はじめに「建築家の活躍するメキシコ」
メキシコに行ってきました。メキシコの建築家と言えばルイス・バラガンやアルベルト・カラチ、リカルド・レゴレッタ、フェリックス・キャンデラ、マリオ・パニなど著名な建築家がたくさんいます。
そのため、国外の建築家が入ってくる余地がないように感じてしまうほどでした。今回はメキシコシティを旅する中で感じたことを中心に、建築的なことも含め全般的に書いていきたいと思います。
メキシコ 基本情報
人口:1億2600万人 (日本:1億2400万人)※2024年
面積:1,960,000km2 (日本の5倍)
首都:メキシコシティ
言語:スペイン語
宗教:カトリック(国民の7割)
メキシコという大国を感じた空港
昼過ぎにメキシコシティ国際空港に到着すると、そこには途轍もない数の人がいました。入国審査で長蛇の列になっているのです。入国の際に自動化ゲートで簡易的にパスポートチェックを受けられる人、対人で入国審査が必要な人の2つに分かれていました。
空港内に示してあるサインを見ると、日本は自動化ゲートで進める限られた18国に入っていたのですが、日本のパスポートはどっちに並べばいいか聞くと、空港職員やメキシコ人は皆「向こう(対人での入国審査側)に並ぶんだよ。メキシコ人はこっちだけどね。」と言います。
そんなことはないだろうと、恐る恐る自動化ゲートの方で手続きをすると問題なく進むことができました。コロナが明けて色々とシステムが変動していたりするのかもしれないですが、人に聞くのが正しいとは限らないのだと入国早々に洗礼を受けました。
ちなみにメキシコからの出国の際は、セキュリティチェックの前の搭乗券を確認する人がパスポートを確認するだけで、出国審査はなく呆気ないくらいでした。その代わりなのか、搭乗ゲートの前に再度セキュリティチェックがあり、バッグの中を逐一調べられたのでした。
安い運賃が魅力の公共交通機関
メキシコシティにはメトロバスという、改札とプラットホームのあるバスが公共交通機関として機能していました(改札がない駅もあります)。数分単位ですぐにバスが来るため、使い勝手は非常によかったです。
乗るためには、メトロカードかタッチ機能付きのクレジットカードが必要になります。クレジットカードで電車やバスに乗れるというのは昨今の世界標準になろうとしています。
メトロバスの車内には女性専用車両がありました。ラッシュ時に限らず、1日中女性専用車両になっています。設けられた理由は痴漢対策らしいです。
このメトロバス、道路上にバス専用レーンがあるのですが、世界中でもこのような形式で運用している国はごく稀だと思います。自分の知る中ですとジャカルタも同じようにバス専用レーンが比較的最近作られていました。
メキシコシティは公共交通機関の運賃が非常に安いです。距離に限らず地下鉄は5ペソで乗れ、メトロバスは6ペソで乗れました(1ペソ≒8.6円2024.2現在)。
それでも道路を走る車は非常に多く、Uberを使うとよく交通渋滞に巻き込まれ、クラクションが鳴り止まない光景をいくつも見ました。それは社会問題になっており、大気汚染の原因にもなっているのです。
実際に行った時も空気が汚染され空は白くモヤがかかっており、喉がイガイガしました。同じ問題はジャカルタにもあったことを思い出しました。こうして他の国と比較しようとすると、メキシコとインドネシアは共通点が見られるなと思いました。
街中の車は中古車が多いように見受けられ、それらはなぜか窓ガラスがなかったり、傷がたくさんついていたり、凹んでいたりする車もたくさんありました。
そして市内にはバスが多いのですが、行き先が不明なシャトルバスも街中によく走っていて、バスの停留所と同じように乗り降りしている人をよく見かけました。Google Mapで行き先検索するとバスに乗るような表示が出るのですが、どのバスに乗ればいいのか全く分からなかったです。
