透過性のある現代的な図書館「高雄市立図書館総館(Kaohsiung Main Public Library)」

建築

はじめに

高雄市立図書館総館は台湾の高雄市にあります。2014年に完成した図書館で、高雄には新しく奇抜なデザインの建物がたくさん立ち並んでいます。

街のあちこちで建設中の建物が見られ、日本には見られない勢いを、訪問した2018年現在の高雄では見ることができました。

ひっかかる既視感の正体

この建物を見たときに連続する床のレイヤとチューブに引っかかりました。それは伊東豊雄さんの設計した「せんだいメディアテーク」に近いのです。

ここでは大きなチューブの構造体とボックスの構造体が地上レベルから確認できます。

部分的に「せんだいメディアテーク」を参考にしたのかなと思って見学後に調べたら、伊東豊雄さんも設計に関与していることが分かりました。それなら合点がいきます。

設計は伊東豊雄さんと台湾の建築家・劉培森(Ricky Liu)さんの事務所が合同で行ったようです。

※この合同設計は高雄国家体育場(KAOHSIUNG WORLD GAMES STADIUM)でも実現していたようです。

ただこの図書館の設計に伊東さんがどれくらい関わっていたのかは不明です。

というのも図書館のHPには合同設計の旨が書かれていたのですが、伊東さんの事務所の作品一覧に載っていないのと、劉培森さんの方にも合作というようなことは書かれていないのです。

憶測ですが、せんだいメディアテークを参考にしたくて伊東さんに助言を求めたとかそういうことなのかもしれません。

劉培森さんは台中の歌劇院(オペラハウス)の近くにあった台中市政府庁舎と台中市議会庁舎も設計に関わっているようで、台湾での現代建築を結構手掛けているようです。

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見通しのきく歩きやすい館内

この図書館は吊構造になっていて、主構造体の部分を除いて館内に太い柱が出てこないようになっています。そのために館内は非常に巡りやすいです。

四方はガラスのカーテンウォールになっていて、日射を考慮した庇や緑が周りに配されています。チューブの構造体は内部にもしっかりと現れています。

そして非常に圧迫感の少ない図書館です。それを促すような装置として、建物を縦に貫く光の筋道があります。

この建物は8階建てですが、建物の中心のデッドスペースに6階から8階までを吹抜けの屋外テラスとした光庭が設けられています。

さらにその光庭の中心が透過されるようになっていて、光は下のフロアまで届きます。

下のフロアではその部分は吹抜けの螺旋階段となっていて、6階部分で一旦区切っておきながらも縦軸の抜けはしっかりと確保されています。

眺めのいい屋上庭園

屋上には一面の庭園が設けられていて、非常に眺めがいいです。

中庭然り読書や勉強の気分転換にもってこいです。隣の敷地で現在建設中の建物をこの高さから真横で見られるというのも新鮮でした。

他にも高雄展覧館(実はここも劉培森さんの設計です)のある海側や高雄の観光名所になっている85 Sky Towerも見ることができます。

おわりに

せんだいメディアテークも素晴らしいですが、こちらの高雄市立図書館総館も個人的に好きです。

外観だけではその構造がもたらしている効果が分かりにくいですが、利用者の行動を意識した設計でした。

せっかくなので台湾語か中国語で書かれた建築雑誌を読んで帰りました。

日本の雑誌も置いてあって新建築やA+Uなどメジャーどころが見られました。

また、見学の翌日は利用者として図書館に入りました。ノマドワーカーよろしく利用したのですが、窓際と内側で席数も多いかつ一人当たりの机の幅が広いです。ただ夕刻だったこともあり、ダイレクトに入る西日は避けられませんでした。

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