はじめに「新卒でハウスメーカーに入社」
私は新卒でハウスメーカーに設計職として入社し、数年間在籍していました。
そこで知ったハウスメーカーの設計職の実態について、退職した後の俯瞰的な視点も含めて、就職や転職を検討している人などに知っていただけたらと思います。
はじめに言っておきたいのは、私は新卒でハウスメーカーに入ったことを非常に満足しているということです。
そしてハウスメーカーの設計職を検討している人に、この仕事をお勧めできるかどうか、先に結論を書きたいと思います。
結論
ハウスメーカーは9割の人にはオススメ。ポイントは将来的に何をやっていきたいか。将来、独立願望がある人は短期であればおすすめ。
ここで”9割”と書いたのは、1割くらいは大企業には全く興味がないという人がいると思うからです。
また、私が考えるハウスメーカーの設計に向いている人は次の通りです。
・家のプランニングが好きな人
・家庭を持っている人
・ワークアンドライフバランスを重視したい人
・設計者としての能力的な段階を踏みたい人
それでは、次より具体的な中身について書いていきます。
ハウスメーカーに就職するメリット
個人的にハウスメーカーに就職するメリットは次の点にあると思います。
・年収が平均より高い
・安定して収入が上がる
・資格支援や補助がある
・残業、休みのコントロールがしやすい
これらは業界的な比較の上でのメリットです。
ゼネコンや組織設計的よりも残業は少ないですし、設計事務所と比較したら天と地くらいの差があります。
では、メリットを一つ一つ解説していきます。
【メリット①】年収が平均より高い
就活の時に、初任給はどこの会社も提示されているかと思いますが、ハウスメーカーの初任給は高水準です。
その高水準からスタートし、残業代も適正に支払われ、ボーナスも年2回確実に出ることを踏まえると、特に不満は出ないくらいの額になります。
年収はというと、3年目で額面500万ほど。一級建築士を持っていれば5年目で600万くらいです(私の在職していた会社の場合)。
【メリット②】安定して収入が上がる
普通に仕事をしていれば、1年経つごとに少しずつですが年収は上がっていきます。月収もそうですが、ボーナスも必然的に多くなってきます。
しかしそれは、逆説的に年功序列的な風習が残っているとも言えますが、そこらへんの適切な評価をするという労働改革も、最近は進んできていると肌で感じました。
【メリット③】資格支援や手当がある
ハウスメーカーによって程度はまちまちかと思いますが、どこの会社でもだいたいは資格手当があります。
私の在籍していた会社ですと、一級建築士で月3万円の手当がありました。
これは資格の有無で大きな収入の差になるので、是が非でも取得したいものです。
また資格支援に至っては、資格校に通う費用を一部負担してくれる会社もありますが、私のところはありませんでした。
一級建築士:月30,000円
二級建築士:月3,000円
宅地建物取引士:月5,000円
【メリット④】残業、休みのコントロールがしやすい
個人的に一番有難かったのが、残業と休暇をコントロールしやすいという点です。
建築業界ということもあり、残業が全くないということはないので、実際は多いと月40時間ほどは残業していました。
それでも定時に帰る日を作ったりと、業務をコントロールしてメリハリをつけた仕事をすることができていました。
なぜ業務のコントロールがしやすいかというと、ハウスメーカーという性質上、業務の役割分担が細分化されているからです。
有給休暇も使いやすかったです。決して自分だけがそんな働き方というわけではなくて、先輩・上司も早く帰ったり、有給を取ったりを頻繁にしていました。
私の場合は、旅行に行くため3連休にすることはもちろん、4連休にしたこともありましたし、有給を使うことは多かったです。
残業:[最小]月25時間、[最大]月45時間
有給:年9日取得
ハウスメーカーに就職するデメリット
デメリットは、前述のメリットを作り出した結果として生まれた副作用とも言えるかもしれません。
少々厳しめな意見かもしれませんが、私の考えるデメリットは次の通りです。
ハウスメーカーのデメリット
・役割分担による単純業務の繰り返し
・向上心がやや低目な人が多い
・「今までやっていたこと=安全」という思考停止的な発想がある
・意味のないと分かっていながら続けなくてはならない風習がある
しかし、これらはハウスメーカーに限らず、大企業になってくると全般的に言えると思っています。
常に考えながら行動できるという人にとっては、デメリットに苛まれるということも少ないかと思います。
設計と営業、施工管理との違い
ハウスメーカー内の職種は、大きく「営業・設計・施工管理・事務・スタッフ(総務や人事など)」に分かれています。
