都市の軸線を考える「平成知新館」

建築

はじめに

平成知新館は京都国立博物館の敷地内にあります。設計は谷口吉生さんです。

設計のPoint
・碁盤の目を踏襲した場所の軸線
・水平横長のルーバー
・ライムストーンの壁
・吹き抜けのホワイエ

敷地について

博物館全体のエントランスは南側にある三十三間堂からの南北の軸線上にあります。その延長線上に横に長い「平成知新館」が直交するように構えているので、縦と横の方向性がかなり強調されています。

ちなみに敷地東側は片山東熊設計の「明治古都館」があります。訪問した時は恐ろしく混んでいたので今回は平成知新館のみの見学にしました。

建物を見た瞬間に法隆寺宝物館を思い出しました。どちらもコンテクストの捉え方は同じようになっているのでしょうか。「どこどこへの軸線を意識した」というのは結構色んな建物を設計する際に言われることが多いですが、その類似性もモダニズムの志向だと言えるのでしょうか。

京都の街も年々近代化が進んでいて、東京を追いかけるような都市の均質化が気になります。まちの成長の考え方そのものが今後AIに取って代わられるようになる状況にはしたくないと考えています。

移動が簡単になり時間が短縮され、都市部は至る場所がネットワーク化されているので場所性も失われやすい、そういう意味で日本のまだ都市化していない部分をどう維持・更新していくかが今後の課題だと思います。都市部は肥大化の受け皿としてよりスピーディな新陳代謝が求められると思います。

外部について

さて平成知新館ですが、法隆寺宝物館をさらに細長くしたような建物で、ここでもステンレスのフレームやライムストーンの壁が使われています。全体構成として簡素化された中に抽象的な表現のまとまりがあります。

夜になると内部の光がガラスのカーテンウォールから外に溢れてきて、それがステンレスの庇に反射され、遠くから見るとグラデーションを作っています。これも要するに内外の緩衝的な捉え方の抽象化だと言えると思います。

内部について

中に入ると、長い吹き抜け空間があります。アスペクト比(縦横の比率)が程よく感じましたがこのプロポーションにももしかしたら考え方があるような気がしてしまいます。行った時は30分待ちの行列がありましたが、それを余裕に受け止めるだけの容量はありました。

展示空間自体は展示そのものに集中できるように切り離されていて、点在する休憩スペースに行くと吹き抜けによって繋がった開放的な空間が感じられます。

京都で建築するということ

入り口からは京都の街が一望できます。実際見てみると京都の街全体として高層の建物が少ないように感じられ、京都タワーもくっきりと見えました。

確かに京都は高層ビルはあるけれども東京のような超高層ビルは少ないように思いました。調べてみると、京都市は基本的に31mを超える建物が建てられないように条例で規制しているらしいのです。容積率も東京と比べて低いので、景観保持のための規制なのだと思います。

高さ方向で作っていくことができないのならば、横のつながり・基壇部の構成がより強調されるようになるという狙いも含まれているのではないでしょうか。京都は建築行為がより責任のあるものだと思わせてくれる場所です。

他ジャンルとのコラボ展

行った時は美術館の企画展として、「刀剣乱舞(とうけんらんぶ)」というゲームとのコラボ展示をやっていました。このゲームは日本の名刀を擬人化して武将と戦わせるという趣旨のものらしいです。展覧会に参加している9割くらいが女性だったので、何も知らずに行って驚きましたが納得しました。

お客さんがみんな刀を興味津々に見ていて、自分が取り残された感が強かったです。日本人はここまで刀が好きなのが普通なのかと一瞬自分を恥じましたが、違うと分かり安心しました。

日本の伝統を現代的なツールで興味を持たせるというのはかなりいい手法だなと思いましたし、そういう好きなことに関しての女性の熱中ぶりは経済を左右するくらいに大きいものなのだろうと思いました。

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