はじめに
私は新卒時から建築業界で設計をしていますが、初めは誰でも業界に対してなんとなくのイメージしか持っていないと思います。
では何をすればいいのか、先に結論を書いておきます。
結論1.旅行ではなく旅をする
2.興味の赴くままに本を読む
3.長所(ウリ)を明確にする
4.行動力、決断力を高める
5.建築家を知る。講義を聞く
それでは具体的な内容を書いていきたいと思います。ありきたりな内容にはしないように心がけています。
旅行ではなく旅をする
世界的な建築家の安藤忠雄さんは、22歳の時に日本一周旅行に行き、24歳の時に海外に放浪の旅に出たそうです。
その時というのは、一般の人が海外に行けるようになった1964年の翌年のことだったようで、海外に行くと言ったら、もう帰ってこないと思われるくらいだったらしいです。
ですが、今はそんな時代ではありません。海外には気軽に行くことができます。少なくとも一回は行くべきです。というのも、それが建築をやっている上でのイメージの共有の一つになったりするからです。
マストであると考えるのは、パリにあるル・コルビュジェのサヴォア邸です。建築を学ぶ上で避けては通れない作品です。
私も国内外で様々な「旅」をしてきました。よかったら次の記事も読んでみてください。
しかし、建築を見ることももちろん重要ですが、旅をすることそのもの自体の方が重要だと思っています。なぜなら確実に自分の中で日本で暮らしていた際の「当たり前」を破壊されるからです。
今まで持っていなかった視点は確実に増えます。そして安藤忠雄さんも次の通り言っていました。
まずは国内旅から始めるのもいいかもしれません。
既成概念を壊し、違う視点を得るために旅をする
興味の赴くままに本を読む
先ほど安藤忠雄さんの言葉を書きましたが、それは私の建築人生の一歩を踏み出す後押しになった本に書かれています。それが安藤忠雄さんの書いた、「歩きながら考えよう 建築も、人生も」という本です。
しかし、何も建築の専門的な本を読んだ方がいいという訳ではないのです。例えば大学の教授が勧めるような本や参考書は、建築の知識がある程度蓄積してきた人には向いているかもしれませんが、初学者にとっては少し荷が重い気ようながします。
なのでもっと読みやすそうな、それも中学生でも読めるようなものでもいいと思っています。
実際に前述した安藤さんの本は、大げさではなく小学生でも読めます。大事なのは学ぶ意欲を高め、様々な本を読んでいき、知識と見聞を蓄えていくということなのです。
しかしなぜそこまで本を読むことを勧めるかというと明確な理由があります。それは建築の実務をやっていて思うのですが、「実務で経験したことしか知らない人が多すぎる」という問題です。
実際に仕事のできる人は、実務以外からも積極的に吸収している人ですから、その方法の一つが本を読むことであり、私が勧める理由でもあります。
よく建築の必読書の一つとして、
・ウィトルウィウスの「建築十書」
などが挙げられますが、これらは難しくて読む気が無くなると思います。
建築十書はまだ読みやすいですが、錯乱のニューヨークなんて下手すれば読書が嫌いになるレベルの難解な本だと思っています。なので、まずは簡単で面白そうな本から順々に読んでいくことをお勧めします。
実際に私が読んだ中で、初学者にとって読みやすいであろう本を下記の記事で紹介していますので、よかったら参考にしてみてください。
実務に加え、本を読むことで圧倒的に他人と知識・見聞の差が開く
長所(ウリ)を明確にする
あなたの長所はなんですか?とは就活でよく聞かれたものですが、技術的な長所といいますか、詳しい部分を作っておくといいです。
例えば、建築の設計では
・3Dモデリングのスキルがある
・絵が上手い
とかは強い武器になります。そういうものがあると、これはあの人が詳しいから聞いてみよう、やってもらおうということになります。
それでもそんな突出したスキルがない人は少なくないはずです。実際に私も突出したスキルは持っていません。ですが、誰でも簡単に身につけられるものがあると思っています。それは「行動力」です。
全く難しいことではありません。つべこべ考える時間をなくして、やってみればいいだけです。そして、やりたいと常に言っていればいいだけです。