設計はその中で、企画設計(基本設計)・実施設計・CADオペレーターに分かれており、中には兼務するようなこともあります。
では設計が営業や施工管理と比較してどう違うのかという点について書きたいと思います。私が考える違いは以下の通りです。
ハウスメーカー内での他職種と設計との違い
・残業時間
・有給の取りやすさ
・業務量
それでは一つ一つ解説していきます。
【違い①】残業時間
業務の大まかなフローとして、営業→設計→施工管理と住宅づくりは進行していきます。
その中でもハウスメーカーの場合、設計は営業や施工管理ほど残業時間は多くはないです。前述しましたが、残業は多くて月40時間ほどです。
それに比較して、受注を担う営業は、設計と同じくらいか少し多い程度です。
一番残業が多いのが施工管理です。多数の現場を一人で管理しなくてはならず、工程の調整には多くの業者が関わってくることもあり、残業時間は多いです。
施工管理の残業は60時間は超えてきます。休日出勤などを合わせると100時間を超えるということもあります。
【違い②】有給休暇の取りやすさ
有給の取りやすさは残業時間と比例してくると思います。
なので実際の状況からして、有給の取りやすさは営業・施工管理よりも設計がの方が上でした。
【違い③】業務量
業務量に関して一概に比較はしにくいですが、設計はかなりの量があると思っています。
しかし量はあるのですが、ハウスメーカーは一定の仕様や技術基準があるので、業務は省力化できます。
同期入社の営業・施工管理の人と比較して思ったのは、業務量はやはり設計が多いということです。
ただし業務量の多い少ないが大変さに直結するかというと、必ずしもそういうわけではありません。前述したように、ハウスメーカーの設計は省力化しやすい職種だと思うからです。
・設計は残業時間は少ない方
・設計は有給も取りやすい
・設計は業務量こそ多いものの、省力化しやすい
設計の業務内容を紹介
では、ハウスメーカーの設計は具体的にどのような業務を行うのか、以下に挙げました。
[企画設計段階]←基本計画・基本設計の段階
・施主、営業との打合せ
・プラン作成
・構造との調整
[実施設計段階]
・図面のCAD化
・実施設計図の作成
・納まり検討、関連法規の調整
・構造、設備との調整
ハウスメーカーの設計には、お客様と打合せをしながら住宅を作っていく注文住宅と、作ったものを売る建売住宅(分譲住宅)があります。
注文住宅はお客様の要望が随時出てきますが、建売住宅は会社内部での調整のみなので、業務の進みやすさは建売の方があります。
面白みに関してはやはり注文住宅の方があるとは思います。
Q&A
ハウスメーカーの設計に就職するか検討している人に向けてQ&Aを作りましたので、良かったら参考にしてみてください。
Q.設計の初心者でも大丈夫?
A.新卒であれば全く問題ありません。中途だとそれなりのスキルは求められてきます。だいたいの会社にはOJT研修というものがあり、実務を通して先輩・上司が一人一人に付いて教えてくれます。そのため頼ってばかりではダメですが、一から知識と業務の流れが身につくような仕組みになっています。
Q.住宅だけ作っていて飽きが来ない?
A.住宅作りは奥が深く、楽しいので飽きないです。なので入社してから定年まで働く人も、住宅作りの楽しさがあるからこそ続けられると言っていました。私も同感です。人が住むことを想像しながら、その使い勝手を意識し設計するのは非常に楽しいものです。
ハウスメーカーへの転職を考えるならまずは情報収集
ここまで読んでハウスメーカーの設計に対して、結構良いイメージを持たれる人は多いと思います。
実際にその通りではありましたが、ハウスメーカーにも各社特徴があります。私の知人が入った某有名ハウスメーカーはブラックだと聞いたりします。
そしてこの記事は経験に基づいた内容を書いているので、本には書いていないリアルな情報が得られたかと思います。
就職にあたっては情報収集が非常に重要で、それを怠るとせっかくの就職という決断が失敗に終わってしまいます。
どんな方法でリサーチしてもいいと思いますが、元社員や現社員による声が多く掲載されている、転職会議という有名なサイトには、良い面も悪い面も両方書かれているので参考になるかと思います。
また、ハウスメーカーでは資格を取得することが重要です。それで年収も大きく変わります。それについては次の記事に詳しく書いていますので、宜しければご覧ください。
おわりに
以上、私のハウスメーカーの設計としての経験をもとに紹介してきました。
ハウスメーカーの設計は自分の時間が確保しやすく、資格取得のための勉強が十分にできたという点がありがたかったです。お陰で建築士の資格も取れました。
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。