はじめに「ひとりでヨーロッパへ」
冬にヨーロッパへ一人旅に行ってきました。目的はたくさんの建築を見て審美眼を養うためです。
一旦建築の実務から距離を置くことで、純粋に建築と一対一で向かい合う時間をとりました。
この記事ではヨーロッパを周遊した29日間の内容を細かく書いていこうと思います。
事前リサーチの方法と体験談
長期の一人旅ということもあり、事前に調べておくことは沢山ありました。
見たい建築や国、ルート、飛行機、鉄道、交通網、気候、通貨、物価、治安などなどです。
色々調べておいた方がいいように感じられるかもしれませんが、調べなくてもどうにかはなりますので気にしすぎない方がいいことは先に断っておきます(気にし過ぎて前に進めない状態の方が勿体無いので)。
見たい建築をとことんリストアップ
見たい建築は挙げだしたらキリがありませんでした。そして旅のルートの範疇に納まるような場所であることも重要です。
それまでに本や雑誌で気になっていたところは勿論、それに加えて見逃しているところはないか雑誌などで追加で調べたりしました。
そして建築家名でも検索をかけ、例えばノーマン・フォスターの作品は他にもあるだろうかなど、下調べは多くやればその分情報が集まってきます。
今回の旅で絶対に行こうと思っていたのが「エストニア国立博物館」でしたので、これだけは断固として日程の確保に努めました。
・見たい建築は行ける行けないに関わらず事前に出来るだけ多く挙げることで密な旅程を作れる
国・都市の周り方で節約
次に見たい建築を地図にプロットしていきます。
そうするとおおよその国の周り方が見えてくるのですが、なるべく節約をしながら旅をしたいという思いがあったため、都市をリストアップし、その周り順を検討します。
「A→B→C」の周り方と「A→C→B」の周り方では当然金額が異なってきます。
その「周り順」と共に検討するのが「何日滞在するか」です。
この二つの組み合わせをいじるだけで旅の費用は数万単位で違ってくるわけです。
予算が多くなくてもこうやって考えていくことで節約は出来るようになるのです。
・都市の周り順を検討することで費用が抑えられることがある
飛行機、鉄道の注意点
現代では格安航空会社(LCC)が旅人の味方です。
高速鉄道に乗るより飛行機で行く方が安いなんてことはざらにあります(日本でも東京ー大阪間が新幹線よりLCCの方が安いように)。
バスの方が安かったりもしますが、飛行機で1時間で行けるところをバスで6時間かけて行くのは時間が勿体無いので、その手段は取りませんでした。
しかしそのLCCで問題となってくるのが「荷物」です。
私はリュック一つで行きましたが、大きなスーツケースを持っていくと預け荷物としての料金が加算されます。費用を抑えたい人は各航空会社の規定サイズ内にて機内に持ち込めるような荷物で行く必要があります。
そこでもう一つ問題があります。それは「重量」の問題です。
冬という季節の中、約1ヶ月も旅をするので荷物が重くなってしまうのは必然なのですが、航空会社の規定する重量制限に引っかからないようにしなければなりません。
もし引っかかると追加料金が取られてしまいます。
私が乗った飛行機は、「サイズ内に納まれば重量制限無し」、「10kg以内」、「8kg以内」と様々でしたが、この場合一番制限の厳しい8kg以内に出来る状態で旅をする必要があります。
しかし飛行機には全部で12回乗りましたが、重量検査をされたのは日本出国時のアエロフロート(航空会社名)の1回のみでした。
ですが注意が必要なことは間違いないです。
そして飛行機は乗る前に各航空会社のサイトで「オンライン・チェックイン」を済ませておくとスムーズです。
1日前などからできるようになるので、空港に着いてからあたふたしないためにもオンライン・チェックインがおすすめです。
当然飛行機より鉄道の方が安い場合もあります。フランスやエストニアでの国内での移動がそうでした。
鉄道に乗る場合もスマホ等でオンラインチケットを取っておくと非常にスムーズに乗れます。
※鉄道では特に留意することはありませんが、フランス内では「OUIGO」というLCCの鉄道版のようなものが走っていますが、それに旅行客が予約することは基本的に出来ないということは覚えておくといいです。
というのも、その予約はフランス国内で発行されるクレジットカードでする必要があるためです。
