はじめに「冬は油断禁物」
グンナール・アスプルンドの設計した森の墓地(Skogskyrkogarden)へ行ってきました。完全に2月のスウェーデンをなめていました。0度くらいの想定で行ったのですが、到着してみると-10度という大誤算。
服装も東京で過ごすようなものだったので到底耐えきれません。ありったけの服を着込み、外に出ると吹雪。吹雪はもうどうしようもありません。森の墓地を行かずに去ることだけはしたくないので気合を入れて出発しました。
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拠り所としての「十字架」
森の墓地のイメージといえば何と言ってもまっすぐに伸びる石畳のアプローチの先に十字架がそびえ立ち、その場を墓地に一変させる壮大な風景だと思います。
雪で真っ白です。これではアプローチも何もありません。夏であれば見られるであろう石や草などのテクスチャが全て雪で埋め尽くされています。
それでも十字架は堂々と立っています。脚が40cm近く埋もれる雪にスニーカーで挑むという無謀さも、あの十字架を間近で見るためなら耐えられます。
運良く誰かが近くまで行った軌跡が後ろ側にあったので、十字架を後ろから歩み寄り、周辺の雪に隠れた大草原をイメージしながらそそくさとその場を去りました。
十字の花崗岩が大地に強く根を下ろしているようでした。
軒下のテリトリー「森の火葬場」
森の火葬場は屋外の大屋根の中央が吹き抜けていて、その下にある像へと光を届けます。像と反対の方を向くと、そちらは大自然が広がっています。
外周に柱が落ちていて、その柱越しに広がる自然の風景はきっととても開放的なものであるのだと思います。一面雪景色でもそのように思えました。
この建物の中には礼拝堂もあるのですが、この時期は入ることはできませんでした。
厳かな佇まい「森の礼拝堂」
森の礼拝堂はRCのフレームで奥行きが3.5~4mくらいの門をくぐって向かいます。その正面に礼拝堂が位置するのですが、そのフレームの奥行きがしっかりと内と外を遮断するものでした。
両脇に木々がそびえ立ち、その間がアプローチとなるのですが、このアプローチは以前にどこかで体験したような馴染みがありました。回顧すると堀部安嗣さんの設計した竹林寺納骨堂へのアプローチに似ているように感じたのでした。
歩いていると自然が粛々と向かい入れるような感覚になります。礼拝堂の庇は深くかかり、雪から守ってくれます。しかしやはり中に入ることはできませんでした。
おわりに「絶景は次回へ持ち越し」
今回の森の墓地は極寒の吹雪の中での訪問でしたが、それが次に来た時の比較対象となるのでいい経験でした。そしてまだ森の墓地の1割しか見られていないのです。
きっと草原と空とが墓地の静粛さと調和しているであろう風景を求めて、夏にまた来ることにします。