テーマパークのような家具ショールーム「ヴィトラ・ハウス(VitraHaus)」

建築

はじめに

建築の聖地とも言うべき、ヴィトラ・キャンパスに行ってきました。場所はドイツなのですが、国境近くにあるため、アクセスはスイスのバーゼルからが行きやすいです。

そのキャンパスの敷地内には名だたる建築家たちが設計した建物が沢山あります。例えばザハ・ハディド、フランク・ゲーリー、安藤忠雄さんです。

そしてヴィトラ社の家具ショールームであるヴィトラ・ハウスは、ヘルツォーク&ド・ムーロンの設計です。2010年に完成した建物で、誰でも中に入ることができます。

他の建物は見学ツアーでしか内部を見られないものがほとんどでしたが、自由に入れるこのヴィトラ・ハウスが個人的に一番充実した時間を過ごすことができました。

切妻ボックスの積み重ね

建物は切妻屋根のボックスが多方向に積層した形態をしています。その妻面がガラス張りになっていて、外部へと延長するような、あるいは外部が入り込んでいくようなヴォイドのような引力があります。

1階はエントランスへと続くアプローチにボックスの方向性のある屋根がかかり、そしてボックスの交わらないところが吹き抜けとなっているなど積み重ねがそのまま感じられました。

建物形態が生み出す内部空間

切妻屋根のボックスが積み重ねられている操作がそのまま内部にも表れています。妻部分の一面が大開口となっているのは外からも分かりましたが、内側からは家型のピクチャーフレームとしての切り取りが象徴的でした。

また箱と箱が同一レベルで交わるところや、レベル差を持って交わるところには簡潔にその断面が表れていました。それらは空間の接続や視線の抜けといった内部操作に繋がっていました。

簡潔に処理をするというのが住宅的な快適さを生んでいるのではないかと思います。その結果、外側からみた単純な積み重ねとしての印象以上の効果を内部で感じられました。

名作が勢揃いの体験型家具ショールーム

建物内は各階が連続的な家具ショールームになっていて、様々な家具を実際に触ったり、椅子に座ったりすることができます。部分的にコンセプトが設けられているようで、色彩ごとに分かれていたり、デザイナーの紹介ブースがあったりと見飽きることがありませんでした。

建築による空間を家具によって完成させているので、家具による空間創造力のようなものを肌で感じることができました。このヴィトラ・ハウスに行って家具を今まで以上に好きになりました。

 

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番外編

ヴィトラ・キャンパスに散らばるベンチ

ヴィトラ・キャンパスの敷地内にはカラフルなベンチが散らばっています。それらはアメリカのデザイナー、チャールズ&レイ・イームズがデザインしたベンチです。

それらは座るためという機能的なものというよりはアートのような鑑賞物に思えました。


アルヴァ・アアルトのコーナー

ヴィトラ・ハウスの中にはフィンランドの建築家アルヴァ・アアルトのコーナーが設けられていました。ひとつは動線に面してテーブルと椅子があり、そこにアアルトの本まで置かれていていました。

もうひとつはデザイナーのブースとして展示してありました。その中で気に入ったのは台車でありテーブルである家具です。シンプルで合理的で温かみのあるその家具は、ゆったりとした時間を過ごすような空間にぴったりだと思いました。


お気に入りの椅子探し

建物内には数々の椅子が置かれているので、一つ一つ座りながら使用感を比較することができます。体を大きく包み込んでくれるような椅子や、肘掛けが革でできている椅子、チェスの駒にありそうなスツールなどたくさんあります。

(このチェスの駒のようなスツールは台湾の美術館に行った時に発見して気になっていたので、まさかの再会がありました。これはチャールズ&レイ・イームズのデザインでした。)

色々な椅子に座りましたが、一番のお気に入りはジャン・プルーヴェのデザインしたフォトゥイユ・ド・サロンという椅子です。安定感のある構造的な脚で、深く腰掛けられ、木製の肘掛けが付いています。形がシンプルなので様々な空間に対応しやすいと思います。

ジャン・プルーヴェのデザインしたフォトゥイユ・ド・サロン

遊び心のあるアニマル家具

所々になんとも可愛らしい動物の家具が置かれていました。それぞれ質感が異なるところもユニークですし、子供が喜びそうな遊び心のある家具だと思いました。

ちなみにキリンの家具は子供であれば、またがって遊びそうだなと想像していました。


強度のある後付けカウンター

実用的でいいなと思ったのが後付けのカウンターです。これは一般家庭で需要がありそうです。例えば階段の腰壁などにカウンターを付けたい時などに、元々の壁に穴を開ける必要が無く取り付けることができます。①まず天板兼カウンターを支える鉄板を被せ、②そこにカウンターを載せます。③最後に壁の両側からそれらを固定します。その簡略化された作業と機能に思わず写真を撮ってしまいました。アイデアとはこういうものなのだなと感じさせられます。


組立、分解ができるファスナー付き家具

多機能的だなと思ったのが、ファスナー付きの仕切り用家具です。ファスナーによって連結ができるという点が拡張性を生んでいて、小さいものだとソファの背もたれになる囲いで、大きいものだと子供の遊び場のようになります。住宅でこの大きさのスペースを作るのは難しいと思いますが、幼稚園などでは十分に活用ができそうです。

おわりに

ヴィトラ・ハウスは家具好きには堪らないショールームでした。そして想像が掻き立てられます。建築もいいですが家具のようにヒューマンな視点を忘れてはならないなと感じさせてくれる場所でした。スイスのバーゼル等、近くに行かれる際は是非行ってみることをお勧めします。

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