これに悪戦苦闘し、結局そのチケットは取れないことが分かり、通常の鉄道に乗りました。
・飛行機の持ち込み手荷物の重さ制限に注意
・チケット購入やチェックインはWEB上でするのがスムーズ
交通網の把握が鍵
交通網の整った現地での移動手段は地下鉄や路面電車が多くなるので、路線図を現地で入手しても構わないですが、事前に画像として入手しておくと便利です。
その際に日本語のサイトで調べるといつの路線図かは分かりにくいので、英語で調べた方が良いです。英語は世界の公用語なので新しい情報である可能性は高いです。
・路線図は事前に英語で検索し入手しておくと便利
気候の違い
日本で冬であれば、その時期はヨーロッパも冬です。
その中でもスペインのバルセロナが10度なのに対し、スウェーデンのストックホルムは-10度であったりします。
また晴天もあれば吹雪もあります。それらの気候の違いを勘案して持って行く服装を決める必要があります。
私の失敗談を話すと、下調べ不足で0度まで対応できるくらいの服装しか持って行ってなく、-10度のストックホルムで痛い思いをしました。
(※ヒートテック3枚重ねでなんとか乗り越えました)
冬はフードの付いたコートかニット帽はマストだと今回の旅で思いました。
ですがこれらは現地で購入することももちろん可能なので、さほど心配は要りません。
・訪れる都市の気候は全て調べて服装を考えておく
通貨、物価
現地通貨には何が使われているか、物価はどうなのかも事前に調べておくといいです。
通貨は最悪現地に着いてからクレジットカードでキャッシングしてもいいですが、日本で両替をして行った方が得な場合もあります。
(※因みに私は「エクスチェンジャーズ丸の内店」で両替をして行きました)
実際にロンドンに着いた時に日本では1ポンド140円台で両替出来ていたのが、ロンドンの空港では180円台で目を見張りました。
なので損をしたくない方は下調べをした方がいいです。
物価で下調べから漏れていて驚いたのがスイスです。北欧なんかより断然高いのです。
永世中立国としての防衛費等にお金をかけているのと、隣国からの輸入品が多いことが理由らしいのですが、これは驚きでした。
野菜がスペインの3倍したり、マクドナルドのセットが1600円くらいしたり…低予算に抑えたい自分には堪えました。
・現地通貨は少しだけ持っていくといい(ほとんどクレジットカード決済が可能)
・両替は国内外のどちらでするのが安いか調べる
治安(観光地は注意)
治安については日本内で得られる情報はやや大げさかもしれませんが、日本ほど治安のいい国も少ないと思うので注意は必要です。
特に観光地では観光客は狙われやすいです。
事前リサーチのなかではパリやバルセロナ、ロンドンと言った主要観光地はスリが多いという情報を得ました。
体験談を紹介すると、私はパリでスリの被害に遭いかけ、バッグを開けられるところまでいきました。
またパリの黒人が多いエリアで宿泊をしたのですが、そこら辺では黒人たちに囲われて金銭を取られた人もいるようです。
反対に治安が良いという情報を得ていたのはバルト三国でしたが、それは本当で行ったエストニアやリトアニアでは不穏な気配が全く感じられませんでした。
・貴重品の管理はどこに行っても日頃以上に徹底する
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周遊する7カ国の決定
見たい建築をまとめて行った結果、今回の29日間の旅では7カ国を周ることにしました。
その7カ国と順番は「スペイン→フランス→スイス→イギリス→スウェーデン→エストニア→リトアニア」です。
ヨーロッパを西から東へ渡っていくように、スペインから始めることにしました。
それぞれの国のメインとして、
スペイン=ガウディ建築
フランス=コルビュジェ建築
スイス(バーゼル)=ヴィトラ・キャンパス
イギリス=フォスター建築
スウェーデン=アスプルンド建築
エストニア=エストニア国立博物館
リトアニア=物価が安いためのんびり暮らす
を目的としていました。
私は「旅の終盤は少し贅沢にする」というのをポリシーにしているので、物価の安いエストニアからリトアニアにかけてはAirbnb(民泊)を使ってのんびりとした暮らしを味わってみました。
予算とかかった費用
ここで旅の予算と実際にかかった費用を公開します。
29日間の旅の予算は「40万円」としていました。
主要交通費15万、宿泊費13万、その他12万で40万に収まって欲しいという願望込みの予算です。
