光を受けるガラスパネルのファサード「FRAC(FOND Regional D’ Art Comtemporain)」

建築

はじめに

フランスのマルセイユにあるFRAC(FOND Regional D’ Art Comtemporain)に行ってきました。FRACは現代アートを展示する美術館で、建築家・隈研吾さんが設計し2013年に完成しました。

隈さんの作品は日本各地で見ることができますが、このFRACは隈さんの特徴が全面に現れています。素材は異なれど分割されたパネルが角度を付けて取り付けられるというのは、国内では例えばアオーレ長岡や浅草文化観光センターでも見ることができます。

再生ガラスのファサード

道路に挟まれた三角の敷地形状に建っているこの美術館は樹脂っぽく白濁したパネルがつけられているのですが、これらは全てガラスでできています。

マルセイユの工房で見つけたものらしく、実際に取り付けられているのは合わせガラスと強化ガラスが貼り合わさり、表面が白くエナメル加工されたものになっています。

全部で1650枚のガラスで構成されるファサードはそれぞれのパネルが角度を設けて取り付けられており、光の反射の度合いが異なるようになっています。

路地の立体化

隈研吾さんはFRACの設計で「路地の立体化」を一つのコンセプトにしています。街中を歩いている中で路地が分岐し、その途中で建物が見え隠れする、そんな平面的構成を美術館という垂直に伸びるボリュームの中で立体化させようというものです。

そのために展示室に向かうための幅員の異なる階段が用意されていたり、屋外に出られるようになっていたりしています。しかし個人的な感覚だと路地的なイメージは少々弱かったです。路地だとすると空間の伸縮、濃淡を情報量の密度変化でもっとつける必要があるのかなと感じました。

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開くテラスと閉じるテラス

ファサードに現れる建物の中層部分の凹みは屋外テラスになっています。街に開かれ都市軸に吸い込まれるようなテラスで、屋外のシーンがガラスパネルの縁によって切り取られているのが印象的でした。境界のように働き、溶けていくようにも働くガラスパネルは内側から見る方が魅力的に感じられました。

またその都市に開いたテラスとは反対に建物に囲まれた内向きな屋外テラスも存在しています。ウッドデッキで中庭のように作られたスペースで、近隣の集合住宅からの生活感が滲み出ていました。

一つの建物の中で性質の異なるテラスが設けられているというのは視覚的な楽しさという変化も生まれるので効果的な操作だと思いました。

おわりに

マルセイユにはこの隈研吾さんのFRACを始め、現代建築が続々と立ち現れています。そして大聖堂もあればコルビュジェのユニテ・ダビタシオンもあります。マルセイユはパリとは違った密度感で、沿岸であるからこそのロケーションの利点が生かされている街でした。建築と街はやはりセットなのだなとつくづく思います。

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