はじめに「海外就職へのチャレンジ」
数々の海外旅行や滞在経験を経て、建築士として海外で働いたら面白そうだと思うようになりました。
そこで、思い立ったら挑戦してみようという思いで、実際に海外の設計事務所へ応募してみました。
この記事では、海外企業へのアプローチから内定に至るまで、その経緯について書いていきたいと思います。
振り返るとこれはかなり困難な挑戦で、どのように進めたらいいか情報も少ない中奮闘しました。
同じような境遇の人がいるかリサーチ
まず行なったのは情報収集です。海外の設計事務所に応募するにはどのような手順で進めればいいのか全く分からない状態だったので、ネットで網羅的に検索していきました。
ですが情報は少なく、近い境遇かなと思うような人でもその人は英語が堪能であったりして、日常会話程度の英語レベルの自分にとってはかけ離れた存在のように感じました。
それでも調べていると応募や選考の様子をなんとなく掴むことができ、まずはやってみようという気持ちになりました。
また、今回私が求めているのは駐在員として海外で働くということではなく、現地採用として働くということでした。
駐在員は日本企業の海外支店に従事するという働き方が多いですが、現地採用は現地の企業で働くというものです。
一方、現地採用はそういった手当は出ません。現地の人と同じような雇用体系と給与体系です。
日本とは異なる応募時の必要書類を準備する
日本で就職活動をするときは、履歴書と職務経歴書が必要です。建築設計の場合は、加えて今まで自分がやってきたことを表現するポートフォリオも必要になります。
・履歴書
・職務経歴書
・ポートフォリオ
では、海外の場合はどうかというと、CV(Resume)とCover letter、ポートフォリオが必要になります。
・CV(Resume)
・Cover letter
・ポートフォリオ
CV(Resume)とは
CV(Resume)というのは職務経歴書のようなものです。色々と書き方はありますが、私は以下の項目を記載しました。
・Summary
・Work experience
・Education
・Qualifications / Special skills
ネットに参考となるフォーマットがたくさんあるので、それらを元に作成しました。
CVをどのようにデザイン・レイアウトするかというのも、選考で評価されるポイントだという情報もありました。
面白いなと思ったのは、CVには年齢や性別を描く必要がないのです。これには身体的特徴などで採用を判断するのを避ける意味があり、日本の履歴書とは大きく異なり驚きました。
Cover letterとは
Cover letterは企業に応募する際に添付する送付状のようなものです。メール文のように文章を構成し、ここに志望動機などを簡単に記載します。
私がCover letterに書いた内容は以下のとおりです。
・自分がどのような能力・経験を持っているか
・会社に貢献していきたいという気持ち
・同封書類
Cover letterには書き方の作法があるので要注意です。
例えば、「ご担当者様へ」と書きたいときには、「To Whom It May Concern,」と書きますが、最後の「,」は必須で、各単語の頭文字は大文字にするというのが慣習としてあります。
そして文章の最後に、直筆による署名が必要です。事例を見ていると書いていないものもありましたが、私は一応書いていました。
英語版ポートフォリオ
ポートフォリオの提出は日本でも求められますが、海外に応募する際は当然英語で書く必要があります。
私はスラスラ英語を書ける訳ではないので、まずは日本語で文章を作り、それをAIで翻訳し、それを校閲するという形で作っていました。
どのように設計事務所を探すか
必要書類を整えたので、ようやく設計事務所に応募していきます。私は以下の方法で設計事務所を探しました。
・indeed
・Google Map
・建築家協会HP
indeed
indeedは国内でもよく使われている転職サイトですが、海外でも使われています。実際に登録して探してみましたが、求人の数は多くなく、あまり使わなかったのが実情です。
Google Map
求人から探していると、現地の法規に精通している建築士を探していたりと、採用基準のハードルが高いことが多かったので、別の方法からアプローチしてみようと思いました。
そこで思いついたのが、Google Mapで探すという方法です。地図上で「Architectural firm」と検索すると色々と出てきます。そこから企業のHPに飛び、リクルート欄やお問い合わせ欄から応募しました。
Google Mapで探すと、実際にその事務所がどの辺にあるのかという情報をはじめに知れるので、中心地にあるのか、郊外にあるのかなどエリアをイメージしながら探せるというのが利点でした。
建築家協会HP
Google Mapで探すのもいいのですが、それでも限界があるのでどうしようかと考えていたところ、建築家協会のHPを見つけました。
日本にもあるように海外にも建築家協会はあります。そこにはその国に登録されている設計事務所の一覧がありました。
このようにして設計事務所を探し応募していったのですが、大事なのはとにかく数を打つことだと思っています。
自分がその国に精通していない外国人であることを自覚し、少しでも気になった企業にはまずは応募することが重要だと経験から感じます。
不安で臨んだリモート英語面接
海外の設計事務所には、全部で20社くらい応募しました。ですが、ほとんどは返信がありませんでした。あったとしても「今は募集していません」というものだったりして、海外就職の難しさを肌で感じました。
そんな中「明後日面接できますか?」というメールが届きました。シンガポールの設計事務所でした。
面接練習の時間が少ないと思いながらも「できます」と返信をし、急いでYouTubeなどを見ながら質疑応答の練習を始めました。AIを使って予行練習もしました。
そして準備は万全とは言えない状態で、ドキドキしながら本番を迎えることになりました。日本時間午前11時、zoomでの面接でした。
zoomに入ると、フィリピン人の方と恐らくヨーロッパの方との2人との面接であることを初めて知りました。勝手に一対一かと思っていました。
そして始まるや否や「ではポートフォリオの説明をお願いします。」と言われ、想定していた面接の仕方とは異なり困惑しました。
いきなりポートフォリオの説明かと思いながらも、自分がやってきたプロジェクトの説明だったので、おぼつかない英語ながらも自信を持って話すことができました。
途中途中で「このプロジェクトであなたは何を担当したの?」など聞かれました。私が説明を終えると、面接官の二人で話し始めました。早口だったので半分くらいしか聞き取れませんでしたが、「どう思う?」という趣旨の会話でした。
色々話している中で「実は日本でのプロジェクトがあり、日本人に入ってもらえると嬉しい」と言われました。そして入社希望日などを話し、他に質問などがあったらメールしてほしいと言われ、面接を終えました。
約1時間に及ぶ英語での面接には疲労困憊になりましたが、日本でのプロジェクトがあるということに、もしかしたら合格するチャンスがあるのではないかという気持ちが生まれました。
おわりに「内定を勝ち取る」
合否は1週間後に連絡するという話だったので、1週間を待ちましたが、連絡は来ませんでした。
恐る恐る「その後いかがでしょうか?」とメールをすると、なんと「採用が決まりました」という返信が来ました。諦めかけていたので驚きました。
そうして海外就職の切符を手に入れました。
就職を検討している中では「駐在員として海外で働くという選択肢ならありますが、現地採用は厳しいので無理です」と現地エージェントに言われたこともありました。
確かに現地採用のハードルが高いことは肌で感じましたが、決して不可能ではないことも分かりました。挑戦してみるという気持ちが非常に大切で、それに向かって一直線に専念したために成果を得られたのだと思っています。
この記事が海外で働きたいと思っている人にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。