香港の建築編《香港・マカオ旅①》

建築

はじめに

香港にある建築を紹介します。香港は高層・超高層の建物が狭い地域に集っていたり、躯体がぼろぼろになった建物が立ち並ぶエリアがあったり、その差が大きいです。

名建築家の設計した建物も多くあり、観光は充実したものでした。意外と英語が通じなかったりするのは行ってみて実感したことでした。それでは紹介していきます。

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香港理工大学(設計:ザハ・ハディド)

香港理工大学は九龍(カオルーン)にあるザハ・ハディドが設計した大学です。今にも崩れ落ちそうな多層のファサードは内部にもその要素は現れ、それが多様な採光、照明パターンを生みます。

水平・垂直が外部に現れないから不安定に見え、それが躍動感となって自然と人の流れを生んでいるようです。水平・垂直を失うということは反重力的であって、唯一無二に存在する建物であることが顕著に現れてきます。

それは単なるランドスケープ上の役割だけではなくて、建築の可能性を表現させてくれる側面も持っています。中国の建物の施工性には勝手な偏見がありましたが、低層部のRC曲面はまあまあ施工精度が良かったです。

また建物形態もさることながら、当大学の学習プログラムも先鋭的なものであるらしいです。建築学科は9階にあり、内覧した時は丁度廊下までを占領する建築学科特有の課題に追われている時期でした。

自分の発想は体験したことや身近なものに強く影響されるため、常日頃から前衛的な建物と触れ合える環境というのは羨ましくもありました。

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香港コンベンション&エキジビションセンター (設計:ラリー・オルマンズ)

香港コンベンション&エキシビジョンセンターの外観は一見シドニーのオペラハウス的でもあり、内観は東京国際フォーラム的でもあり、既視感は強かったです。

海側に迫り出す帆のような屋根は建物が海や空に開いていて、場所のコンテクストが上手く形態に現れてきているように思えました。

ただその一点についてのみが良くて、周辺建物との調和であったり関連性については薄く、そのダイナミックさは孤立感を生んでいるようでもありました。

対岸の九龍側から見たシンフォニーオブライツ(夜のライトアップのショー)の中心に位置していて、高層ビルが立ち並ぶ中でも存在感を示していました。

また開放感を得られる絶好のロケーションのため、屋外テラスなど建築的に人の居場所を作る操作があってもいいような気がしました。ベランダの無い香港のマンション群と同じような考え方なのでしょうか。内外の境界に対する考え方の違いがありそうです。

そして香港の建物周辺に共通して言えると思いますが、緑が少ないです。補助的に敷地の余白に少々配置するというのは見られましたが、建物に絡ませなければ自ずと心理的圧迫のある物質的なものと化してしまいます。

香港国際空港ターミナル1(設計:ノーマン・フォスター)

香港国際空港ターミナル1はイギリスの建築家、ノーマン・フォスターが設計しました。連続したアーチ状の屋根架構を柱とそこから枝分かれする部材がトラスを形成して支えていますが、大空間の荷重を感じさせないほど軽やかな構造体となっています。

線状に伸びるトップライトは昼間の照明を必要としないくらい全体を照らし、ターミナル間の動線上には光庭のごとく光が降り注いでいました。

階数が少なく、簡潔な動線計画と見通しの良さは空港というプログラムに対しての明瞭な回答であるとともに、旅行者を見送り向かい入れる場としての器として適応していました。

スロープで緩やかに半階層を繋いでいて、傾斜とは「流れのことであり自然に進行方向を意識させるための仕掛け」としてかなり機能しやすいことを実感しました。

こちらのターミナル1に対して、ターミナル2は流動的な天井の形状をとっていて、その明確な違いで初めて行く人でも現在地を覚えやすいと思います。

構造美に追従して機能美を持ち合わし、その簡潔さが形態の美しさとなっているというかなり研ぎ澄まされた建物であると感じました。

香港上海銀行・香港本店ビル (設計:ノーマン・フォスター)

香港上海銀行・香港本店ビルは1985年に竣工した建物です。設計はノーマン・フォスターです。

露出したメガストラクチャーがそのまま建物の特徴として現れ、竣工して30年経過しましたが固有性が薄れることなく存在しています。

意匠性を持った無駄のない柱の構成部材が外周部にあることで、内部に幾層もの吹き抜け空間を作っています。エントランスには吹き抜けの底部のガラスを貫通するように設置されたエスカレーターがあり、アプローチの仕方も新鮮でした。

カイタック・クルーズターミナル(設計:ノーマン・フォスター)

カイタック・クルーズターミナルは九龍の海側に位置しています。設計はノーマン・フォスターです。

その船の発着場はかなり大規模な建物で、それ自体が船であるかのような細長く先端に丸みを帯びたフォルムです。内部には駐車場、レストラン、屋上庭園などがあります。

下層は行き来する車の受け皿として大容積となり地下駐車場のような無機質なものですが、屋上に出ると対岸にある香港島の風景が眼前に広がります。

アプローチ側先端にあるキャンチレバーの半円部分にフォスター感があります。一目見たときに印象に残るようなものにするためには決して派手さが必要なのではなくて、ある意味説明しやすいようなシンプルさも必要なのかもしれないです。

規模が大きくなればその分形態の遊びはしやすくなりますが、そこの削ぎ落としの操作の緻密さが明快さを生み出すのではないかと思います。

そういう部分においてフォスターの建築は機能美も形態美も、それが構造の合理化に付随して現れているから魅了的です。建築は社会性を持ちながらも結局は一つの建物として自己完結型であるので、一つの芸術作品としての存在意義も果たさなくてはならない点において非常に考えさせられました。

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ピーク・タワー(設計:テリー・ファレル)

ピーク・タワーは仁川国際空港(韓国)を設計した建築家テリー・ファレルの作品です。日本でいうところのポストモダンっぽさを感じました。中に入ってもその形態の恩恵にさらされることもなく、単にモニュメント性が強いだけのようです。

山の頂上で見晴らしがいいという場所柄どんな建物であっても人は来ますが、一過性ですぐに淘汰・更新される運命なのがこういう建物の性なのだろうと思います。こういう場所では単なる収容力がある建物に勝る何かを持っていなければならないです。

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