はじめに「知らなかった釧路を知る」
北海道の釧路に行ってきました。釧路のイメージは寒そうというくらいで、具体的な街の様子や名産については全然知らない状態で行きました。
ですが、行ってみると美味しい料理や、地方都市らしい街の雰囲気、実は名建築が多いということなど、発見が多かったです。
避粉地、世界三大夕日、釧路湿原
この旅は、釧路に関する知識がほとんど無い状態で行きましたが、現地に行ってみると釧路を特徴付けるものが色々とあることが分かりました。
まず、「避粉地」ということです。これは釧路に限らず北海道全域に言えますが、杉花粉がありません。3月の時期に行きましたが、花粉を感じることはありませんでした。
そのため、花粉症の人にとっては過ごしやすい場所と言えると思います。花粉症は今や国民病と呼ばれるくらいで、北海道出身の人が本州に来てから花粉症になったという声を聞いたこともあります。
また、観光案内所に行って初めて知ったのですが、釧路の夕日は「世界三大夕日」の一つなのです。
釧路の他は、バリ(インドネシア)とマニラ(フィリピン)です。マニラの夕日は見たことがありますが、島の稜線に沈んでいく様子は確かに美しかったのを覚えています。
世界三大と呼ばれるほど美しい夕日とはどのようなものなのだろうかと半身半疑でしたが、そんな情報も忘れていた頃、釧路でふと目に入ってきた夕日は思わず声を上げてしまうくらい美しかったです。
また、観光案内所には折り鶴が大量に置かれており、お土産にと3羽頂きました。その鶴は釧路を代表する「タンチョウ鶴」です。
そんなタンチョウ鶴は、釧路の北に位置する広大な釧路湿原でよく見られます。私は惜しくも行きませんでしたが、釧路を代表する観光スポットです。
出張の受け皿となるビジネスホテル
釧路空港からバスで釧路駅に到着すると、周囲にはビジネスホテルが多く見られました。それらを挙げてみると、
・ルートイン
・クラウンヒルズ(BBHホテルグループ)
・コンフォートホテル(チョイスホテルズグループ)
・釧路ロイヤルイン(リッチモンドホテルズグループ)
といった具合に、全国展開しているビジネスホテルが多くありました。
駅から少し離れると、
・ANAクラウンプラザホテル
・ドーミーイン
など、宿泊費がやや高めのホテルも現れてきました。
こういったホテルが立ち並んでいる様子を見るに、釧路は出張で来る人に提供するホテルの需要が高いことが察せられました。
街は活気に溢れていた1970年代の頃の様子とは変わって、百貨店が撤退するなどして、シャッターが降りたビルや、広大な駐車場として使われている土地や空き地が駅近くにもたくさんありました。そのため街からは寂しさが感じられました。
そこに立っている不自然に背の高いホテルは、街の雰囲気にはそぐわないように感じましたが、街としては人を呼び込むことが先決であるようにも思うので、都市の美観という観点は仕方なくも後回しになっているように感じました。
そんなビジネスホテルが多くある釧路の中で、私が今回宿泊したのは「釧路キャッスルホテル」です。ここは釧路の建築家、毛綱毅曠さんが設計したホテルで、建築士としてはここ一択でした。ホテルの詳細は後述したいと思います。
釧路を知る地元のお店
地元を知るためには、そこにある様々なお店に行ってみるのが良いと思っています。そうすると人の様子や食べ物、歴史について知ることができ、街の特徴が分かってきます。私が釧路で行ったお店について紹介したいと思います。
和商市場
「和商市場」は1954年から続く、歴史ある市場です。そこでは地産の水産物などを購入したり、新鮮なお魚を食べることができます。
釧路駅からも近いので、観光客のほとんどが寄る観光地だと思います。名物は勝手丼といい、お椀にご飯を入れてもらい、その上に乗せるお刺身などを自分で選んで、自分の好みの海鮮丼を作るというものです。
なかなかに客引きが強くて困惑する部分もありましたが、魚は新鮮で美味しかったです。
居酒屋あけぼの
「居酒屋あけぼの」は釧路駅の南側、末広町2丁目にありますが、このエリア一帯は居酒屋やスナック、キャバクラなど、夜にオープンするお店が多く集う歓楽街になっています。
ここでは北海道名物のザンギやつぶ貝など地元の料理を食べることができます。昼間はひと気もなく寂しいエリアですが、夜になるとこんなに人が集まるのかと驚いた程でした。
かど屋
かど屋は創業50年以上経つお店で、釧路ラーメン(醤油)とつぶ貝を提供しています。
