はじめに
岐阜県にある多治見市モザイクタイルミュージアムに行ってきました。
藤森照信さんが設計し2016年に開館した建物で、雑誌で初めて見たときに実態の掴めなさが衝撃的だったのを覚えています。
多治見市は施釉磁器モザイクタイル発祥の地であり、生産量が全国一でもあります。ちなみにモザイクタイルとはタイルの中でも50㎠以下のものをそう呼びます。
土の壁
JR多治見駅からモザイクタイルミュージアム横のバス停に停まるバスが運行しているのですが、時間的にその一つ前のバス停で降りて歩いていくバスに乗ることになりました。
そのバス停からミュージアムまでは徒歩10分ほど坂道を登っていきます。前方に目を向けていると突如として異質な丸みを帯びた建物(なのかも疑わしい何か)が現れます。
近くまで行くとミュージアムは予想以上に大きく、土の壁が曲線を描いてそびえ立っています。
この形はタイルの原料を掘り出す採土場をモチーフに設計されています(職員さんの話だと”山”と言っていました)。
そして側面には象徴的に松の木が植えられ、屋根から地面にかけてはタイルと思しき素材で覆われています。エントランスにはすり鉢状に傾斜したアプローチを下っていきます。
近づいていくにつれ外壁の表面が明瞭になっていくのですが、遠くから見えた点々の模様の正体はモザイクタイルでした。
そのような土の壁の面を中に掘るために手で掘ったような形で開けられた開口が入口になっています。
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各階の展示室と階段
入口を抜け、受付でチケット(入場料は300円という良心的価格)を買い、展示は4階から下っていくような順路ということで、まず階段で4階まで上がります。
その階段は内装に土が使われ、洞窟を抜けるように先の光に向かって進んでいきます。
4階はタイルアートの展示があります。中でも面白かったのが、天井の抜けたところにあるタイルのカーテンです。
雨天時には完全に雨ざらしになるというのが面白いです。タイルは耐水性があるので問題はありませんが、雨の日特有の何かがそこでは見られるのかが気になりました。
次に下って3階へ行くと、製品としてのタイル展示があります。カタログとしてのタイルや製造工程がそこでは見られます。
実際に映像が流れており、職員さんが説明もして下さり、さらにはタイル生成前の土も触らせて頂きました。
モザイクタイルは大きな型に複数のタイルを入れて施工しやすいように一枚のシート状にして出荷しますが、バラバラになったタイルの裏表を正すのは最終的に人が行なっているのだとその映像で知りました。
2階はショールームのようになっています。リビングでタイルを使った例やバーカウンター周りの使用例などが展示されており、コンシェルジュさんもいました。
1階はショップと体験コーナーがあり、休日に行ったとこもありそこは大勢の人で賑わっていました。
ここにもタイル、あそこにもタイル
モザイクタイルミュージアムというだけあり、館内には至る所にタイルが使われていました。
気づいていないところもまだまだありそうですが、一部を紹介します。
まず階段手すりの末端部分です。そしてガラスの衝突防止のためのマークもタイル、消化器・消火栓の扉もタイル貼りです。
もう少し注意してみてみると壁にある階数表示もタイルで、トイレなどのピクトグラム(視覚記号)もタイルでした。
一番仰々しいのは入口すぐにあるタイルに侵食された車で、やりすぎ感が面白かったです。
おわりに
建物としての全体的な衝撃は内部空間のモザイクタイルタイルのように細々としたデザインに細分化していき、外も内も最大限に楽しめるミュージアムでした。
ミュージアムからの帰り道に、駅まで歩いて1時間ほどあるのですが、せっかくなので歩いてみると、途中から全体の3/4ほどは歩行者用の緑道となっており、信号を気にすることなく歩けるようになっていました。
これがなかなかに心地よく、季節柄桜を見ながら散歩をする人が多く見られました。長い距離を歩くことになりましたが、こういうヒューマンスケールな道というのは親しみ深いなと思いました。