天神ビッグバン・博多コネクティッドの容積率緩和手法を解説【3つのアプローチ】

設計

はじめに「再開発が盛んな福岡市」

昨今、福岡市で再開発が盛んであることがニュースでもよく取り上げられています。容積率緩和と航空法の高さ制限によって、再開発がしやすくなっているのです。それを先導するのが天神ビッグバン博多コネクティッドという2つの事業です。

その結果として実際にどのような街になっているのか、気になって現地に見に行ってきました。確かにそこは建設中の用地が多く、まだまだ開発は続いていくという印象を受けました。

そして色々と調査していると気になってくるのが、どのような枠組みや手法でその開発事業が成り立っているのか、ということです。そこで今回は建築士の視点から、これらのプロジェクトの背後にある容積率緩和を受けるためのルールを調べてみました

福岡市における容積率緩和手法の概略

天神ビッグバンの第一号「天神ビジネスセンター」

天神ビッグバンや博多コネクティッドのプロジェクトで容積率緩和を受けている建物は、たくさんあります。

※天神ビッグバン・博多コネクティッドとは、それら地域周辺で行う再開発計画のことです。

まず都市計画的な枠組みとして、福岡市都心部機能更新誘導方策というものがあります。これは都市機能を強化し、より魅力的な街にしていくための方策として、福岡市が定めたものです。この中で福岡市が扱う容積率緩和制度に対して名前が付けられており、それを都心部機能更新型容積率特例制度と言います。

名前は覚えにくいですが、これらは単に枠組みに対して命名しているだけのものです。重要なのはここからで、都心部機能更新型容積率特例制度は次の3つを指すということです。

・総合設計制度(都心部機能更新型)
・地区計画(再開発等促進区)
・都市再生特別地区

つまり、上記の3つが容積率を緩和するための具体的な手法ということになります

補足ですが、福岡市では街並み誘導型の地区計画で容積率緩和を受けられる建物もあります。天神ビッグバンや博多コネックティッドでは大規模な建物の容積緩和をしていくものになりますが、それらと比較して小さな建物のための緩和規定も設けられているということになります。というのも、この緩和が受けられる建物は原則として、前面道路幅員が4〜6mのものを対象としているからです。

3つの緩和手法の中身

先ほど、天神ビッグバンや博多コネクティッドにおける都市更新の容積率の緩和手法は、総合設計制度(都心部機能更新型)、地区計画(再開発等促進区)、都市再生特別地区の3つと紹介しました。それぞれを適用して建築計画をする場合の主な条件を紹介したいと思います。

総合設計制度(都心部機能更新型)

総合設計制度(都心部機能更新型)を使う際は、敷地が準工業地域に属する際は1,000㎡以上、近隣商業地域・商業地域では500㎡以上である必要があります。そして、住宅用途は延床面積の1/4までしか設けることができません

これはこの総合設計制度が都心部機能更新型であるためです。福岡市の総合設計制度の型式には、市街地住宅型、都心居住型もあるため、住宅を整備する方針であればそういった総合設計制度を使うことになります。それらは反対に、住宅用途を1/4以上は設ける必要があります。

地区計画(再開発等促進区)

地区計画(再開発等促進区)が適用される敷地は、街区単位もしくは5,000㎡以上である必要があります。天神ビッグバンを代表するプロジェクトである天神ビジネスセンターは、敷地が約3,900㎡ですが一街区であり、この地区計画が適用されて計画しています。

都市再生特別地区

都市再生特別地区は、都市再生緊急整備地域の中で指定される地区です。適用される敷地は街区単位や5,000㎡、10,000㎡といった具合に、都市計画提案を行う場合などで条件が異なってきます。都市再生特別地区に指定されると、従来の都市計画上の指定容積率を超えることなどが可能になります

ちなみに、福岡市で都市再生特別地区になっている場所は無いように思われました(記事執筆2024年2月時点)。福岡県内を調べてみると、北九州市の小倉に都市再生特別地区の事例がありました。

少し視点が変わりますが、天神ビジネスセンターの事例では2018年に民間都市再生事業計画認定を受けているようです。これは都市再生緊急整備地域内にてこの認定を受けると、金融支援や税制上の特例措置を受けられるというものです。


以上から、総合設計制度、地区計画、都市再生特別地区という3つの制度を使って容積率緩和の認定を受けていくことになりますが、認定を受けるために事業計画で評価されるポイントは次のとおりです。

評価ポイント

✔︎ 九州アジア(国際都市)
✔︎ 環境
✔︎ 魅力
✔︎ 安全安心
✔︎ 共働
✔︎ 天神ビッグバン、博多コネクティッドボーナス
✔︎ 公開空地
✔︎ 交通環境
✔︎ 特定施設整備

これらの評価ポイントを満たすことによって、段階的に容積率が割増しされていきます。

例えば、天神ビッグバンを代表するプロジェクト、天神ビジネスセンターでは元々の指定容積率が800%だったところに再開発等促進区で+100%、さらに上記の評価ポイントにて+500%の割増しを受けて、許容容積率が1,400%となりました。ここでは天神駅と地下で繋がっているという点も評価されています。

おわりに「グローバル都市へ」

仮囲いに貼られる天神ビッグバンの標識

以上、福岡市の天神ビッグバン・博多コネクティッドでの容積緩和手法の紹介でした。このような街を代表するような大規模なプロジェクトでは、都市計画における上位計画との整合を取ることで容積率緩和などのインセンティブが得られるというのがポイントです。

新たな街に生まれ変わっていく中で、アジア諸国に近い利点を活かそうとしている福岡が今後どのような街になっていくのか楽しみです。

※都市計画をもっと学びたい方は、次の記事で勉強になる参考書を紹介しているのでご覧ください。

建築士が実務で使っている参考書を紹介|都市計画編
はじめに「都市計画の参考書」 私は建築の設計をしていますが、都市計画の枠組みそのものに携わる機会もしばしばあります。 一般的な設計の時に関わってくる都市計画といえば、地域地区や都市施設、もっと具体的に言えば、用途地域や都市計画道路、開発などです。 しかし、市街地開発事業など大きなプロジェクトになってくると、都市計画の枠組みであるマスタープランや、都市再開発方針などとの照合や、時には都市計画への介入...
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