以下は実際にかかった費用です。
【食費・交通費・美術館】 ※[ ]内は滞在した都市
スペイン(6泊)・・・25,000円[バルセロナ、ビルバオ、マドリッド]
フランス(9泊)・・・37,000円[リヨン、マルセイユ、パリ]
スイス(2泊)・・・9,000円[バーゼル]
イギリス(3泊)・・・9,000円[ロンドン]
スウェーデン(2泊)・・・8,000円[ストックホルム]
エストニア(3泊)・・・12,000円[タリン]
リトアニア(4泊)・・・9,000円[ビリニュス]
∴合計109,000円(1日当たり3,758円)
【宿泊費(都市別)】
バルセロナ(3泊)・・・9,500円
ビルバオ(1泊)・・・3,300円(※バストイレ共同)
マドリード(2泊)・・・9,600円(※バストイレ共同)
リヨン(2泊)・・・10,500円
マルセイユ(2泊)・・・5,200+11,000=16,200円(※ユニテ・ダビタシオン1泊)
パリ(5泊)・・・30,000円
バーゼル(2泊)・・・11,000円
ロンドン(3泊)・・・11,000円(※バストイレ共同)
ストックホルム(2泊)・・・10,500円
タリン(3泊)・・・11,000円(※Airbnb)
ビリニュス(4泊)・・・16,000円(※Airbnb)
∴合計138,600円(1日当たり4,779円)
【主要交通費(飛行機・都市間の鉄道)】
成田[日本]→バルセロナ[スペイン]・・・49,000円(※モスクワ経由)
バルセロナ[スペイン]→ビルバオ[スペイン]・・・ 4,500円
ビルバオ[スペイン]→マドリード[スペイン]・・・7,000円
マドリード[スペイン]→リヨン[フランス]・・・5,000円
リヨン[フランス]→マルセイユ[フランス]・・・4,750円(※鉄道)
マルセイユ[フランス]→パリ[フランス]・・・13,500円(※鉄道)
パリ[フランス]→バーゼル[スイス]・・・14,000円
バーゼル[スイス]→ロンドン[イギリス]・・・6,500円
ロンドン[イギリス]→ストックホルム[スウェーデン]・・・7,500円
ストックホルム[スウェーデン]→タリン[エストニア]・・・5,000円
タリン[エストニア]→ビリニュス[リトアニア]・・・10,000円
ビリニュス[リトアニア]→成田[日本]・・・48,000円(※モスクワ経由)
∴合計174,750円
かかった費用の合計
食費・交通費・美術館:¥109,000
宿泊費:¥138,600
主要交通費(飛行機・都市間の鉄道):¥174,750
→[ 109,000+138,600+174,750=422,350 ] ∴¥422,350-
29日間でかかった総額は「422,350円」でした。
予算を40万としていたので、2万円弱オーバーしてしまいましたが、その分ストレスのない旅にできたのでよしとします。
考察として
私の場合はバックパッカーの泊まるようなゲストハウスやホステルには一切泊まりませんでした。
全て個室の部屋でしたので費用はその分多くかかってしまいました。
またマルセイユで急遽ユニテ・ダビタシオンに泊まることにしたり、フランスの都市間の移動費用が想定と違ったことも予算をオーバーした要因です。
しかし変更やアクシデントは旅のつきものなので問題なしです。
費用を逐一メモしていたのはただ帰ってから総額を知りたかっただけですが、こうやって公開することもできたので良かったです。
(現金が2万円程外貨で残ってしまったのは、次回への反省とします…)
ポイントサイトを利用した節約術
旅では全て自分で旅程を組み立てるため、飛行機やホテルは予約サイトを使って取りました。その過程でも節約できる方法はあるのです。
それは予約の際にポイントサイトを経由して予約をするという方法です。そうするだけで数%の還元を受けられたりします。
私の場合、飛行機は「Expedia」、ホテルは「Expedia」か「Booking.com」を使って予約をしていました。
サイトやアプリから直に予約をするのが普通かと思いますが、それらを「ハピタス」というポイントサイト経由で予約することにより今回の旅ではトータルで3,000円程度還元されました。
少額かと思うかもしれませんが、手間はさほどかからないので使うメリットの方が大きいのではないかと思います。