それは主体的で前向きな姿勢と取られ、周囲からの良い評価にもつながるものです。
また、自分の持っている資質を客観的に知る方法もあります。有名な本ですが、以前に友人にもらったので読んでみたことがあります。
「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」という本です。
自己啓発本の類で、うさんくいなと思いながら読んでいましたが、人間の資質を細かく分析していること、そして、本の巻末に袋とじになっているアクセスコードを入力し、ネット上で質問に回答していくと自分の5つの資質というのが、最後に導き出されます。
例を紹介すると私の資質は、
・親密性
・着想
・責任感
・個別化
・慎重さ
の5つでした。資質を言葉にしてくれることで、自分の日頃感じていることはこれに分類されるのかと、長所の根源たるものを知ることができます。
そして、その資質に分類される自分の個性(長所)に焦点を当てて伸ばしていこうと思うきっかけにもなります。
長所(〇〇が得意な人というイメージ)を作っておく
行動力、決断力を高める
「行動力」は経験の差に直結します。建築の場合、世の中の様々なことをいかに体験しているかがかなり重要になってきます。
なぜならそれは下記の2点に繋がるからです。
①空間イメージへと直結する
②アイデアの引き出しが増える
それはもちろん建築に関わること以外も含みます。スポーツで例を挙げるならば、室内型のテニスを経験していることで、
・テニスコートの広さ
・天井の高さ
・休憩スペース
・更衣室
・エントランスからのアプローチ
などそういったレイアウトが直感的にイメージしやすいと思います。
経験がない場合は事例を調べれば分かることかもしれませんが、机上で考えるだけだと、現実性が不足しがちです。
そして「決断力」も大切です。望ましいのは「即決してそれが正解であること」ですが、いきなりそんな上手くいくこともないと思います。
ですが検討してばかりで決断に至らないと、周囲も困ってしまいます。なので普段から早めに決断するクセをつけるといいと思います。結果的にそれが即時に正解を出すことにも繋がると思います。
では何から始めようかと思ったら、まずは前述の「旅」、「読書」をきっかけにしてもいいかもしれません。
行動力は経験、決断力は信頼に繋がる
建築家を知る。講演を聞く
建築業界で働いていると、状況はどうであれ会話の中で建築家の名前はよく出てくるものです。隈研吾さんや安藤忠雄さんは一般の人でも知っているレベルですが、メジャーどころは抑えておきたいところです。
それが話の展開を生むこともありますし、知らないと話に入れないということになってしまいます。しかし、一遍にたくさんの建築家を覚える必要はなくて、興味を持ったところから順々に知っていくといいと思います。
例えば、「新国立競技場のコンペは隈研吾さんと伊東豊雄さんが最終案で残ったが、その前の選考に残っていたものを調べてみると古墳スタジアムという案があり、それは田根剛さんという建築家が提案したものだ。さらに・・・」というように関連付けて覚えていきます。
さらにおすすめなのは、建築家の講演を聞いてみるという体験です。建築家を身近に感じることで、建築への意欲を上げることができます。
講演は意外と無料で行われていたりして、「建築 講演会」とネットで検索すればたくさん情報が出てきます。私の場合、学生時代に行った、隈研吾さんと建築雑誌GAの発行人で写真家の二川由夫さんの対談などが印象に残っています。
また、建築家の個展に行ってみるのもいい刺激になると思います。
建築家を知ることでボキャブラリー(引き出し)を増やす
おわりに
ここまでの要点を再度まとめます。
まとめ1.旅行ではなく旅をする
2.興味の赴くままに本を読む
3.長所(ウリ)を明確にする
4.行動力、決断力を高める
5.建築家を知る。講義を聞く
実際に建築の実務を始めるまでに何をやっておいたらいいのか、よく分からないものだと思います。おすすめなのは好きな建築家だったり建築業界の人を見つけて、生き方や感性を参考に自分の行動に移すことです。そして今回書いた5つの提案が少しでも参考になればと思います。