私は各国を旅していますが、なかなかに難易度の高いバスでした。そんな時は目的地を伝えて、そこに停まるかどうか聞けばいいのですが、運転手もよく分かっていなかったりしました。ここで降りればいいよと親切にも言ってくれたこともありましたが、降ろされたのは伝えた目的地の一つ手前だったということもありました。
これだから旅は面白いです。全然自分の思うようにはならなかったです。
街中でよく見かける大理石
建築という職業柄、素材にも焦点を当てて街を見ることが多いです。メキシコシティの駅や美術館など、至る所で同じような大理石を使っているのをよく見かけました。
イタリアではトラバーチンをよく見かけるように、この大理石はメキシコでよく採れる石なのだろうと思いました。それらはどこで使われているものも本磨処理がされておりツルツルとしていました。
街中のタコス、サボテンを食す
メキシコといえばタコス、そのイメージの通り街中ではとにかくタコス屋が多いです。そして価格も安く、1つで20ペソくらいが相場で、安いところですと10ペソのところもありました。
タコスはおかわりをするのが普通らしいです。確かに1つではお腹いっぱいにはならなかったです。トッピングでトマトやオニオン、サボテン、ソースなどは自由に使えるのが一般的です。
サボテンはメキシコに行って初めて食べましたがネバネバして、酸っぱさがありました。タコスと食べるといいアクセントになって美味しいです。スーパーでも野菜コーナーに売っているため、買って料理に使ったりしました。
親切なメキシコ人
メキシコの人にはほとんど英語が伝わらないです。スペイン語圏ならなんとなく英語も話せるのではないか、という雑なイメージを持っていましたが英語を話せない人は多いです。
というのも、メキシコは貧富や教育水準の格差が激しいらしいです。英語でのコミュニケーションは基本的にできないため、翻訳アプリを使いました。
それでもメキシコの人々は親切な人が多く、喜んでコミュニケーションを取ろうとしてくれました。スペイン語を学んで対話できたらより楽しい旅になるのだと思いました。
メキシコは魅力的な建築がとても多い
街中にある建物は、ほとんどメキシコの建築家による設計というところが面白いです。
チッパーフィールドやSOMなど、海外の建築家もあるにはありますが、圧倒的に少ないです。これはメキシコの建築家だけでもいいものを作れるということにも感じられました。
実際にデザインコンセプトが感じられるような建物が大量にあって、見ていて面白かったです。一つ一つをしっかりデザインしており、単純な箱は作らないという意思を感じました。
それらは建築的な操作を加えながら、人が使う際にどう感じるかなど、そこまでこだわって設計しているように感じました。
例えば、集合住宅のデザインならバルコニーの軒が深かったり、カーテンウォール風にしていたりして建築家のコンセプトが感じられる、そんなデザインが当たり前のように見られました。
メキシコシティで宿泊した集合住宅は、7階建でワンフロアに1住戸という贅沢なプランでしたし、家の中央に中庭があり、そこが吹抜けとなっていて、採光と通風も十分に考えられたプランでした。日本には見られないプランニングでした。
高級住宅街に足を運んでみると、1軒1軒がとても広い敷地で、道路とは塀で隔てられていました。セキュリティが頑丈で、中は見えないようになっていました。
おわりに「メキシコらしいデザイン」
以上、メキシコ建築旅の紹介でした。建築という観点でも非常に魅力に溢れる国だと感じました。街から建築家が活躍している雰囲気を感じられるというのは、見ていて楽しかったです。
目を映せば面白い建物があり、歩くとその先にまた面白い建物がありました。デザインの面では形や色、素材などメキシコらしさが出ていてとても勉強になりました。
日本には直行便で帰国したのですが、14時間という長距離フライトでした。ですが、それでもまた行きたいと強く感じたのでした。
そういえば、インドネシアの首都ジャカルタに行った際は、イスラム教という宗教上の理由から女性専用ゾーンがありました。メキシコは理由が違います。