はじめに「堀部安嗣さんの設計」
大山阿夫利神社に併設するカフェ、茶寮石尊へ行ってきました。2019年4月にオープンした場所になります。
なぜここに行きたいと思ったかというと、建築家・堀部安嗣さんが改修に携わったからです。
堀部さんは主に住宅の設計をしているので、実際に見に行ける作品は少なく貴重なのです。
見に行ける建物ですと、高知にある”竹林寺”や瀬戸内海を周遊する客船”ガンツウ”などがあります。
堀部さんは住宅作家らしい、「優しい建築」を作る人というイメージです。今回の神社カフェもそういった意味で楽しみに向かいました。
カフェまでの険しい道のり
大山阿夫利神社は、その名の通り「大山」という山にあります。神奈川県の伊勢原市が所在地になります。
アクセスとしては、小田急線の伊勢原駅からバスに乗り、山の中腹くらいまで行きます。
自動車で行けるのはそこまでで、そこからは歩かなければなりません。私はあまり調べずに行ったのですが、こんなに歩くのかと思ったくらい、そこから歩きます。
山の上にある神社カフェを目指すので、ほぼ階段で上がっていきます。
バスの中でも既に気付いていたのですが、ほとんど登山をしにきた人ばかりでした。格好からして違います。
もっと動きやすい格好で行けば良かったと後悔したくらいなので、もし行く際は格好に注意してください。必ず汗はかくと思います。
そして階段で登った先にはケーブルカーの駅があり、更にそこからケーブルカーで上がります。20分間隔で出ていたので、そこまで待つこともなく乗れました。
ケーブルカーでの所要時間は10分くらいでした。そうして徐々に目的地であるカフェに近づいていきます。
風格を残した、入ってみたくなる佇まい
ケーブルカーを降り、歩いていくとはじめにカフェらしき建物が現れるのですが、こちらは目当てのカフェではなかったです。
どこにあるのだろうかと探しつつ、とりあえず石段を上がってみたらその先にありました。テラスに人が並んで座っていたのですぐに分かりました。
エントランスに近づいていくと、神社の形はそのままに改修したことが分かります。玄関ポーチのように、入口前に余白をとっているあたりが住宅作家らしいなと思いました。
木板が貼られたポーチは引き込まれるような魅力がありました。そしてカフェの名前である「石尊」と書かれた暖簾が雰囲気をよりよくしていました。
狭さを感じさせない多様な空間の変化
では、いざカフェの中を紹介していきます。
こちらのカフェは神社の一角を改修してできましたが、延床面積は118.84m2(客席:95.70m2)という、こじんまりとした広さです。
しかし、その面積からは想像できないくらい多様な空間があり、その変化に富んでいるからこそ狭さを感じさせないようになっていました。
それでは、それぞれの空間を紹介していきます。
主役の絶景テラス
こちらのテラスは、カフェの主役になっています。雑誌でメインになるのもこちらの写真です。
確かに絶景で、このテラスからの景色にはミシュランの2つ星がついているくらいなのです。やはりテラス席は人気で、行った時は中の席よりもテラス席の方が人が多かったです。
居間のようなテーブル席
こちらの席は店内の4人掛けのテーブル席です。絶景のテラスの方が全面ガラス張りになっているので、みな外に視線を向けながら、店内での時間を過ごしていました。
天井は低く、勾配天井になっており木張りです。雑念がなくなるくらい、なんとも居心地のいい空間でした。それは住宅の居間のような中心となる空間でした。
余談ですが、こちらの空間が好きな人はイヴェールボスケにも行ってみてほしいです。
こちらは石川県にある堀部さんの設計したカフェなのですが、きっと好きなはずです。ケーキが恐ろしく美味しくて、私も大好きな場所です。
応接室だった畳敷の客席
こちらの畳敷の客席は、元々応接室として使われていた部屋のようです。こちらのみ靴を脱いで上がります。
テーブルをくっつけて大人数にも対応できる空間です。カフェの一番奥の席になるのですが、全体を見渡せるので私はこちらの席に座りました。
絶景を直接見るのもいいですが、建築越しに見たかったのです。
建築と絶景、その両方を不足なく感じられる場所を選ぶのは建築好きならではだとは思います。
なぜならこちらの畳の席よりも先程のテーブル席の方が人気だったからです。
ダイニングのような半個室のテーブル席
こちらの席を選ぶ人は、かなりの玄人じゃないかと思います。なぜならここから絶景は見られないからです。
ですが、絶景を抜きにすると半個室のこちらのテーブル席が一番好きでした。それはまるで、家のダイニングで安らかな時間を過ごすのに向いている空間でした。
手元は見えないですが、座った時でも視線は通る腰壁の高さとなっていました。
こちらはテーブルが1つしかないので1組用の空間ですが、この一角を作ろうと考えられるのは住宅のスケールで設計することに慣れている人だからではないかと思いました。この空間構成には感嘆せざるを得なかったです。
抽象的な廊下
廊下とは大体は空間を隔てているものですが、カフェという半ば公共的な建物なのでクローズである必要がないのです。
異種の空間の干渉領域であり、必要最低限の通路幅という機能だけ満たしていました。
おわりに「名建築の満足感」
以上、大山阿夫利神社に併設するカフェ、茶寮石尊の紹介でした。
とてもいい建築を見たなという満足感に浸り店を後にすると、大山阿夫利神社の下社が目の前にあり、神社の敷地の中にあることを改めて感じさせられました。
神社ではなくこのカフェを目的に来ても申し分ないくらい良いところでしたので、ぜひ行ってみてください。
新建築2019年7月号でも紹介されていますので、そちらも要チェックです。
※この記事では、大山阿夫利神社茶寮石尊を建築視点で紹介していきます。道中の様子もお伝えしていますので、実際に行こうと考えている人の参考になるかと思います。