はじめに「台湾はなぜ、おしゃれなカフェが多い?」
台湾に行った際に「なぜ台湾のカフェはこんなにおしゃれなところが多いのだろうか」と率直に思いました。
そして、それらのほとんどは東京のように満席で入れないなんていうことがなく、ゆとりがあるということにも魅力を感じました。
魅力的な内装デザインが多い台湾で、カフェに足を運びつつその空間を味わってきましたので、いくつかのパターンに分けて、写真を交えて紹介していきたいと思います。
ビビッドな色を使った心を掴むデザイン
台湾の街中を見ている中で「台湾の内装デザインは色使いが上手い」と感じました。
良い事例として紹介したいのが、台北にある大苑子市府夢想店です。店内で果物も売られているカフェなのですが、「緑」を使った内装デザインとなっています。
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大苑子市府夢想店
外壁のサイン部分に緑の100角くらいのタイルが貼られています。店内では濃い緑のタイルがレジカウンターの腰壁に貼られ、カフェカウンター、収納扉が緑塗装となっています。
そして、トイレとその外側は黄緑のタイルというように、緑系統で色を揃えながら全体をデザインしています。
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レジカウンター壁面の緑タイルとカウンターの緑塗装
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収納の緑塗装とトイレ周辺の黄緑タイル
その他、ペンダント照明が店内に散らばっていたり、ポリカーボネートの波板を使っているのもおしゃれポイントだと思います。
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ペンダント照明やポリカーボネートの波板
台北の都会的な部分から離れ、ランタンで有名な十分の街でもいいデザインのカフェを発見しました。
そのカフェには観光に疲れふらっと入ったのですが、オレンジを基調としたデザインでした。
店は奥行きが長く、その両側面がオレンジの塗装でした。突き当たりは大開口で開放されているため、外の光によりオレンジの中にも濃淡ができていました。
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両側の壁がオレンジの店内
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突き当たりは大開口で光が入ってくる
かなり大面積でビビッドな色を使っているので、一見あまり上手いデザインにはならなさそうですが、アンティーク調の家具も相まって、とても居心地の良いデザインに仕上がっていました。
古い建物のアンティークさを感じさせるデザイン
アンティークさを感じさせるデザインもよく見られました。そのアンティークさはリノベーションされた建物で強く感じられます。
まず取り上げたいのが、樂見里8號閱覽室という台北の東に位置する”花蓮”にあるカフェです。
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樂見里8號閱覽室
元々の工場ならではの天井の高さが店内に開放感を与え、窓からは外の木々の緑が見えるという気持ちのいい空間です。店内には本がたくさん置かれており、読むこともできます。
本棚や机、椅子といった木製の家具が温かみを与え、天井から吊り下がったオブジェやペンダント照明が空間を引き締めていました。
天井は剥き出しで、スラブと梁は塗装されているだけです。さらには床の洗い出し仕上げも全体の空間構成のバランスが考えられていて上手いなと思いました。
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一体感のある空間
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外の風景を見るのも気持ちいい
外観は少し古びた味のあるものですが、内部とのコントラストが強くて驚きました。
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もともと製造工場だった外観
同じように、天井と梁を表しにするという内装デザインのカフェを紹介します。台北にある冉冉生活というカフェです。
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冉冉生活
ここも天井の躯体がいい味を出しています。先ほど紹介した「樂見里8號閱覽室」と共通して言えるのは、天井が躯体表しなのに、空調ダクトが無いという点です。それがこの空間をすっきりとより良く見せていると思います。
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躯体表しのスッキリした天井
日本でも天井表しというデザインはよくありますが、そのほとんどは空調や換気のダクトが天井を埋め尽くすように張り巡らされているように思います。
台湾では壁からの吹き出し空調など、天井をよりスッキリ見せるデザインにしているように思いました。なんとなく台湾の換気の考え方は日本よりもルーズなような気もしていますが。
そして次に、台北にある艸藴というカフェは少し違った視点で紹介します。
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艸藴
台湾のカフェを見ていて度々思うのが、こんなに内観が魅力的ならもっと外観をよくすればいいのに、ということです。つまり、内観はいいのに外観が古びていて勿体無いということです。
そのいい例がこの「艸藴」です。ここは3階建の店内になっています。写真では伝わりにくいと思いますが、簡素な内装ながらも空間の統一感があって、かなり等身大のデザインといった感じでいいなと思いました。
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簡素ながらも統一感のある内装デザイン
そんな風に店内は素晴らしいのですが、外観はツギハギ小屋みたいになっています。それは一瞬入るのを躊躇するくらいでした。
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ツギハギ小屋に見える外観
とてもいい店なのですが、外観ももっとよくできる、そう思った事例でした。
木質感による安心感を与えるデザイン
次に木質感を重視したデザインです。木質感によるデザインは日本でも良く見られ、デザインの王道のようにも思います。
まず紹介したいのが、観光地としても有名な南街得意です。1階がショップで2階にカフェや展示があります。町屋をリノベーションしたカフェで中庭のある独特な建物形状も面白いです。
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南街得意
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建物の中央に位置する中庭
カフェ店内は木壁で仕切ったり、木サッシを使ったり、天井の木組を見せていたりします。どこにいても木の温もりを感じられる空間です。
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木の温もりを感じられる店内
そして古い建物にあるカフェとは対照的な、現代的なカフェも紹介しておきます。
台北にある台北捷運 x 路易莎聯名旗艦店というカフェです。ここは今時な内装のカフェですが、細かなデザインが上手いです。
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台北捷運 x 路易莎聯名旗艦店
広い店内の中央に注文カウンターがあり、木質シートが貼られています。そして家具は明るめの木で、それらは少しアッシュ系の色になっています。
そのアッシュ感は床タイルにもあり、内装の統一感があります。アッシュ系がコンセプトの店内でシンプルながらもとてもデザインが上手いなと思いました。
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アッシュ系の色でまとめられたデザイン
外周がガラス張りの店内は明るく、席数も多いので、パソコン作業をする人も多く人気の店でした。
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明るく広い店内
おわりに「台湾でカフェ巡り観光」
以上、内装デザインという視点をテーマにカフェの事例を紹介しました。
これら事例は説明しやすいものをピックアップしましたが、まだまだ魅力的なカフェはたくさんあります。
日本からの旅行先として人気の台湾ですが、カフェ巡りという目的の観光も十分に楽しい国だと思います。この記事が何かの参考になれば嬉しいです。
※この記事は、建築士による建築的な視点でカフェの内装デザインを紹介しています。