まち歩き編《香港・マカオ旅③》

まち

はじめに

香港・マカオには初めて行きました。だからこそ、あらゆるモノが新鮮に見えてきて、それらはどれも興味深いものでした。

中でも面白く感じたものを中心にまとめてみました。このとき感じた香港・マカオはきっと10年後には、また違う雰囲気を纏ってくるような気がします。それでは紹介していきます。

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竹足場

香港・マカオの建設現場では日本ではよく見かける鋼管の足場は見当たらないのです。その代わりに「竹」が使われているのですが、観察していても特に安全面で問題もなさそうです。足場も防護棚も全て竹です。

寧ろ竹の持つしなやかさは構造的にも扱いやすさも有利で、供給を多く必要とするであろう中国では理にかなった材料なのだと思います。

そしてその軽さは仮に落下してしまったとしてもその被害を鋼管より抑えることができます。日本でも広く活用できる事例なのではないかと感じました。

住宅事情

香港の海辺周辺の開発された区域とは対比的に、これもまた人口の多さが顕著に表れているのですが、九龍など内陸に行くと老朽化した建物が多く存在しています。日本では更新されるであろう具合であっても人は住み着いていて、生活環境の質の悪さを感じました。

ベランダが存在しないから洗濯物を道路側に向けて干し、置き場がないからエアコンの室外機が壁付けにされ、そのドレン水が歩行者に降りかかるという不清潔さがあります。歩いているだけで何度も水が体に当たりました。

戸建て住宅はこの地域には存在しなくて、香港島の方は人口が集中するからますます高容積の超高層マンションが建てられます。その様子は経済の急成長に対応しきれていないようで、日光を求める木のように建築物は垂直に伸びます。

現在は店が立ち並ぶ街路がそれらの足元にあり地上の賑わいがありますが、そうしたネットワークを残しつつ都市部の緑化はもっと進めていく必要があります。

需要が同じ方向に向いているから街の建築デザインの方向も揃っているように錯覚しそうですが、実は無秩序で今後どのようにしていくかを考え直すべきではないかと思いました。とはいえ、今を状態を香港らしさと言えなくもなさそうなのも事実です。

カジノの街

カジノの効果は凄まじいものだとマカオに行って感じました。マカオは香港からフェリーで一時間ほどで着きます。
香港・マカオ間の移動で入国審査が必要だということは意外でした。

マカオにはカジノを併設しているホテルがたくさんあります。カジノは24時間営業なので、一度やると抜けどころを見失ってしまいそうになります。この観光資源が東京にもできると思うと、東京は益々寝られない街になりそうです。

カジノも勿論楽しいのですが、マカオの建築物を見るのも新鮮でそして強烈でした。日中は大気汚染なのだと思いますが香港と同様に空が曇っていました。そして当然空気の質も悪かったように思います。

道路沿いを歩いていると軽い頭痛に見舞われることがほとんどでした。建設ラッシュの中ではある程度許容してもいいかなとは思いますが、せっかく新しく作るのだから緑ももっと一緒に計画していってほしいと思いました。

ネットを検索すれば世界の都市の大気汚染が数値化された地図を見ることができます。それによるとマカオより東京の方が数値が高かったりしますので、体感的なものは自分の感覚の方を信じることにします。

そんなマカオは訪れた際、外の景色がテーマパークのようでその興奮は少年に戻ったような感覚に陥りました。単純に興奮します。ただ数日経って慣れると、あまり長くは居られない環境だとも思ってきます。2日あれば存分に楽しめる街です。

泊まったところはコタイ地区にあるスタジオシティ(STUDIO CITY)というハリウッドをコンセプトに入れたカジノ併設型ホテルです。泊まった部屋は2人一部屋で一泊7,000円程度でした。体験も含めた価格として評価すると破格です。

その他にも各ホテルには決まったコンセプトがありました。ヴェニチアやパリをモチーフにしたところなど、エッフェル塔もどきのものまで作ってしまうその思い切り振りには脱帽です。

そしてこの街は光による演出が強すぎて圧倒されてしまいます。建築的目線でどうこうというのはありませんが、テーマパークとして十分楽しめます。

現在は完成して中にも入れますが、訪れた時はザハ設計のホテルが建設中でした。近くを通ってこういう形態はザハっぽいなと思っていたら、後々調べた結果本当にザハでした。

ザハの時もそうですが、日本だと安藤さんとか隈さんとか、瞬間的にその人らしさを感じて本当にその人の設計だと知るとその建築に出会った時の喜びが知っているものを見に行く時よりあったりします。

現在はマカオと香港をつなぐかなり長い橋を建設中です。マカオに限りませんが、やっぱり行って感じないと分からない空気感を得ることができました。経験・体験の価値はこれからの時代今までより高くなってくると思うので、大切にしていきたいです。

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建築の可能性

外壁が剝がれ落ち躯体が露出しているもの、それらは老朽化や施工性の悪さからきているものであると思いますが、そのようなところが随所に見受けられました。

しかし寧ろこれは香港・マカオといった都市を構成する固有のエレメントとしての活用方法を考えやすいのではないかと思いました。

右の写真は建物間をフレームで押さえた補強的役割なのであるのかは分かりませんが、既存活用の筋道が立てやすそうで気になりました。こうやって建物が密集している中でのボイドは自然環境を吸い込みやすくて憩いの場に転換しやすいです。

上部には植栽があり、それは垂直方向の緑化を促せそうです。またこのフレームは階高程度の長さで構成されているからより下層から上層に向かっての段階的なつながりを創りだせそうでもあります。

全体的に内に閉じている建築が多い中、外に開いた建物や空間の役割は都市に凸凹を生み出すことによる人の流動の活性化であると思います。一つの空間を取り上げるだけでもこれだけ考えられるため、香港・マカオは日本とは違った切り口での更なる建築の可能性を含んだ地域であると感じました。

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