はじめに
イギリスのロンドンにある金融街(シティ・オブ・ロンドン)を散策し、建物を見てきました。金融街には個性的なデザインの高層ビルが点在しています。また現在進行形で建設中の超高層ビルもあり、それらの高層ビルはセントポール大聖堂への視界を確保できるように配慮しながら建てることが求められています。そしてこの金融街はスーツを着た会社員が多く、観光地のシーンとは一変します。
20フェンチャーチ・ストリート(20 Fenchurch Street)
20フェンチャーチ・ストリートはウルグアイ出身の建築家ラファエル・ヴィニオリ(Rafael Viñoly)によって設計され、2014年に完成した建物です。上層に行くにしたがって大きくなるような頭でっかちなフォルムで、テムズ川の反対側からビル群を望んでも目立ちます。建物高さは約160mです。
オフィスビルではありますが、一般の人も眺めのいい最上階に行くことができます。そこは”スカイガーデン”という名称で、大きな気積の空間に植栽がされていて、全面ガラス張りとなっています。予約は必要ですが無料でロンドンの街を眼下に見られるのでおすすめです。
・最上階のスカイガーデンからロンドンを一望「20フェンチャーチ・ストリート(20 Fenchurch Street)」
ロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd’s of London)
ロイズ・オブ・ロンドンはイギリスの建築家リチャード・ロジャースによって設計され、1986年に完成した建物です。メタリックな屋外階段や設備配管、そしてメタボリズム的なカプセルユニットが取り付けられている外観は特徴的です。
オフィスビルのため用が無ければ入れませんが、写真で見ると内部は大きな吹抜けとなっています。その吹抜けを見た瞬間、香港上海銀行ビルを思い出しました。
そこはノーマン・フォスターが設計し、ロイズ・オブ・ロンドンと同時期(1985年)に完成した建物なのですが、そのどちらもハイテク建築とされています。そのどちらも床吹き出し空調を取り入れていて、先行事例として注目を集めていたそうです。
リーデンホールビル(The Leadenhall Building)
リーデンホールビルはロイズ・オブ・ロンドンと同様にリチャード・ロジャースによって設計され、2014年に完成した建物です。斜線制限のように斜めに切り取られたフォルムが特徴的ですが、これはセントポール大聖堂に向けた視界を確保するためになされた操作です。
またこの建物はメガフレームを外周部に設けることで執務空間の柱を少なくしています。外からでもメガフレームを作り出すスチールトラスが見て取れます。
30セント・メリー・アクス(30 st mercy axe)
30セント・メリー・アクスはイギリスの建築家ノーマン・フォスターによって設計され、2004年に完成した建物です。ガーキン(きゅうり)の愛称で親しまれていますが、遠くから見てもそのフォルムは金融街の超高層ビルの中で目立つ建物です。建物高さは約180mあります。
この建物の構造の特徴はまずこの形で、ビル風を考慮した形になっています。そして外観に現れる三角格子が構造体になっています。このように外側に構造体があるので、内部は柱を必要としない執務フロアが作られています。
足元はその構造体にセットバックして壁が設けられていて、建物沿いを一周できるようになっており、そこにレストランが設けられていました。そして屋上は休憩やミーティングで使える開放的なスペースのようですが、オフィスなので一般の人は中に入ることはできませんでした。
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おわりに
ロンドンの金融街には超高層ビルが次々と現れてきます。それらは東京のような経済性や合理性を高めるのみの直方体の建物ではなく、一つ一つが個性的にデザインされたものになっています。
遠くからビル群を望んだ時、様々な形の主張があります。西欧の歴史的な建物がある中でそのような高層ビルが現れると議論が起こるのは当然のことだと思います。ただそれはその時点のみで捉えてしまっているからなのではないでしょうか。
ロンドンの街が成長していく中で、未来像から遡るとその過程である現在のまとまりの少なさは一過性のものであることが想像できます。そんな成長過程の、景色としてはやや不安定の都市モデルをロンドンで見ることができました。