はじめに「公共交通機関の安いシンガポール」
2023年にシンガポールに行ってきました。
シンガポールは国土が東京23区と同じくらいという小さな都市国家です。
国家政策が上手く機能し、インフラが整っているため快適な生活をできる国だと思います。
シンガポールはマレーシアやインドネシアなど、近隣諸国と比べてもダントツで綺麗に整備された国だと思います。
物価が高いということで有名なシンガポールですが、電車やバスなどの公共交通機関は安く、多くの国民の足となっています。
今回は実際の体験も踏まえて、シンガポールの交通事情について紹介していきたいと思います。
交通系ICカードでもクレジットカードでも乗車可能
日本では電車やバスに乗るときにSuicaやPasmoなどと言った交通系ICカードを使いますが、シンガポールではEzlinkカードがそれに当たります。
私は空港の駅で購入しました。
入金は駅の自動券売機でもできますが、アプリを入れてクレジットカードを登録しても入金することができます。
また、シンガポールではクレジットカードをタッチするだけで電車やバスに乗れるということが特徴的です。
条件として、タッチ機能付きのクレジットカードで、VISAかMasterCardである必要はあるのですが、交通系ICカードを持つ必要がないのでとても便利です。
東京では見たことがないので調べてみると、2023年現在では福岡市地下鉄や江ノ島電鉄などでクレジットカードによる乗車システムが導入されているようです。
これは東京こそ早く導入すべきだと思いました。いまだに切符で乗車している外国人をよく見かけます。
※ちなみにシンガポール以外ですと、ロンドンでもクレジットカードで乗車できます。
乗継のしやすいMRTと生活圏を走るLRT
シンガポールは東西約45km、南北約25kmといった小さな島ですが、その中にMRTとLRTが張り巡らされています。
下図は路線網になります。
シンガポールのMRT(Mass Rapid Transit)には次の6つの路線があります。
・East-West Line
・North-South Line
・North East Line
・Circle Line
・Downtown Line
・Thomson-East Coast Line
そして、MRTは全てで140以上の駅があります。
路線の大きな特徴としては、マリーナベイサンズなどのある海側から放射状に伸びる路線と環状の路線(Circle Line)に分かれています。
MRTは今後の伸長計画があり、路線図では点線で示されています。
「Circle Lineが完全に一周できるようになる」というのと、「マリーナベイサンズの方からチャンギ空港の方までを結ぶようになる」というのが大きなところです。
MRTでは乗っている客層に違いが見られました。
North East Lineはインド系の人が多く乗っていたのが印象的でした。
その理由は、この路線上にlittle India駅というインド人が多く集まるエリアがあるためだと思います。
※ちなみにインド人をはじめ多国籍国家であるシンガポールですが、人種構成としては次の通りです。中華系:74%、マレー系:14%、インド系:9%(※2022年統計)
MRTはサイン計画などが明瞭で使いやすく、乗換もしやすかったです。
乗換は基本的にホームの上下移動で完結でき、エスカレータで登るだけで乗換先のホームに辿りつけるところが多かったです。稀に徒歩で数分歩いて乗換することはありました。
乗換がしやすい駅の構造は台湾(台北)と似ている気がしました。
反対に、乗換にたくさん歩かなければならないのが韓国(ソウル)、ついで日本(東京)という印象です。
また、他にも気がついたことを挙げておきます。
・エスカレーターの速度が早い
・エスカレーターは左側に並ぶ(日本と同じ)
・車内はノードリアン(ドリアン持ち込み禁止)
次にLRTについてです。
MRTのいくつかの駅にはLRTが接続されています。
シンガポールで言うLRTは、モノレールをイメージしてもらうといいと思います。
MRTからLRTへは同じ駅の中で改札を降りずに乗り換えできます。
LRTには次の3つの路線があります。
・Bukit Panjang LRT
・Sengkang LRT
・Punggol LRT
LRTは全てで40駅以上の駅があり、それらはMRTの駅周りを囲うように走っています。
これは生活圏の利便性を高めるいい計画だと思いました。
利用したLRTは1両編成の無人列車でしたが、初めて使った時に電車の進行方向を理解するのに戸惑いました。
それは到着する電車が西回りか東回りかを判断する必要があるのです。
今来る電車がどっち回りかは電光表示で分かるのですが、普段見慣れないその運用に戸惑ってしまいました。
ですが、一度理解すれば何ら難しいことはないです。
路線網の張り巡らされた利便性の良いバス
シンガポールのバスは非常に充実しています。
次の図はシンガポールのバス停の位置をプロットしたものです。
バス停が充実しているだけでなく、本数も多く、多くの目的地に行きやすい路線網になっていると思います。
シンガポールに滞在中は目的地までのルートをGoogle mapで検索することが多いのですが、MRTを使うよりもバスを使った方が早いことも多かったです。
そして到着時刻に大きなブレがないことも使いやすかったです。
日本と異なるバスの特徴を挙げると次の通りです。
・乗る際は手を挙げる(降りる人がいなく、手を挙げなければ通過される)
・2階建てのバスがある
・運転中でも車内を歩ける
2階建てのバスは乗り心地も新鮮でした。
中には屋根にアマゾンの宅配物を載せているバスもいました。
高くて買えない自動車
シンガポールの滞在中に車を運転したことはないのですが、シンガポールの車に対する考え方が特徴的なので紹介します。
まず、シンガポールで車を買うと非常に高いです。目安としては日本の5倍くらいかかります。
その背景にはシンガポールでは国産車がなく、全て輸入車ということがあります。
そして環境配慮への視点も加わり、自動車は購入する際に道路税や輸入関税などが取られるほか、COEという有料の車両所有権の取得が義務付けられています。
そのため自動車は高級なのです。
そうすると一般市民が気軽に購入できるものでもなくなり、結果として国民の自動車保持率は人口の15%程度になっています。
また、ERP(Elecrtric Road Pricing)という制度が導入されています。
これは道路の混雑区間に侵入する際に課金されるもので、渋滞の抑制を目的としています。
街中で道路上に大きく「ERP」と表示されているので観光をしていても見かけると思います。
車の量を減らすというのは環境にも優しく、いい取り組みだと思います。
それはシンガポールの近隣諸国の交通事情を体験するとつくづく感じます。
車・バイクが多く、排気ガスが多いと大気汚染による健康被害にも直結します。
こういった政策の中で、今後のシンガポールがどうなっていくのかも気になるところです。
おわりに「今後はシェアサイクルの普及がカギ?」
以上、シンガポールの交通事情について、実体験を踏まえての紹介でした。
国土や人口の違いはありますが、シンガポールを見習いたい部分が多く見つかりました。
勝手な推測ですが、シンガポールは今後シェアサイクルがもっと普及されていくだろうと思いました。
まだ街中で乗っている人は少ないですが、自転車ゾーンをペイントをするなど自転車が走る道の整備をするともっと普及するような気がしました。