はじめに「まさにフランク・ゲーリーの形」
フランスのパリにあるフォンダシオン・ルイ・ヴィトンに行ってきました。
パリの16区という西側のエリアにあり、観光でも行きやすい場所にあります。
設計はこの建物形態から想像できると思いますが、アメリカの建築家フランク・ゲーリーです。
屋内では私設美術館としての展示と、ゲーリーが設計したこの建物自体の設計過程の展示もしてありました。
・パリの新旧建築巡り《フランス旅》
・近代建築の五原則を肌で感じる「サヴォア邸(Villa Savoye)」①
・汎用性を生む”さりげなさ”を設計する「ラ・ロッシュ邸(Maison La Roche)」
コンクリートの構造体
この建物はコンクリートのメインの構造体に、ガラスの膜が被さり成り立っています。
その構造体のコンクリートも単なる四角い形状ではなく、丸みを帯びていたり斜めに切り取られていたり複雑な形です。
この形態を作るために、専用の3Dモデルソフトが使われたようです。
コンクリートには、より強度のあるUHPFRC(Ultra High Performance Fiber Reinforced Concrete) (=超高性能繊維補強コンクリート)が使われています。
建物に被さるガラスの膜
外観の特徴となる大きなガラスの膜は、全部で12枚被さっています。
ガラスで出来ているため、多くの自然光を内部にもたらすことができます。
パリの街を一望できる屋外テラスでは、そのガラス膜が重なり覆われる様子と、それを支持するストラクチャーを見ることができます。
支持材には炭素鋼、ステンレス鋼、集成材が使われていて、接合部分は全てスティールですがハイブリッド構造になっています。
そして、「木」が使われている点がユニークでした。
それによりこの建物は「ガラス・コンクリート・鉄・木」という多様なマテリアルで成り立っていることになります。
建物を覆う曲面加工されたガラスは、1枚が1.5m×3mの大きさに分割されていて、全てで3,600枚も使われています。
ゲーリー・ミュージアムとしての展示空間
建物内にはスケッチや模型など、ゲーリーによるこの建物の設計過程が展示されていました。
それもかなりのゆとりを持って各階に展示されていたため、この美術館はゲーリーの作りだす空間自体を体験してもらう場所としての意味の方が強いように思いました。
ほかにもアート作品の展示がオーディトリアムにあったり、地下に黄色の光源とガラスが表裏に付いたパネルが並べられていました。
おわりに
ゲーリーの設計する建物は非常に特徴的です。
ファサードとして分離した膜のような覆いは作品によってマテリアルを変えて現れます。
それらは視覚的に楽しいものであり、そのロケーションに際立つ個性でもあります。
フォンダシオン・ルイ・ヴィトンもまた、ビルバオ・グッゲンハイム美術館と同じように広い余白を設けて建っているからこそアートのように存在意義を発しているように感じました。
ただ、パリに行く多くの観光客が買うであろうミュージアムパス(多くの美術館が見放題になるチケット)の中に、ここは含まれていなかったのは費用的に痛手でした。
知っていながらダメもとでミュージアムパスを見せるも、ただスタッフの人が混乱して終わるだけでした…
ゲーリーのビルバオ・グッゲンハイム美術館の記事も併せて見てみてください。