はじめに「高知という町に上陸」
高知駅は「高知の玄関口」です。と言っても中心市街地からは徒歩10分以上離れたところにあって、賑やかさが駅周辺にはないところは以前からの課題なのだろうと思います。
高知や香川の駅舎で見たところは高架が多く、どこも線路と直交する通り抜け軸が貫いていて、駅中のベンチでは制服を着た学生たちが談笑しているという風景が印象的でした。
東京では駅がこういった溜まり場にはなりにくいので新鮮に映りました。街には若い人も意外と多く、お年寄りも勿論います。ただ中間層があまり目につかなかったです。
街に現れる人、建物内で働く人の対照的な度合いが地方だと強いのでしょうか。
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地方都市の発展の法則性
地方都市の発展の仕方には法則性があることを最近学びました。まず城があって城下町ができます。ここまでが藩主によって作られた部分で、そこに近代的な線路(ここでは土讃線)が入ってくるわけです。
線路を敷くにも地権が影響して複雑化した城下町部分には作りにくいです。そのため城から更に離れたところに駅ができます。
駅ができると線路によって二分された町は城下町側から先に発展し、遅れて反対側が発展するというものです。この論理は知る限りほとんどの都市で当てはまっているので面白いです。
屋根は高知の杉をふんだんに使用
駅舎の設計は内藤廣さんです。電車でいざ高知駅に到着すると、トレイン・シェッド(駅全体を覆う大きな屋根)を構成する大断面集成材のアーチが目につきます。
そして木だけでは心許ないためスチールの下弦材・立体トラスで持たせています。
木造アーチが使われている駅舎は稀だと思います。大体はスティールです。やはり比較してみるとスティールの方が圧倒的に線が細いですが、ここでは木を使うのでその分太くなります。
構造上、杉の集成梁の曲げ応力が大きくなってしまうため、トラスを組んで軸力に変換し抵抗するという明快なシステムを取っています。ここの集成梁は900mmのせいがあるらしいです。
それを全て高知県産の杉でやっているので、地元の人の誇りにもなる建築物だと思います。野地板まで県産という徹底ぶりです。でもさすがにその上に敷かれている耐水合板だけは違うようです。
アーチの柱脚
また、ここで面白いのが柱脚の部分です。通常だと高架のスラブ上に根巻きなりの柱脚を両端に立ててアーチを支持するのが多いと思います。トレイン・シェッドの代表事例「フランクフルト中央駅」もそのような支持でした。
でもここでは片側は地表レベルまで落ちています。そしてそれが駅前の通路をも包み込むようになっています。包み込む素材が木であるところが重要で、どこか安心感を覚えます。
屋根の領域が隣の範囲まで広がると急に周囲との関係性・結びつきが強くなるということが顕著に現れていました。まちの継続・発展を長期的に支えるであろういい駅舎でした。
・技術、場所、時間の翻訳の上に成り立つ「内藤廣建築」まとめ
・内外に広がるサードプレイス的な駅舎「旭川駅」
・湖に向けた情緒的な軸線「福井県年縞博物館」