

大手町周辺はまさに国が力を入れているエリアであり、この制度を利用して次々と超高層ビルが建てられています。

超高層にはするものの、皇居側のスカイラインは保持しようということで100mの高さ制限があったのでした。都市計画から建物という単体を読み解いていくと面白いです。

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おわりに「満足度の高い滞在」

以上、アスコット丸の内東京の紹介でした。宿泊キャンペーン中だったこともあり、1泊で食事も付いて4万円弱で宿泊できました。

皇居の緑や、遠くの高層ビル群の眺めに、開放的な気持ちになりながら満喫できました。

また、サービス付きアパートメントというスタイルなため高級住宅にいるような気分にもなり、通常のホテルとは一味違った体験ができます。ぜひ行ってみてください。

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