目に焼きつくシンボリックな形
「東京カテドラル聖マリア大聖堂(1964年竣工)」は東京都文京区にあります。設計は丹下健三さん(1913-2005)です。目白通りからだと先に塔が目に付きます。そしてステンレス板が張られたHPシェルの十字の建物が現れます。
ここは代々木体育館と同時期に竣工しています。構造設計は代々木体育館と同様、坪井善勝さんです。
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HPシェルの躯体とステンレスの外装
建物は8つのHPシェル(双曲放物線の殻構造)から成っています。それぞれが寄りかかるように中心に集まって十字の形態を作っています。
外壁はステンレス板の瓦棒葺きでエンボス加工が施されていました。これによって反射の具合が整えられているように思います。現在見られる外装は改修後のものになります。
壁面の構成は、RC躯体の上にCチャン、木毛セメント板、アスファルトルーフィング、ステンレス板(仕上げ)の順となっています。実物を見てから図面をみると答え合わせをしているようで楽しいです。
RCの素空間の体験
行った時はミサが行われる時間ではなかったですが、中に入って見学することができました。あいにく写真撮影は禁止でしたが、構わず撮っている人もいました。撮りたい衝動を抑えるのが難しいのは分からなくもないです。なので撮りたい衝動を抑え空間と一対一で向き合うことにしました。内部空間の肌で感じる容積は外から見て想像するものと全く異なりました。垂直のガラス面(スリット)や十字の天井から入ってくる光が広がりをもたせています。
そして空間が伸び縮みするような不思議な体験をしました。
講壇の方を斜め横から見る限りではそこまでではないのですが、正面から捉えると「シェルが作り出す奥行き」や「型枠の継ぎ目が分かり味のある荒さのRCの素肌」、「正面の大理石がはめられたステンドグラスのような窓」が総体としてそう感じさせているのだと思います。
丹下さんの葬儀はこの聖堂で行われたそうです。生前に洗礼を受けていたのでここで行われるのは必然の成り行きに近かったようです。自分で設計した場所で葬儀を行えるというのは最高の人生の終わりかたですね。