はじめに
法隆寺宝物館は東京国立博物館の敷地内にあります。設計は谷口吉生さんです。
入場券を買い、博物館本館を正面にして左手に進んでいくと、水面とともにフレームで囲われた建物が現れます。ふと丸亀の美術館を思い出しました。
アプローチのメタファ
アプローチに水面を使うと雑念が取り払われるように思います。「水は時間のメタファー」だと建築家の内藤廣さんは言っていましたが、ここで感じたものがメタファーそのものだったのです。
安藤忠雄さんも水面を多用しているイメージがありますが、コンクリートや鉄、ガラスといった近代的な素材との相性がよく感じます。
そしてアプローチには御影石が使われています。
建物のフレームはステンレスですが、水面が揺れている様子が軒天井に柔らかに映し出されていました。金属はこのように風景の淡い投影ができます。
木々の緑を写したり、空の青、夕暮れの橙と、色々な表情を見せるのが四季のような移ろいで美しいです。
正面の構成要素はフレームとルーバー、ガラス、フレームを支える丸鋼ですが、ガラス越しに背後のライムストーンの壁も見えて空間の広がりを感じます。
館内で感じる空間の一体性
順路の最後には資料室という空間があって、エントランス・展示室とつながっており、空間の一体性を持たせることの良さがそこでよく分かったように思います。
それはこの後見学した谷口吉生さんの父、吉郎さんが設計した東洋館に入ってより強く感じました。
東洋館はスキップフロアで構成された上品な空間でした。外部の大胆さとは違った良さがありました。
その資料室にはソファと資料閲覧用の椅子がたくさんあるのですが、さすが名建築に使われる椅子で、コルビュジェの「LC2」とチャールズ&レイ・イームズの「マネジメントチェア」が使われていました。
価格を知らずに座っていましたが、なかなかの価格です。
売られているサイトを見てみるとコルビュジェの「LC2」は一人掛けで約60万円、チャールズ&レイ・イームズの「マネジメントチェア」は27万円。
通販で売っているようなレプリカのものはもっと安かったりしますが、恐ろしいほど寛ぎやすいです。
テラス席のある館内併設のレストラン
一階にはレストランがあり、外でも食べられるのですが、テラス席の庇が天井高2,100mmくらいと低めです。エントランスも同じです。
庇の上に軒はあるのですが、開放度合いの制限の仕方が上手いです。高ければいいわけでも広ければいいわけでもなく、谷口さんはバランス感覚がいいなと感心しました。
おわりに「近くには名建築がごろごろ」
東京国立博物館は大規模な建物が敷地内にいくつもあって、廻っているとかなり疲弊します。
建築として見に行く人は結構な気力が必要だと思いました。
何せ近くには国立西洋美術館、東京文化会館然り、こども図書館まであって楽しすぎる場所なのです。