お酒も出していますが、食事だけできているお客さんも多かったです。昭和に戻ったかのような風情のある店内で、ラーメンとつぶ貝を頂きました。
つぶ貝は木の板に乗せて提供されます。それは余韻に浸ってしまうくらい味わいがあり、釧路に行ったら必ず寄りたいお店になりました。
店主さんは優しくつぶ貝の食べ方を教えてくれました。普段食べ慣れていないので、つぶ貝を楊枝で取ると、途中で切れてしまいました。
そんな時は木の板に貝を叩くと切れてしまった部分が出てくるのです。そんなやり方を実演付きで優しく教えてくれました。
喫茶ローゼ
ここまで紹介したお店とは異なり、喫茶ローゼは駅の北側にあります。
北側には観光客はなかなか行かないように思います。というのも、昔は栄えていたであろう残滓が物悲しくあるだけで、観光するような場所にはなっていないためです。
私はそんな場所にこそ興味を抱いて行きたくなるのですが、実際は観光客らしき人は見られませんでした。そもそも街を歩いている人が少ないのです。
そんな雰囲気の駅前を抜け、住宅街を歩いているとあるのが喫茶ローゼです。フクロウの置物が多くおかれた店内で、本や雑誌を読みながら、食事でもコーヒーでもゆっくりとした時間を過ごすことができます。
地元の人が多く集っており勝手によそ者感を感じてしまいましたが、店主さんは「ごゆっくりしていってください」と優しい言葉をかけてくれました。
人の密度感や流れる時間の感じ方は人口が少ない都市ならではの良さがあります。非常に癒されたお店でした。
毛綱毅曠の建築を巡る
釧路にはどんな建築があるのだろうかと調べていると、毛綱毅曠さん(1941-2001)の設計した建築が多いことが分かりました。
ポストモダニズム時代の代名詞とも言える毛綱さんの生まれは釧路なのです。ということで、毛綱毅曠さんが設計した建築巡りをしてきましたので紹介します。
NTTドコモ釧路ビル
低層にレンガ・タイル、中層がセットバックして高層は金属パネルという外観構成になっています。それぞれが異次元の世界観を出していて建築の無限性を感じる建物でした。
NTTドコモ釧路ビル 物件概要 | |
所在地 | 釧路市北大通10丁目1 |
竣工 | 1998年 |
釧路フィッシャーマンズワーフMOO
釧路川沿いに立っている建物で、観光客の集うお土産屋や飲食店、温室、郵便局、ハローワークなど行政関連施設も入った多様な用途の集まる複合施設となっています。
釧路フィッシャーマンズワーフMOO 物件概要 | |
所在地 | 釧路市錦町2丁目4 |
竣工 | 1989年 |
釧路キャッスルホテル
「釧路キャッスルホテル」は毛綱さんが設計したホテルということで気になり、宿泊してみました。
2015年に内装リニューアルがあったため、開業当時の様子とは変わってしまっている部分もありますが、独特な雰囲気を持つホテルでした。そしてフロントの方がとても丁寧で、ホテルマンの鏡のようでした。
建築的に面白いホテルなので、共用部から客室まで、いくつか写真を載せたいと思います。
釧路キャッスルホテル 物件概要 | |
所在地 | 釧路市大川町2−5 |
竣工 | 1987年 |
反住器
反住器は毛綱さんの母のために建てた家で、現在は「毛綱毅曠建築事務所釧路出張所」と表札に書かれていました。ガラス越しに見えた内部は入り子構造になっていました。
反住器 物件概要 | |
所在地 | 釧路市富士見1丁目5 |
竣工 | 1972年 |
釧路市立博物館
釧路市立博物館は左右対称の外観デザインとなっており、宗教的思想が感じられる建物でした。内部の見どころは二重螺旋階段で、圧倒的な存在感を示していました。
釧路市立博物館 物件概要 | |
所在地 | 釧路市春湖台1−7 |
竣工 | 1984年 |
釧路市立幣舞中学校
釧路市立幣舞中学校は屋上の連続するアーチが特徴的な建物です。以前は内部の見学をできたらしいのですが、そんな情報を後から知り悔やまれました。
釧路市立幣舞中学校 物件概要 | |
所在地 | 釧路市春湖台1−3 |
竣工 | 1986年 |
おわりに「地産の料理に舌鼓を打つ」
以上、釧路の町の特徴から建築まで、実際に足を運んだスポットの紹介でした。地元の食べ物はとても美味しく、釧路で食べた数々の料理は忘れられません。
そして北海道に行くと、セイコーマートに意識的に入るのですが、北海道限定とか北海道名物とか書かれているとついつい手を伸ばしてしまいがちでした。
まだまだ広い北海道、色んなエリアに行ってみたいと思いました。