はじめに
マカオにある建築を紹介します。マカオはポルトガルの植民地であったため、その痕跡が建物として残っているのを見られます。
そしてマカオと言えば「カジノ」です。莫大な資本を投入して作られていく統合型リゾート施設は、普段あまり見られるものではないので新鮮に感じました。
ロバート・ホー・トン図書館
元々はポルトガル人の住宅であったものを香港の実業家が買取り、死後にマカオに寄付され近年図書館の新館が建てられました。
エントランスに大邸宅であった様子が見られ、中庭に入ると新旧を繋ぐ廊下があり、その二つの建物に統一性はないのですが、建物としてのボリュームを分けながらも外部とシームレスに繋がる中庭が新旧の対比を強調し、効果的に空間の変化が作られています。
新しいからそれは古いものを踏襲しなければならないとか、古いもののエレメントを抽出して取り込まなければならないと、それまで考えがちでした。
しかし、それらを繋ぐギミックがあれば調和することを深く考えなくてもそれらはプログラムの設定、動線計画で人の居場所をつくることで自然と調和へと向かってくるように感じました。
それは建物間の歩み寄りのような概念です。ここであれば「外壁の角度を振る操作」や「建物間を繋ぐ廊下」があります。
建物両者はそれぞれの持つ要素の中で作り、その間は新たな構成要素を追加して作る、その結果は必ずしも多要素による高密度化で落ち着かなくなるわけではないということが分かりました。
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聖ポール天主堂跡
ユネスコ世界遺産「マカオ歴史地区」の一つとして認定されています。元々はカトリック教会であったらしいですが、現在は表層のみに削がれ、セナド広場から続く通りの終着地点であり、多くの観光客の滞留の場となっています。
広場は休憩の場であり、自由なアクティビティのを促す場であり、そこに人が集まれば賑わいが生まれます。
広幅員の階段は観光客が思い思いに腰を下ろす場となっていて、それは広場という空間の持っている性質に助長されて生まれる行為なのだと思いました。
カジノ建築
グランドリスボアや多くの世界遺産がある「マカオ半島」と、統合型リゾート(IR)が多く建設されている「コタイ地区」がマカオのカジノの中心地となっています。カジノという非日常の場を提供する建物はその一つ一つが豪華さや煌びやかさを含んでいます。
近未来的なイメージを装飾や照明で演出しているため、圧倒的な存在感であるのですが、緑被地が少なく空気が悪いです。近未来的とは工業化を生かしたものを作るだけで、自然回帰的な思想は淘汰されてしまうのでしょうか。
そもそもコタイ地区は埋立地であって、反自然的な存在であるからそこには人工物を作り出した分だけ環境に配慮した取り組みも必要だと思います。
21世紀現在で推奨される環境配慮型の傾向とは逆方向の開発がこうも顕著に進められているのは清々しくもありますが、自然の生き物が住み着かないような場所になってしまっては、長期的に考えればいずれ人間も去っていき荒地と化してしまうのではないかという懸念もあります。
ただ異空間のショーウィンドウのような楽しさもあるため、今後の開発は折衷型で進めていってほしいです。
最終章、まち歩き編《香港・マカオ旅③》に続きます。