サイクリングで橋を学ぶ《しまなみ海道》

はじめに

私は普段、建築ばかりに目を向けているのですが、土木も建築に近い分野でしかも「橋」というのは構造的な考え方がとても勉強になりますし、形の美しさがあります。

今回はしまなみ街道を渡って見た橋を例に挙げながら学び、理解を深めていこうと思います。

《参考文献》
トコトンやさしい橋の本(依田照彦・著)←初学者として読んで分りやすかったです
写真で見る橋の構造形式ー道路橋の保全のために(藤原稔・著)←実例が多く、基本を押さえてから読むと理解に深みが出てきます

橋の構造の分類

橋の構造形式は大きく、次の6つに分類されます。

橋の構造形式

・桁橋
・アーチ橋
・ラーメン橋
・トラス橋
・吊橋
・斜張橋(しゃちょうきょう)

その内、しまなみ街道で見ることができた構造は「桁橋(一部分)、アーチ橋、吊橋、斜張橋」です。

新尾道大橋・尾道大橋(尾道ー向島)

新尾道大橋(手前)、尾道大橋(奥)

新尾道大橋尾道大橋は尾道から向島へと繋がる双子の橋です。自転車は尾道大橋の方を渡ります。どちらも斜張橋ですが、新尾道大橋の方がケーブルの本数が多いです。

斜張橋は長い橋に対応しやすいですが、その場合主塔(タワー)が高くなります。高くすればケーブル内を伝達する引張力のベクトルが上向きに寄っていくという原理です。斜張橋の始まりはドイツのライン川に架けられたものとされています。

斜張橋のケーブルの掛け方には種類があり、「ハープ型(ケーブルが平行)」と「ファン型(ケーブルが扇状)」とがあります。

その分類で見てみると新尾道大橋は平行にケーブルがかかっているのでハープ型斜張橋、尾道大橋はケーブルの本数が少ないですがファン型斜張橋となります。

因島大橋(向島ー因島)

因島大橋は向島と因島を結ぶ橋です。ここは吊橋です。吊橋は主塔の間にメインケーブルを掛けます。

メインケーブルから橋桁にかけてハンガーロープ(垂直の吊材)を垂らすのですが、ここではハンガーロープが一箇所につき4本のケーブルからなっていました。ここの桁は補剛トラスといって、トラス構造を組んで力の伝達をサポートしています。

そして面白いのが橋が2重構造になっていて、車が上で自転車・歩行者は下のレーンを通ります。2重構造と言っても自転車・歩行者の荷重は大したことないと思いますが。

下のレーンは橋桁を構成するストラクチャーで張り巡らされているため島の景色はそれほど楽しめないのが欠点です。鉄骨の接合が見られるからこっちの方がいいというのはごく少数派・・

生口橋(因島ー生口島)

生口橋は因島と生口島を結ぶ橋です。この橋は斜張橋で尖った主塔がかっこいいです。

主塔の形状にも種類があるようで、生口橋はA型主塔になります(その他には独立柱・H型・逆Y字型などがあるようです)。またケーブルの掛かり方は尾道大橋と同じくファン型です。

鋼とコンクリートの橋桁が連結した日本初のハイブリッド構造の橋で、橋脚でコンクリートから鋼に切り替わるのが下から見ると分かります。

ケーブルは橋板の上に落ちていて、自転車をこぎながら接合部分を見られました。

多々羅大橋(生口島ー大三島)

次は多々羅大橋です。多々羅大橋は生口島と大三島を結ぶ橋です。先ほどの生口橋と同じくファン状ケーブルの斜張橋です。

主塔の形状が先ほどの生口橋と似ていますが、異なるのは多々羅大橋の方が距離が長いためライズが上がって逆Y型の主塔となっているということです。

山側の橋脚は主塔下の橋脚を模したRCのものになっているのですが、「よくよく見てみれば地味に傾いている」というささやかなデザインでアヒルの行進のような微笑ましさがありました。

『大三島には建築家・伊東豊雄さんのミュージアムがあり、このしまなみ海道を渡る原動力はそこを見ること一点のみでした。とても面白い場所なのでオススメです。』

大三島橋(大三島ー伯方島)

大三島橋は大三島と伯方島を結ぶ橋です。しまなみ海道では唯一のアーチ橋です。アーチリブが太いのに対し、ハンガーロープ(テンション材)が細いためその対比が顕著です。

このアーチリブの橋桁に対する太さによって、アーチ橋は「ランガー橋(細いリブ)」と「ローゼ橋(太いリブ)」に分かれ、構造的役割も変わってきます。

またリブが「ソリッド」なのか「トラス」なのかでも名称が分岐してきます。とすると大三島橋はソリッドリブのローゼ橋ということになると思います。

伯方・大島大橋(伯方島ー大島)

伯方・大島大橋は伯方島と大島を結ぶ橋です。この橋は中央径間(主塔間)が吊橋で両脇が桁橋になっています。

こうやって橋を順々に見ていくと吊橋は長いスパンを飛ばすのに向いているということが分かってきます。それにしても橋桁をここまで薄くできるというのは驚きです。

来島海峡大橋(大島ー今治)

しまなみ街道最後(最初)の全長4kmの橋、来島海峡大橋は大島と今治を結ぶ橋です。

世界初の3連吊橋とされていて、連なっていく様子が美しいのです。よく見てみると橋台で縁を切られた吊橋が3つ連続している構造のようです。

距離が長い橋のためなのか、先ほどの伯方・大島大橋より主塔のライズが高くなり、フレームの水平部材も一本多くなっています。

また、今治側のアンカーブロックは景観を損なわないように山に埋め込まれているというのが見られます。

まとめ

しまなみ街道の橋を自転車で渡りながら見ていきました。こうやって見ていくと、長いスパンを飛ばすには斜張橋や吊橋が向いているということが分かってきます。

またこの部材にはどんな力が働いているのだろうと想像することで橋への興味が一層深まってきます。やっぱり建築と同じく橋でも実物を見るということが一番勉強になるものです。

日本では建築と土木は分けられていますが、両方の視点を持っていることがものづくりへの想像力を深めることに繋がるのだと思いました。

タイトルとURLをコピーしました