はじめに
臺北市立美術館は台湾の台北市にあります。最寄駅は台北MRT捷運淡水線の圓山駅です。設計は台湾の建築家・高而潘さんです。今回は国立故宮博物院に行った後にそのまま歩いて南下してきたため、普通とは違ったアプローチを取りました。その道中にはOMAが設計する臺北藝術中心の建設現場など面白い場所が沢山ありました。
※台北にある建物は別記事にてまとめています。
直方体の積み重ね
台北の観光ガイドにも載るこの有名な美術館は、直方体が積み重なった形態をしています。そのため外部に対して直方体の小口は開口部となり外と接続しています。積み重ねるということは”ずらす”という操作を加えればヴォイドを形成しやすく、この美術館には中庭となり地下まで落ちているヴォイドもあります。
また積み重ねにより展示に求められる順路(回遊性)や区画も建物形態に沿って作りやすいように思えます。ただ直方体の小口を開口部としても展示という性質上、開口の持つ主な機能は消されてしまいます。どこの美術館に行ってもトップライトやハイサイドライト以外の開口はカーテン等で閉ざされていることが多いです。開口が開口たらしめる使われ方をするのを想定するのは意外と難しいです。
直方体の積み重ねによりプログラムを解こうとしたため開口の処理では少し上手く行っていないかなというのが正直な印象です。ただそれも展示品によって変わってくることであるので一概には言えませんが、美術館という場所に行ってよく思うことです。
RCと鉄骨のストラクチャー
館内の主要構造部はRC造です。エントランスホールの吹抜けなど、極力柱の本数を減らしたいようでその分かなり大きな梁成が階段部分などに現れています。階段もRCの側桁で結構重厚に作られており、RCの腰壁は上部がR処理されているというディテールを持ち柔らかな佇まいなのですが、ここでの曲面要素は変に目立ってしまっていました。
RCの直方体とは対比的に鉄骨造でガラスのスキンの直方体もあります。ここは増築部分のようで上階が乗らないので鉄骨の線も軽やかです。斜格子のようなストラクチャーで直方体を形成していて、所々にトップライトが作られています。ただ増築部分が既存部分と接続する箇所が一点のみのために、すでに見た展示のルートを戻る必要がある点が勿体無かったです。
展示で台湾の今を知る
見学した時の展示で、台北のまちづくり的なプロジェクト展示がありました。都市環境の中にどのように緑化していくかというもので、日本とも同様の21世紀の課題は台湾でも見られました。電車等から見る限り森林は多いのですが、それでも「市街化したところに緑が少なくなってしまっているのでは?」というのは都市部に出てくる課題です。
そして歩道の整備についての展示もありました。歩道はその地域の地形や環境によって作られ方が違ってくるため、先人たちが身近な資源でどうやって作っていたかを調査し今後の整備に役立てるというものです。近代化によって調達しやすい資源が生み出すものはどこにでもあるものでローカルが失われやすいので、大切な試みだと思いました。
おわりに
美術館という場所で日本以外の国・地域の様子を知るというのも面白いものです。そうすればリアルな世界の潮流を肌で感じることができるので、基軸としての母国のことをもっと広く知っておく必要があるとも感じました。
台湾は小さい島でありながら建設ラッシュが続いていると肌で感じています。やはり体を駆使してかつ、頭で考えてみることが大切だと思いました。