はじめに
2019年4月に富山県に行ってきました。
4月の初めとはいえ雪が降ってきたときにはさすが北陸地方だなと実感させられました。
富山駅から徒歩20分ほど南下し、富山城の先にTOYAMAキラリはあります。
隈研吾さんが設計した複合施設で、中には美術館・図書館・銀行・カフェなどが入っています。
富山のエレメントが現れる外壁
雪が降り視界に寒々としたベールのかかった日ではありましたが、TOYAMAキラリの建物はすぐに分かりました。
設計が隈さんということもありますが、ルーバーのようなパネルで覆われたファサードは特徴的で印象的です。
そのファサードのパネルはアルミと御影石がランダムに配置され構成されます。それまで知りませんでしたがアルミは富山県の主要産業なのです。
そして御影石を使ったことにも理由があります。それはこの敷地にもともと立っていた富山第一銀行の旧本店の外壁に使われていたためなのです。
そのようにして過去と現在をつなぐ2つの素材が外観に現れているのです。
複合施設を垂直方向に統制していく
建物内に入ると正面に受付が位置するエントランスホール、そして銀行があります。
高い天井高のその空間には次の世界へと誘うエスカレータがあり、ひとつの面と天井には富山県産の杉板が角度を持ちながら取り付けられています。
エスカレータで上がると、カフェやショップのあるフロアが現れます。
そこには杉板が自分を取り囲むように取り付けられていて、1階で杉板のある面が限定されていたのは上部に向かって更に空間が延びているということを示すものでもありるのだと思いました。
その2階は3階、4階、5階と最上階に向かって斜めに連なっていく吹抜け(スパイラルボイド)が鮮やかに接続しています。
最上階の天井は広いトップライトになっているので、下のフロアまで光が届き、その周りを木が渦巻いていく、上昇気流に乗っていくような高揚感がありました。
吹抜けに設けられたエスカレータは図書館や美術館へと運んでくれます。
図書館の閲覧席は吹抜けに面した開放的な席や外側の窓際席などがあり、特に吹抜けに面した席は人が集まることで様々なモノが高密度化され楽しげに映りました。
そしてスパイラルボイドを可能にしたのが、全館避難安全検証法の適用です。
このような大きな吹抜けは竪穴区画といった火災時の延焼をさせないための区画を作る必要があるのですが、それを適用除外にするために安全に避難ができるということを法律上で示したのです。
区画をして繋がりを途切れさせてしまうのが惜しい立体構成のプログラムであるので、このようにして法的に人に寄せた空間を作ることができるというのは設計者の知恵の絞りどころだと思います。
おわりに
素材の力は数値化できませんが、素材を目に触れさせることで、その空間はどこか人の体内に浸透してくるような、寄り添ってくるようなものになると思っています。
TOYAMAキラリの内観は杉板がいくつも張られているだけですが、それでも全体をその質感で統制するような大きなベールとなっている気がします。
”質感”というのは建築空間がきちんと伝えなくてはならないと思いました。