はじめに
※ナインアワーズ浅草は2021年4月30日をもって閉店し、サウナ施設に生まれ変わっています。詳細は次の記事で紹介しています。
・カプセルホテルから個室サウナへコンバージョンした名建築|SAUNA RESET Pint
建築雑誌の新建築で見て気になっていたナインアワーズ浅草に泊まってきました。
ナインアワーズはカプセルホテルとなっていて、都内には浅草のほか赤坂、竹橋、蒲田、北新宿などにあります。
その中で浅草、赤坂、竹橋を建築家・平田晃久さんが設計をしています。
平田さんと言えば「からまりしろ」を作る設計スタイルの人です。
都内に住んでいると都内のホテルに宿泊することは少ないと思いますが、敢えて泊まる機会を設けてみました。
今回は建築視点半分、利用者視点半分で記事を書いてみようと思います。
観光客で溢れ、そして静まり返る場所「浅草」
浅草と言えば観光地で、スカイツリーも近く、最近は日本人よりも外国人の方が街中に多いのではないかと思うほどです。
しかしそのイメージは浅草寺を中心とする一帯に過ぎないのです。
実はその周りに住宅が多く存在し、暮らしやすい場所でもあるのです。
そして日中は観光客で溢れていますが、夜になると仲見世、新仲見世などのお店が閉まっていき観光客もうんと減ります。
夜の浅草というのは結構穴場な場所です。ナインアワーズ浅草は、そんな浅草の中で深夜でも煌々と輝くドン・キホーテの近くにあります。
都市型カプセルホテル
ナインアワーズ浅草は、自分が今まででいくつか泊まったカプセルホテルの中でも一番快適でした。
都市型ということと、カプセルというユニット配置の合理化を図るということを組み合わせると、閉鎖的な建物になりやすいように思いますが、このホテルは通路の突き当りがガラス張りで外と接続しているため閉鎖感がないです。
カプセルという閉鎖的な空間を集結させてさらに閉鎖的なところを作ってしまうと、居心地があまり良くないです。
その点、ナインアワーズ浅草は経済的合理性というものよりも精神的合理性を高めているホテルだと感じています。
自分の居る空間が他の空間と接続しているというのは安心感を与えるものだと、実際に泊まってみて思いました。
清潔な内装と明確なサインが刷新するホテルの印象
2018年9月にオープンしてからまだ日が経っていない時に行ったということもありますが、宿泊の際に決め手となる清潔さと快適さの両方を兼ね備えています。
カプセルユニットは弾力のあるマットレスや調整可能な照明があり、眠りにつきやすいです。
ホテルから貸し出される室内着に着替えてからカプセルに入るというルールも清潔さを維持に繋がります。
そして清潔さがかなり求められるのが水回りですが、言うことなしの清潔さでした。
またサインのほとんどが絵(ピクトグラム)となっていて感覚的に分かりやすかったです。
文字を読むよりも理解するスピードが速いように思います。考えてみると文字は脳内で映像化する作業が伴っているのかもしれません。
「9h=1h+7H+1h」のコンセプト
ナインアワーズというのは「9時間の内、1時間で汗を流し、7時間眠り、1時間で支度をする」という、ホテルに必要な要素を提供するというコンセプトから由来しています。
しかしこのナインアワーズ浅草の場合は9hでは足りない気がします。
というのもホテル内にデスク・ラウンジ・ジム・温室があるのです。個人的にはナインアワーズ浅草は10hは必要でした。
屋外階段を歩いてみて
この建物の設計は平田晃久さんで、平田さんの提唱する「からまりしろ」はこのホテルでは”屋外階段”がキーワードです。
からまりしろを作るということは外部と接触する表面積を増やすということなので、壁を出したり引っ込めたりする操作が自ずとあるのですが、それらを上手く繋いでいるのが屋外階段です。
ホテルの受付は9階にあるのですが、9階から1階まで屋外階段を歩いてみました。
浅草の街を見下ろしながら、そして建物の中を見ながら上下階を繋いでいる階段で体験する様々なシーンは、「からまりしろ」があるからこそ楽しいのだと思います。
その途中では各階のフリースペースを見ることができます。
男性専用のラウンジ、女性専用の温室などホテルの+αとして付加されたスペースはアクティビティを増やしていて楽しげに映りました。
1階2階に入るノルウェーのカフェ「フグレン」
建物の1階と2階にはノルウェーのカフェである「フグレン」が入っています。
浅草の朝は観光客がまだあまり訪れていないのでお店が空いていてゆったりと過ごせます。
店内にはカラフルな椅子が沢山置かれていて、席を選ぶ楽しさもあるお店です。
フグレンではコーヒーとワッフルを頂きました。本日のコーヒーがとても美味しく、店員さんが詳しく教えてくれました。
ホンジュラス産の”ネルソン・ラミレズ”という豆で、説明通り確かに後からマンゴーの香りが広がって来ました。
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おわりに
利用者視点としてまた是非とも泊まりたいと思うホテルでした。
今回はエクスペディアから予約したのですが、オープン記念の宿泊費でかなり安かったです。
ただ浅草店のロッカーは、他にも泊まってみた赤坂店と竹橋店と比較すると、高さが無くて冬のコートが下に付いてしまうというのが気になりました。
建築視点だと、ナインアワーズ浅草はボリュームが台湾の富富話合と似ていました。
向こうは集合住宅ですが、こちらはカプセルホテルで機能が違いながらも「からまりしろ」の設計は暮らしに必要なようです。
太田市美術館・図書館は屋外と屋内を等価に扱って解いている気がします。
平田さんの建築巡りも楽しいです。
・台北の建物探訪11選《台湾旅》←平田さんの設計した富富話合を紹介しています