はじめに「コルビュジェ建築との対面」
サヴォア邸は近代建築の巨匠とされるル・コルビュジェが設計したサヴォア家の週末住宅です。建築に携わる者は必ずや勉強するであろうコルビュジェの建物と建築論ですが、今でこそその素晴らしさは分かるものの、初学者がいきなりコルビュジェの素晴らしさを説かれても分かりにくいのではないかと思っています。
体系づけて考え、そして近代建築に限らず様々な建築体験をしていった蓄積が建築のデザインに携わる人には必要不可欠で、その蓄積が自ずとコルビュジェの理解にと繋がると思います。
また今感じるサヴォア邸と10年後に感じるサヴォア邸は自分の能力や見聞が広がれば恐らく違ってくるはずです。そのためになるべく早めに行ってみたかったので行くことができ良かったです。
敷地のコンテクスト
サヴォア邸はパリの郊外にあり、最寄駅はGare de Poissy駅です。パリの中心から1時間かからないくらいで行けます。パリに少々滞在する際はNavigoという交通系ICカードを買うと乗り放題なので、サヴォア邸もその範囲内で行けました。
そしてパリの美術館に数日間行き放題のミュージアムパスもサヴォア邸を含んでくれていました。(しかし他のコルビュジェ建築であるラ・ロッシュ邸やアパルトマンは含まれていませんでした…)
最寄駅に着いてから15分くらい歩くのですが、坂道に切妻屋根の一軒家が立ち並ぶ長閑な街を見られます。サヴォア邸の敷地入口はゲートが狭く開けられているだけだったので初めは通り越してしまい、そうすると高校が現れるのですが、如何にもモダニズム建築で名前がLycee Le Corbusierというくらいなのでコルビュジェが設計したのかと思いますが、定かではありません。
行き過ぎた道を戻りサヴォア邸の敷地に入ります。すると右側にプチサヴォア邸ともいうべき建物がありました。しかし使用実態は定かではありません。
そしてアプローチの林道を抜けると写真で何度も見てきた、あの白い建物が現れました。敷地境界に樹木が植えられているため、あたかも建物の立つステージを作り出しているようでした。
そして建物内へ
建物のアプローチ側ファサードは南を向いているのですが、玄関はその反対の北側にあります。そのため建物の横のピロティを通り、カーブする外壁に沿って玄関へと向かいます。玄関ドアを開けると螺旋階段と直線に伸びるスロープが現れます。はじめに動線が示されているのでまだパブリックな性質を持っています。
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スロープで繋がる上下階「建築的プロムナード」
1階から2階へと上がる屋内スロープ、2階から3階(屋上)へと上がる屋外スロープは建物の上下を繋ぐだけでなく内外を接触させ光や空気を届ける場所でもあります。
コルビュジェは「建築的プロムナード」という考え方を取り入れています。建築的プロムナードは建物の内部も外部と同じように扱えるのではないか、またその反対も同様というように、それがスロープや中庭に現れています。
コルビュジェの弟子である前川國男さんが”エスプラナード”という都市計画的要素を建築に取り込んでいましたが、コルビュジェの”建築的プロムナード”はその母体になっているのでしょう。それを住宅として完成させられるのですからコルビュジェという人は計り知れません。
占有領域をはみ出させる中庭
その建築的プロムナードの考え方に通づるものとして2階には中庭が設けられています。スロープ(廊下)、リビング、婦人室が中庭に面しています。中庭には作り付けのテーブルやトップライトの備えられた花壇があります。そして中庭にも外壁が設けられていて、リビングから水平窓が連続しているように開口があります。
中庭はどの居室にも属しませんが、であるからこそどの居室の一部にもなりうる素質があります。リビングの一部であり、スロープに光を届ける場でもあります。
婦人室のとなりの中庭部分だけ屋根をかぶせて、しかも外部であるのに窓を設けて屋内に近い半屋外空間として扱っていました。ここの囲いによる別空間の演出は上手いなぁと感心しました。