はじめに「三菱地所のロイヤルパークホテルズ」
札幌にある、ザロイヤルパークキャンバス札幌大通公園に宿泊してきました。
このホテルを含むロイヤルパークホテルズは、三菱地所グループが展開するホテルブランドです。ここ札幌の他、東京・大阪・福岡・京都など全国に展開しています。
内外装、そして構造体として使われる木材
特徴的なのが、このホテルはRC造と木造のハイブリッド構造ということで、ふんだんに木材が使われています。まず、建物概要を紹介します。
規模:地上11階地下1階、最高高さ約46m
構造:RC造、木造(壁:枠組壁工法・床:CLT)
延床:約6160m2
客室:134室
建築主:三菱地所
設計:三菱地所設計
施工:清水建設
開業:2021年10月
そして、建物の構造が分かりやすく纏められている断面図が次の図の通りです。RC造の上が木造となっていることが分かると思います。
このように下がRC造、上が木造ということで、上から4層までに木造が使われています。そのため木造が1時間耐火、RC造が2時間耐火というように使い分けていることが分かります。
また、その構造の分け方が客室空間の特徴としても現れています。
上層階の木造部分は壁式なので柱梁の無い空間、下層階のRC部分は柱梁はあるものの、スラブ下の型枠がそのまま天井材として表しになるような設計となっています。
また、建物に使われている木材の8割が北海道産ということも特徴の一つです。
RC造のギャラリーフロアに宿泊
今回はギャラリーフロアに宿泊してきました。先ほど客室の構成がRC造と木造の区分けに倣っていると書きましたが、次のように対応しています。
ギャラリーフロア(3〜8階)→RC造
・3〜6階は北海道産トドマツを使った天井
・天井は配筋付きの製材型枠のためそのまま天井仕上げになっている
キャビンフロア(9〜11階)→木造
・柱梁の無い空間
そして、今回宿泊したギャラリーフロアの客室を紹介していきます。宿泊したのはスタンダードダブルという部屋タイプで、面積は19.9m2です。
玄関から入ると廊下があり、奥に寝室があるという一般的なワンルームタイプです。廊下の横には水廻りがあります。
先に水廻りを紹介します。洗面所には洗面台とトイレが同一空間にあります。
床はフローリングで、壁はムラ感のあるグレーのクロスです。このグレーのクロスは館内の廊下など、他の部分でも使われていて、個人的なお気に入りです。
洗面所に面したところには、シャワー室があります。壁は木目調のタイルで300×600の大きさでした。
このタイルは2階の共用トイレでも床・壁に使われていて、木目調だけれどもタイルらしい重厚感があって良かったです。
洗面所の黒い取手はカワジュンのもので、空間にマッチしていました。
次に寝室を紹介します。寝室はベッドと作り付けの長いソファ、小さめの丸テーブルがあります。
その他の備品だと、木で作られたスピーカーや冷蔵庫が置かれた棚があります。
家具はほとんど木で出来ていて、ホテルですが自宅にいるような安心感がありました。
テーブルが小さいため、少し物を広げたいという時に不便さを感じたのですが、その点はきちんと配慮されていました。
4階にはレンタル備品の置かれた部屋があり、そこに折りたたみ式のテーブルがありました。
そちらをレンタルしたので、食事をしたり作業をしたりという時に便利でした。
そして寝室の天井は、前述したようにコンクリートの型枠がそのまま天井材として表しになっているのですが、木材であるトドマツの温もりを感じられました。
内装が豪華に演出されているホテルラウンジのほか、共用施設
受付のあるラウンジに始まり、ホテル内の共用部分も魅力的にデザインされていたので紹介します。
CANVAS LOUNGE「KOKAGE」(2F)
まずはじめにラウンジです。ラウンジは2階にあり、1階からは階段で上がることができます。
入った瞬間にデザインのセンスの良さを感じました。それは斜め天井や多種多様な照明、インテリアグリーンによるものだと思いました。
斜めの天井は窓に向かって上がっています。その方向に合わせて木材が貼られ、ライン照明がよりその方向性を強調させています。
それだけでもすごく魅力的な空間ですが、インテリアグリーンや家具が随所に置かれることで、人の居やすいスケールになっているように思いました。
壁はムラ感のあるグレーの塗装で、家具のソファーもムラ感があるものになっていました。
窓際はカウンター席なのですが、大通公園やさっぽろテレビ塔が見え、とても癒される場所でした。
また、小さいテラス席もあり、そこでは外装材として使われているカラマツが間近に見られました。
HOKKAIDO CUISINE KAMUY(1F)
エントランスを入ったところにはレストランがあります。朝食付きのプランはこちらのレストランで頂くことになります。
こちらのインテリアでも木材が使われており、席もゆったりと配置されています。
CANVAS ROOFTOP「Outdoor Living SAPPORO」(屋上)
屋上では飲食ができるようになっています。
テントが出されていたり、火が焚かれており、キャンプ場のような設えになっています。
そこではテレビ塔を間近に、眺めの良い場所でお酒を飲んだりできるようになっています。
その他の共用部分
その他の共用部分としてはライブラリーや、備品のレンタル室、ランドリーやアイロンルームなどがあります。
おわりに「細かくデザインされた空間の魅力」
ザロイヤルパークキャンバス札幌大通公園はハイブリッド木造であり、木が多く使われていることが特徴的でしたが、全体的に細かくデザインされているところが魅力を生み出していると思いました。
部屋の中やホテル内を観察していると細やかなデザインに気がつくことが多かったです。そして、家のような居心地の良さが感じられる非常に良いホテルでした。ぜひ泊まってみてください。
今回はこのホテルがどのように作られているのか、建築的に気になり宿泊してみました。建築視点で書いていますが、どのようなホテルか気になっている人の参考になれば嬉しいです。