内外に広がるサードプレイス的な駅舎「旭川駅」

建築

はじめに「札幌から旭川へ」

4月に北海道に行ってきました。成田空港から行きましたが、新千歳空港まではLCCを使うととても安く行くことができるのでしばしば利用しています。

国内のフライトは国外に行くよりも搭乗してから離陸するまでが短いのがいいです。

約2時間飛行機に乗り、新千歳空港に降り立ちまず札幌に向かいました。

旭川は札幌からバスで向かったのですが、北海道では電車よりもバスで移動する方が安く、そして本数が多かったりします。

今回紹介する旭川駅は駅周辺のまちづくりの一環として、建築家の内藤廣さんが設計した駅舎です。

都市計画家の加藤源さんに誘われて内藤さんが設計をすることになったそうです。

あいにく加藤さんは完成を見ること亡くなってしまったそうですが、「100年後の未来から今を待っている」と内藤さんが述べたように、非常に良い駅舎が出来たと思います。

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四叉柱のストラクチャがあるプラットフォーム

旭川駅は長さ180m×幅60mの箱型の建物です。建築的な見所はまず天井高12.5mのプラットフォームです。

そこにある鉄骨の四叉柱には樹木のような有機性を感じます。その四叉柱の上部架構は簡潔に平行弦トラスが組んであります。

構造設計は川口衞さんです。

簡潔な上部架構に対してデザインされた20箇所の四叉柱の下部架構が連続的に配置されていて、その足元は円形のベンチになっています。

構造という物質的なものを人が親しみやすいように寄せていくのも意匠の役目です。

斜めに立つ四叉柱に近寄りすぎると頭をぶつけ兼ねないので、そういったことも回避する目的でベンチになっているのです。

そのベンチには中央がガラスになっていてピンジョイントの部分を見られるところもあります。

道産のタモ材に覆われるコンコース

駅舎内のラチ外コンコースは建物を一周するように設けられています。

建物中央は売店や窓口や諸機能が集約されており、外周は駅(鉄道)を利用する人だけに限らず、市民が集えるようなオープンスペースになっています。

いつ来てもそこを居場所にできるような外周部の窓際に沿ったベンチが設けられていたり、テーブルも随所に設けられています。

そして古くから人とともに時代を歩んできた素材、木(タモ材)が小幅板でふんだんに使われています。

それはラチ外に限らず、ラチ内にも入り込むように使われています。ラチ内で発見したのが、下見板パネルに1万人の名前が刻まれた壁です。

これは市民が募金をする代わりに自分の名前を駅に刻むことができるという市民参加型のプロジェクトで実現したものです。

実は旭川駅を見る4年ほど前に北海道にある岩見沢駅を見に行ったことがります。

そこはレンガに市民の名前を刻むというプロジェクトが行われた駅舎だったのです。

旭川駅はその岩見沢駅のプロジェクトが大成功を収めたのを参考に、同様のプロジェクトを行なったのでした。

駅周辺に広がる公共空間

旭川駅だけではなくその周辺もまちづくり事業が進んでいます。建築だけではなく、土木、都市計画が並列して街を作っています。

駅の北側にはバスターミナルのある駅前広場、南側には車の流入は最小限に抑えられ、自然環境が重視された広場が広がっています。

近くに忠別川が流れているのですが、そのコンテクストを生かそうと従来あった駅舎よりも川の方に寄せて新しい駅舎が作られました。

そこに広がるランドスケープは駅前から東西方向に拡張されていって、そこではベンチに座って本を読んだり談笑している人や、犬と散歩している人など、日常風景が広がっていました。

天気も良かったので、私もベンチに座って本を読んでいたのですが、そこで感じられる川のせせらぎや春の日差しが心地よくて、ウトウトと眠ってしまいました。

建物内でも、そして建物外でも快適に過ごすことのできる都市的スケールの一体空間でした。

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おわりに「駅を中核とした広がり」

駅というのは街の玄関口です。市民も日常的に利用し、外からやってくる人がまず踏み入れるのが駅です。そして帰るときに最後に過ごすのが駅です。

実は何気なく使っているようで非常に重要な役割を持っているのです。そして公共的なものであるから多くの人が利用する場です。

そしたら単なる通過点として最も合理的な機能性があればいいというだけではなくて、そこだけの空間があっていいのだと思います。

もっと言えば図書館とか市民館のようにサードプレイスになってもいいのかもしれないのです。

短時間で人を捌くだけではなく、そこに流れの異なる滞留的時間に分岐させれらるような部分も必要なのだと思います。

全ての駅で同じようなことはできないですが、多くの人が思い思いに集う公共空間のあり方を旭川駅では考えさせられました。

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