はじめに「人を惹きつける図書館」
ストックホルム市立図書館はスウェーデンの首都ストックホルムにあり、北欧を代表する建築家の一人、グンナール・アスプルンドによって設計されました。
1928年に完成した建物ですが、今もなお多くの人を惹きつけています。衰えることのない、時代とともに貴重性が増していくような建築デザインとしてとても勉強になる場所です。
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公園から建物へのアプローチ
ストックホルム市立図書館は当初、アスプルンドが市によって審査を依頼されたコンペで設計者が決まる予定でしたが、結果としてアスプルンド自身が設計を担うこととなったようです。
また敷地と一体化した公園もアスプルンドが設計しました。見学に行った時は一面雪景色でしたが、背後の山の斜面からシームレスに公園となり、図書館へと続くアプローチを作っていました。
建物形態はシンプルで直方体の箱の上に円柱を載せた形です。この形は内部空間をそのまま表していて、無駄が削ぎ落とされています。
衰えることのないデザインと先述しましたが、残るデザインと言った方がいいかもしれません。批判の糸口を見つけにくいような、それもまた壮大な内部のデザインを有しているので、次の100年も悠々と残っていそうな安定感がありました。
ここぞ本質的な図書館「本に囲まれる空間」
ストックホルム市立図書館はその内観に多くの人が魅了されています。ここの空間を一度は体験してみたいというのが、建築だけでなく読書好きとしての視点からもありました。
エントランスから中央の吹抜け空間に行く道は視界を限定させる細い道で、そこを抜けると一気に視界が開けます。世界そのものが変わるようです。本棚が自分の周りを360度囲んでいます。
本に囲まれる体験は普段行くような本屋でも図書館でもできますが、360度囲むというのは本同士が呼応して全体的な結びつきとなるのではないかと思います。
本同士を繋ぐ見えない糸が張り巡らされた結果、場の濃度を異常なまでに高めています。その空間に身を置くと、本全体がテクスチャのように機能しているように感じ、それらは個体から集合体になることで生み出す効果なのだと思います。
普段手にとって読んでいる1冊の本は集まると自分よりも大きな存在となる、そんな体験ができました。
それと同時に効いているのが天井高だと思います。本棚部分だけで天井を切ってしまうと、圧迫感が強くなりますが、本棚よりも高く吹抜けています。
その円周上に開口が設けられていて、新鮮な空気や時代の潮流などが絶えず流出入するような印象を受けました。
中央の円形の吹抜け背後には閲覧室があります。それらは長方形になっていて、印象はがらりと変わります。
アスプルンドのデザインした調度品
建築の他にもアスプルンドのデザインしたと思しき調度品が多々あります。どこまでがアスプルンドのデザインかは定かではありませんが、いくつか紹介します。
カート
図書館の職員が本を運ぶために使うのがカートです。木で作られていて、枠組みとL字の本置きのみで構成されています。カートを引くための把手も枠組みと一体化したように付けられていて、シンプルで繊細なデザインが見られました。
カウンター
閲覧室の受付として使われているであろうカウンターがありました。人の往来のある動線上にあるので角は取れていて、中は受付の人が椅子に座ったまま作業しやすいように手の届く範囲内で完結させられます。
チェア・テーブル
閲覧室には様々なチェアやテーブルが置かれていました。
おわりに「やはり北欧=インテリア」
北欧は寒いので、その分建物内での活動がより楽しくなるように多様な家具デザインがあります。それらはすべて人に近いスケールで、その試行錯誤によって生まれた家具たちは一つ一つが愛着の湧くようなものでした。
そしてストックホルム市立図書館の醍醐味である360度見渡す限りの書架は途轍もない密度で、知のアーカイブでありアートであり風景であるような空間でした。