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行った場所のリスト化
実際に見に行った建物や場所を見た順にリスト化します。
それぞれの建物について、詳細に記事を書いているものはリンクをつけていますので、宜しければ見てもらえると嬉しいです。
サンタ・エウラリア大聖堂、グエル公園、カサ・カルベット、カタルーニャ音楽堂、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、シウタデリャ公園、フィラ・デ・ベイカイレ・エルス・エンカンス市場、トーレ・アグバール、サグラダ・ファミリア、コロニア・グエル、トーレス・ポルタ・フィラ、フィラ・バルセロナ、カイシャ・フォーラム、バルセロナ・パビリオン、カタルーニャ美術館、パラウ・サン・ジョルディ、モンジュイック・タワー
サン・マメス・スタジアム、ビルバオ・グッゲンハイム美術館、サルベ橋、スビスリ橋
カイシャ・フォーラム、ソフィア王妃芸術センター、アトーチャ駅、マヨール広場、アルムデナ大聖堂、トレド橋、アルガンスエラ橋、サン・ホセ教会、デボー聖堂、マドリード・オベリスク、クリスタル宮殿、ベラスケス宮殿
フルヴィエールの丘、ボナパルト橋、ラ・トゥーレット修道院
ルーブル美術館、エッフェル塔、ノートルダム大聖堂・パリ、サント・シャペル、アラブ世界研究所、ポンピドゥー・センター、シネマテーク・フランセイズ、アメリカン・カテドラル、ケ・ブランリ美術館、オランジュリー美術館、とらやパリ店、グランダルシュ、フォンダシオン・ルイ・ヴィトン、サヴォア邸、ピカソ美術館、オルセー美術館、カルティエ財団現代美術館、ラ・ロッシュ邸、ル・コルビュジェのアパルトマン,アトリエ、ラ・セーヌ・ミュージカル、ブラジル学生会館、スイス学生会館、ノートルダム・ドゥ・ランシー、フィルハーモニー・ド・パリ
テート・モダン、ミレニアム・ブリッジ、ロンドン市庁舎、ロンドン・ブリッジ、タワー・ブリッジ、20フェンチャーチ・ストリート、ロイズ・オブ・ロンドン、30セント・メリー・アクス、リーデンホールビル、サーペンタイン・ギャラリー、ハイド・パーク、科学博物館、ロンドン自然史博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館、キングス・クロス駅、セント・パンクラス駅、大英図書館、大英博物館、カナリー・ワーフ駅、クロスレール・プレイス
聖ニコラス教会、アレクサンドル・ネフスキー大聖堂、タリン市庁舎、エストニア建築博物館
エストニア国立博物館
ゲディミナス塔、ヴィリニュス大聖堂、聖アンナ教会、3つの十字架の丘、ベルナルディン教会、聖ミカエル・聖コンスタンティン教会、MOミュージアム
旅で見てきた中でおすすめしたい建築TOP10
今回の29日間のヨーロッパ旅の中でおすすめしたい建築TOP10を、完全な独断と偏見で紹介します。
気になったものがあったら詳細を書いた記事にリンクさせているため是非見てもらえると嬉しいです。
【10位】ル・コルビュジェのアパルトマン,アトリエ(設計:ル・コルビュジェ)
【9位】サグラダ・ファミリア(設計:アントニ・ガウディ)
【8位】サヴォア邸(設計:ル・コルビュジェ)
【7位】ヴィトラ・キャンパス(設計:名建築家ら多数)
【6位】ユニテ・ダビタシオン(設計:ル・コルビュジェ)
【5位】ビルバオ・グッゲンハイム美術館(設計:フランク・ゲーリー)
【4位】ロンシャンの礼拝堂(設計:ル・コルビュジェ)
【3位】カサ・ミラ(設計:アントニ・ガウディ)
【2位】ラ・トゥーレット修道院(設計:ル・コルビュジェ)
【1位】エストニア国立博物館(設計:田根剛 他)
おわりに
29日間に及ぶヨーロッパの旅は人生の中で最も濃密な時間でした。この旅をする決心をしたのも、それだけ建築を知りたい、体験したいという思いが強かったからです。
そして国内でする旅の中で旅の面白さを分かっていたからです。旅をすると発見や人との出会いや、新たな環境の中で自分自身を今まで以上に知っていくことにも繋がると思います。
考え練ってから実行するよりも、とりあえずやってみることも重要だなと思えたり、言葉が通じなくても挨拶だけ心がけていればなんとかなると思えたり、発見しながら覚え身につけていけるのが旅の素晴らしさです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。