立体的な楽しさの高揚「東京都美術館」

建築

はじめに『公園は多様なアクティビティを内在させる』

東京都美術館は上野恩賜公園にあります。この公園一帯はなかなかに都市文化の密度が高い場所だと思います。休日だろうと平日だろうと人が集まってくる場所というのは素敵です。

様々に利用できるため、小さな野外コンサートを開いていたり保育園の園児たちが集まって遊んでいたりしていて、公園というのは人間活動になくてはならない場所だなとつくづく気付かされます。余程のことでなければ何をしてても構わない包容さが公園にはあります。

建物とエスプラナードの配置と都市動線の計画

設計は前川國男(1905-1986)さんです。建物が竣工したのが1975年ですから晩年の作品になります。公園から流れるようにアプローチができて、前川さんのエスプラナード(遊歩道)を作るという都市計画に近い考え方が含まれています。

敷地内には誰でも公園の延長として入ることができ、また多くの来館者を受け止めるだけの広い幅員となっていて、美術館に行く人のみ地上から1階分下がった階のエントランスへと向かうような動線区分です。

建物の配置計画としてはコの字型に配置され、公募展示室が入る建物のボリュームは雁行型になっています。

その雁行した角がガラスと鉄骨のシャフトとなっていて、内外を接続するための緩衝領域となっています。その部分の機能は複数ある展示室に対する休憩所です。

動線としての外部の動的なところに休憩所という静的な場所が隣接しているわけですが、動線としては繋がっていないため休憩の機能が十分に果たせ、かつ外を歩いている人々の様子が伺えますが直接的な視線のぶつかりがない気持ちのいい場所です。

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隠れた休憩所はVIPルーム?

内部に入ります。エントランスロビー・ホワイエの部分などはヴォールト天井になっています。これもこの頃の前川さんが多様した形態らしいです。外壁のタイル張りがそのまま内部に延長して入り込んできたり、杉板型枠のRC打放し仕上げなどがあり様々な「質感」が多く感じられる美術館です。

実は美術館に行った際の楽しみごとの一つが、どんな椅子が使われているのかを見ることです。東京都美術館はスツールチェアが行く先々にあって、かなり身体に配慮されています。

そのスツール・チェアは一脚一脚がそれぞれ異なる色でカラフルな並べ方がされていて、それらが置かれている場所を探すということも楽しんでいました。デザインは前川さんによるものです。

外にガラスのシャフトとして現れる休憩所はスツール・チェアの宝庫となっています。そのシャフトは建物裏側にも密かにあるのですが、ここは建物内から行くにしても結構分かりにくいところにあるのです。

「展示物を隅から隅まで見る人」か「休憩所から微かに漏れる光を見つけた人」のみが入場を許されるようなそんな密やかな場所です。

私が見学している時には全ての場所を見ましたが誰もいませんでした。陽の光が樹木越しに入ってくる穏やかな時間が流れる場所でした。

おわりに『こだわりの打ち込みタイル』

外部仕上げは炻器質タイルの現場打ち込みなのですが、これは前川さんが考案した工法らしいです。コンクリートの型枠にタイルを釘止めして、コンクリートを流すことにより一体化させています。

同じ工法は代表作の埼玉県立博物館熊本県立美術館でも使われており、それぞれでタイルに使用する土の材質や釉薬、焼成の仕方が異なっているのだそうです。

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